2022年9月16日号 Vol.430

メインスレート32作品
映画に見る多様性と折衷主義
「ニューヨーク・フィルム・フェスティバル(NYFF)」

①The White Noise, 2022 / Dir. Noah Baumbach

60回目を迎える「ニューヨーク・フィルム・フェスティバル(NYFF)」(主催:フィルム・ソサエティ・オブ・リンカーン・センター)が、9月30日(金)から10月16日(日)まで開催される。世界各国から芸術性の高い映画を選出。巨匠から新進気鋭の監督、ドキュメンタリー、短編、リバイバルなど幅広いラインナップだ。



今回のメインスレートは18ヵ国から32作品を上映。映画に見る多様性と折衷主義を祝う。

オープニングナイトは、ノア・バームバック監督の「ホワイト・ノイズ(White Noise)」=写真①=。原作は1985年に発表されたドン・デリーロの同名小説で、「映画化は難しい」と考えられてきた。

ヒトラーを研究する大学教授、ジャック・グラドニー(アダム・ドライヴァー)は4人の子を持つ父親。大学に近い快適な郊外で暮らしていた家族は突然、近隣で起きた化学物質流出事故に見舞われる。家族を守ろうと奮闘するグラドニー教授を軸に、際限のない消費主義、生態系へのダメージ、死への恐怖などが抒情的に描かれる。

②All the Beauty and the Bloodshed, 2022 / Dir. Laura Poitras

センターピースは、ローラ・ポイトラス監督の「すべての美しさと流血(All the Beauty and the Bloodshed)」=写真②=。

アメリカで問題となった「オピオイド危機」(麻薬系鎮痛剤の過剰摂取)がテーマ。自らもオピオイド中毒を経験した写真家、ナン・ゴールディンの人生とキャリア、そして、その元凶を生み出した製薬企業「パーデュー・ファーマ社」のオーナー、サックラー・ファミリーとの戦いを描いたドキュメンタリー。

③The Inspection, 2022 / Dir. Elegance Bratton

クロージングナイトは、エレガンス・ブラットン監督の「インスペクション(The Inspection)」=写真③=。

NJ州ジャージーシティ生まれ、フィリップスバーグで育ったブラットン監督は、ゲイという理由で母親から拒絶、16歳で家から追い出された。ホームレスとして10年間を過ごした後、海兵隊に入隊する。「インスペクション」は、そんなブラットン監督の私的な物語で、海兵隊での体験がベース。激しい訓練や根深い偏見と戦いながらも、予期せぬ友情、強さ、支えを見つけたことで、人生に訪れた変化が描かれている。

同映画祭60回を記念してジェームズ・グレイ監督の「アーマゲドン・タイム(Armageddon Time)」を上映。監督が通ったニューヨークのクイーンズにあるキーフォレスト校での体験を基にした半自伝的な物語。

④石門(Stonewalling) 大塚竜治とホアン・ジーの共同監督

日本作品として、大塚竜治とホアン・ジーの共同監督の「石門(Stonewalling)」=写真④=が上映。

東京都出身でテレビ番組ディレクターを経験後、中国・北京へ渡った大塚監督。パートナーのホアン・ジーと共に、10年以上、中国の若者たちをテーマに映画を撮り続けてきた。「石門」では、20歳の女子学生、リンの「1年間」にスポットをあてる。客室乗務員を目指して勉強していたリンは、妊娠に気が付く。中絶か、出産か、出産後に里親に出すか…。中国ではケアを必要とする女性たちにほとんど選択肢が無い、という社会構造を浮き彫りにする。

詳細は、オフィシャルサイトで確認を。

New York Film Festival (NYFF60)
■9月30日(金)〜10月16日(日)
■会場:上映作品により異なる
■オープニング:$125(メンバー&学生$85)
■センターピース&
 クロージング:$80(メンバー&学生$65)
■メインスレート/スポットライト
 $30(メンバー&学生$25)
※他、セクションパスなど有り
※一般向けチケットは9月19日から発売開始
https://www.filmlinc.org/nyff2022

◯White Noise:9月30日(金)
◯All the Beauty and the Bloodshed:10月7日(金)
◯The Inspection:10月14日(金)
◯Armageddon Time:10月12日(水)・13日(木)
◯Stonewalling:10月10日(月)・11日(火)


HOME