走り続けて41年
先人の意志「江戸前」貫く
「レストラン日本」営業責任者・副社長　馬越恭弘

（左から）馬越佳奈さん、福本美浩さん（料理長）、東亨さん（総料理長）、馬越恭弘さん

ジョコビッチのメッセージ

創業55周年記念、江戸前ディナーを55ドルで（ドリンク1杯付き）

1963年に創業した「レストラン日本」。ニューヨークに於ける日本食レストランのパイオニアとして知られていた創業者・倉岡伸欣氏の妻・ えい子さんが昨年10月に亡くなり、その後を追うように今年1月、倉岡氏も他界。大きな転機を乗り越えた「レストラン日本」は8月20日、55周年を迎えた。現在、レストランの営業責任者で副社長の馬越恭弘(まこし・やすひろ)さんの下、全スタッフが日々の業務に精を出している。
「大学を卒業した後、ホテルオークラに就職したのですが、その時に倉岡に出会い、誘われてニューヨークに来ました。ここで働き出したのは1977年ですからもう41年。あっという間でしたね」と柔らかに話す馬越さん。
今でこそ「寿司」といえば日本食の代名詞だが、認知されるまでには長い時間を要した。日本食をアレンジしたジャンル「フージョン」も誕生。そんな中、オープン以来「レストラン日本」がこだわってきたのは「江戸前」だった。
「江戸時代の中期から後期、鎖国していた江戸で他国の影響を全く受けず、独自に花開いた料理が『江戸前』だと考えています。倉岡もそう申しておりました。活気ある江戸の人々は食に対しても貪欲だったはずで、それが日本食の原点でもあると思っています。だからこそ当店は『江戸前』を極めていきたい。倉岡が目指してきたものでもありますし、ぜひこのニューヨークで、その思いと文化を継承していきたいと考えています」と強調する。
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9月8日、大坂なおみの初優勝が記憶に新しい全米オープン・テニス。同店は世界中のテニス選手の間で親しまれており、松岡修造や伊達公子、杉山愛、錦織圭、大坂なおみも足を運んでいる。きっかけは、80年代に活躍した岡本久美子選手だったそうだ。「初来店の時、大きな荷物や多数のラケットを抱えていた岡本選手を見た倉岡が、『何か、お手伝いは出来ないだろうか』と思ったのが始まりです」と振り返る。「倉岡が『日本人は、やっぱりご飯を食べないといけない!』ということで、来店時におむすび弁当をお土産に渡すようになったのです」。スポーツマンのみならず「頑張っている人」を応援していた倉岡社長。日本人だけでなく、ロジャー・フェデラー、サマンサ・ストーサー、マルティナ・ナブラチロワ、ノバク・ジョコビッチなども来店。全米オープン・テニスの時期には休日返上で多くの選手たちをもてなし、それは現在も変わらず続けられている。
「実は、先日のトーナメント開催中に、ジョコビッチが来店してくれました。倉岡社長が他界した時には来れなかったと、倉岡の写真に手を合わせてくれました。彼が初めて来店したのは18歳ぐらいだったと思います。『気の良いセルビアから来た青年』という印象で、そんなに強い選手だとは知らなかったんですよ」と笑う。ジョコビッチは今回、倉岡夫妻へのメッセージを書き残してくれたと、一枚の写真を見せてくれた。そこにはレストラン日本と倉岡夫妻に対する感謝と、いなくなっても永遠に一緒だという彼の想いが記されていた。
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馬越さんの趣味はマラソン。「最近は走る時間がなくて…」というが、2007年のフィラデルフィア・マラソンでは自己ベスト2時間50分を記録。3時間を切るランナー「サブスリー(3)」になった程の実力派だ。
「マラソンは、潜在能力がないランナーでも努力を積み重ねれば驚くようなことが起こります。それがスポーツの醍醐味、素晴らしさでしょうか」。41年間、パイオニアの店を支え続けた馬越さんは、正に「努力の人」だ。倉岡夫妻亡き後、その遺志を継いだ馬越夫妻。新オーナーとなった故・えい子夫人の妹である古屋昭代さんを支え、走り続けている。
「倉岡が他界して色々と変わったこともありますが、レストランとして目指すものはオープン以来変わっていません。今後もご満足いただけるサービスを提供していきたいです」。柔らかな口調の中に、力強い決意が見えた。

創業55周年記念
江戸前ディナー

創業55周年を記念し、通常80ドルの「江戸前ディナー」を55ドルで提供中。前菜、スープ、寿司、蕎麦、メイン(スキヤキ、牛肉おろし大根、鴨のくわ焼きから一品選ぶ)、デザートのフルコース。加えてビール、ワイン、酒のいずれか1杯がサービス。

レストラン日本
■155 E. 52nd St.
■Tel: 212-688-5941​
■ランチ​　月〜金:12:00-2:30pm
　ディナー月〜土:5:30-10:00pm
　日定休日
■www.restaurantnippon.com

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