2022年9月16日号 Vol.430

オペラ新シーズン
初演「メディア」で開幕
メトロポリタン・オペラ

A set design by David McVicar for his Met premiere production of Cherubini's "Medea."

2022〜23年シーズンのメトロポリタン・オペラ(以下MET)は、9月27日(火)、MET初演ルイージ・ケルビーニ作曲「メディア(MEDEA)」で初日の幕を開ける。今シーズンのラインナップは、MET初演がもう一作品、テレンス・ブランチャード作曲「チャンピオン(CHAMPION)」、世界初演となるケヴィン・プッツ作曲「めぐり合う時間たち(THE HOURS)」、更に新演出が4演目、レパートリー再演が16演目で2023年6月10日まで開催される。



MET初演作品「メディア」
ルイージ・ケルビーニ作曲、デイヴィッド・マクヴィカー演出、カルロ・リッツィ指揮、初演は1787年パリのフェイドー劇場だが、長い間忘れられていたのを1953年、マリア・カラスによってフィレンツェで復活上演された。1969年には、ギリシャ神話のメディアをもとにした、イタリア、フランス、西ドイツ合作の映画「王女メディア」が、主演マリア・カラス、監督・脚本ピエル・パオロ・パゾリーニで公開。カラス待望の唯一の映画主演で、筆者もビデオ鑑賞したことがあるが、残念なことにオペラではなく、女優として演じていたので歌声は聴くことができなかった。

またメディアを題材としたドラクロアの絵画「わが子を殺そうとするメディア」(1862年)が、リール美術館に収められている。

オペラ作品は、コルネイユの同名悲劇に基づいてフランス語台本で上演されたが、今日ではイタリア語版で上演。タイトルロールを演じるソンドラ・ラドヴァノフスキの熱演が見どころ。

「メディア」あらすじ:古代ギリシャ、コリントが舞台。コルキスの王女メディアは、かつて結婚したアルゴー船の隊長ジャゾーネに裏切られ強引に離婚される。伝説の金羊毛皮を手に入れたジャゾーネは、コリント王クレオンテの娘グラウチェと結婚を控える。復讐に燃えるメディアは、婚礼祝いに猛毒を仕込んだローブと王冠をグラウチェに送り殺害する。2人のわが子をも殺して、不実の夫ジャクゾーネへの復讐を果たす。

・上演:9月27日、10月1日、5日、8日、13日、18日、22日(マチネ)、28日

Ryan Speedo Green as Young Emile Griffith in Terence Blanchard's "Champion." Photo: Zenith Richards / Met Operas

「めぐり合う時間たち」
ピューリッツァー賞を受賞した作曲家ケヴィン・プッツの世界初演となる作品。METを代表する3人のディーヴァ、ルネ・フレミング、ケリー・オハラ、ジョイス・ディドナートが、2002年に映画化されたメリル・ストリープ、ジュリアン・ムーア、ニコール・キッドマンの役に挑む。上演は11月22日から。

「チャンピオン」
2021年のオープニングを飾った作品「私の骨に閉じ込められた火」を作曲したテレンス・ブランチャードの第2作。ゲイの黒人ボクサーの苦悩と葛藤をジャズとオペラの融合で描く異色作品。上演は2023年4月10日から。

新演出に衣替えされる作品は以下。

「フェドーラ」:ウンベルト・ジョルダーノ作曲、デイヴィッド・マクヴィカー演出により25年ぶりに12月31日のニューイヤーズ・イヴ・ガラで復活上演される。

「ローエングリン」:リヒャルト・ワーグナー作曲、フランソワ・ジラール演出。17年ぶりに蘇るワーグナーの名作。

「ドン・ジョヴァンニ」:モーツアルト作曲、イヴォ・ヴァン・ホーヴェ演出。「橋からの眺め」「ウエスト・サイド・ストーリー」でトニー賞を獲得したホーヴェ待望のMETデビュー作!ペーター・マッテイの究極のタイトルロールが必見!

「魔笛」:モーツアルト作曲、サイモン・マクバーニー演出。プロジェクションや最新の技術を駆使した画期的な演出で19年ぶりに衣替え。ウォールストリート・ジャーナル紙では、かつて無いベスト・プロダクションと絶賛している。

A scene from Simon McBurney's production of Mozart's "Die Zauberflöte." Photo: Donald Cooper / English National Opera

再演作品も盛りだくさん。

イドメネオ(モーツアルト)、ムツェンスクのマクベス夫人(ショスタコヴィッチ)、トスカ(プッチーニ)。ペーター・グライムス(ブリテン)、椿姫(ヴェルディ)、ドン・カルロ(ヴェルディ)、リゴレット(ヴェルディ)、アイーダ(ヴェルディ)、魔笛=英語版=ホリデー・ファミリー・オペラ(モーツアルト)、愛の妙薬(ドニゼッティ)、カルメル派修道女の対話(プーランク)、ノルマ(ベッリーニ)、ファルスタッフ(ヴェルディ)、ばらの騎士(シュトラウス)、ボエーム(プッチーニ)、さまよえるオランダ人(ワーグナー)。

★METの新ルール
今シーズンのメトロポリタン歌劇場では、これまで行われていたワクチンの接種証明書を提示をする必要はない。一方、館内では引き続き、指定された場所で飲食する場合を除き、常にマスクの着用が義務付けられている。(針ヶ谷郁)

MEDEA メディア MET初演
■イタリア語上演 2時間50分(休憩1回)
■作曲:ルイージ・ケルビーニ(1760~1842年)
■原作:コルネイユの同名の悲劇に基づく
■初演:1797年 パリ
■演出:デイヴィッド・マクヴィカー
■舞台美術:デイヴィッド・マクヴィカー
■指揮:カルロ・リッツィ
■出演:メディア:ソンドラ・ラドヴァノフスキ
ジャゾーネ:マシュー・ポレンザーニ
クレオンテ:ミケーレ・ぺルトゥージ
グラウチェ:ジャナイ・ブルーガー
metopera.org


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