2022年9月30日号 Vol.431

デイヴィッド ・ゲフィン・ホール新装
「ウー・ツァイ・シアター」誕生
リンカーンセンター

①ウー・ツァイ・シアター David Geffen Hall Renderings 2021, Image courtesy of Lincoln Center

ニューヨーク・フィルハーモニック(以下NYフィル)の拠点、大規模な改装工事を行っていたリンカーンセンター内の「デイヴィッド ・ゲフィン・ホール」が10月8日(土)、装いも新たに再開する。同ホール再建に5000万ドルを寄付したクララとジョー・ウー・ツァイ夫妻に敬意を表し、ホール内のシアターを「ウー・ツァイ・シアター(Wu Tsai Theater)」と命名。同時に、多様性をテーマにした作品を紹介するアニュアル・イベント「ウー・ツァイ・シリーズ」が立ち上げられた。



新シアター最大の特徴は、演目にあわせてステージサイズが変更できる点。前方にステージがある一般的な構造に加え、ステージを客席が囲むレイアウト=写真①=、また巨大スクリーンを設置することでフィルム上映も可能となった。

その他、モダンで開放的なテラス、50フィートのメディア・ウォールを設置したロビー=写真②=、小規模な公演や集会に対応したサイドウォーク・スタジオなど、多目的に利用できる空間が誕生した。

②ロビー David Geffen Hall Renderings 2021, Image courtesy of Lincoln Center

キックオフは、トリニダード・トバゴ共和国出身のジャズ・トランペッター、エティエンヌ・チャールズ=写真③=率いるクレオール・ソウルの「サン・ホアン・ヒル:ニューヨーク・ストーリー」(世界初演)と、ヤープ・ヴァン・ズヴェーデン指揮によるNYフィルをフィーチャーした2つのコンサート。

19世紀後半頃、リンカンセンター周辺は「サン・ホアン・ヒル(San Juan Hill)」と呼ばれ、アフリカ系アメリカ人、アフリカ系カリブ人、プエルトリコ人によるコミュニティが存在。ジャズと芸術が盛んな地域で、ジャズダンス「チャールストン」や、ジャズの一形態「ビバップ」が誕生した。その一方で「ニューヨーク市内で最悪のスラム街」と言われ、「都市再生」プロジェクトによって再開発。1950年代、サン・ホアン・ヒル地区はほぼ破壊され、リンカーンセンターが建設された。

没入型のマルチメディア作品「サン・ホアン・ヒル:ニューヨーク・ストーリー」は、そんなリンカーンセンター周辺の歴史と文化、過去・現在・未来を、音楽と映像で繋ぐ。

チケットは料金を選択して購入できる「Choose What You Pay」で5ドルから。さらに公演当日、同会場のウェルカム・センターで無料チケットの配布あり。

③ Etienne Charles, Photo courtesy of Lincoln Center

ヤープ・ヴァン・ズヴェーデン指揮によるNYフィルの演奏「NYフィル・リターンズ・ホーム」では、ブラジル人現代音楽家のマルクス・バルター作「オヤ(Oyá)」を披露する。12日のみ、プレ・コンサート・イベント(対談)が予定されている。

10月最後の週末は、「オープン・ハウス・ウィークエンド」と題し、無料イベントを開催する。プログラム詳細は、オフィシャルサイトで確認を。

Etienne Charles
San Juan Hill: A New York Story
■10月8日(土)2pm、8pm
■$5から(Choose-What-You-Pay)

NY Phil Returns Home
■10月12日(水)、13日(木)、15日(土)、18日(火)7:30pm
■$78〜
※プレ・コンサートイベント:12日(水)6pm

Open House Weekend
■10月29日(土)、30日(日)
■入場無料(先着順)
■会場:Wu Tsai Theater, David Geffen Hall
 10 Lincoln Center Plaza
https://nyphil.org
https://www.lincolncenter.org


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