2018年10月19日号 Vol.336

独自文化・社会情勢から誕生した恐怖
カルト的な人気誇る日本製ホラー
「ゴーストとモンスター:戦後日本のホラー映画」

地獄
中川信夫 監督「地獄」(1960年)Photo © Japan Foundation

吸血鬼ゴケミドロ
佐藤肇 監督「吸血鬼ゴケミドロ」(1968年)Photo © Janus Films.


ブルックリンのBAMローズシネマで10月26日(金)から11月1(木)まで、「ゴーストとモンスター:戦後日本のホラー映画」と題して、9作品が上映される。
敗戦から高度経済成長へと、劇的な変化を遂げた日本。他に類を見ない社会情勢や、文化的な背景から生まれた恐怖とファンタジーが、カルト的な人気を誇る。

神武景気が始まったとされる1954年、東宝映画「ゴジラ」が公開。巨大な怪獣が登場する初の日本映画で、英語での「Kaiju」は、「日本製の巨大な怪物映画ジャンル」として知られている。
同年、アメリカの水爆実験で、第五福竜丸が被ばくした事件を受け、「水爆実験ですみかを追われた巨大恐竜が東京を襲う」という設定を考案。単なる娯楽だけでなく、反核映画としても位置づけられている。
同じく東宝の怪獣映画「モスラ」にも、当時の社会問題が投影されている。劇中に登場する核実験を行う「ロシリカ共和国」は、ロシアとアメリカを示唆し、「インファント島」は、核実験場となったビキニ環礁がモデル。自然破壊や人間のエゴに怒ったモスラが街を破壊するというストーリーで、1960年代に訴えられていた環境問題が、今でも変わらないことに驚愕する。

「吸血鬼ゴケミドロ」は、松竹が制作した怪奇特撮映画第1弾。小型旅客機が謎の火の玉と遭遇、計器が故障しエンジンが炎上、山脈に不時着する。一命を取り留めた乗客たちだが、その中のひとりが宇宙からの生物ゴケミドロに体を乗っ取られてしまう。クエンティン・ タランティーノ監督が同作品の大ファンと公言する、知る人ぞ知るSFカルトの傑作。

日本怪奇映画における最高傑作のひとつ「地獄」。監督は、化け物映画の巨匠といわれる中川信夫。前半に描かれる現世での悪行が、後半の死後の世界で「地獄の責め苦」へと繋がっていく。仏教の八大地獄に加えキリスト教の地獄イメージも取り入れた因果応報をテーマとした作品。
詳細はオフィシャルサイトで確認を。

Ghosts and Monsters:
Postwar Japanese Horror
■10月26日(金)〜11月1日(木)
■会場:BAM Rose Cinemas
 30 Lafayette Ave., Brooklyn
■一般$15、メンバー$7.5
www.bam.org


★上映作品
10/26:ゴジラ(1954年)
10/17:雨月物語(1953年)
10/27:モスラ(1961年)
10/27:吸血鬼ゴケミドロ(1968年)
10/28:怪談(1964年)
10/28:地獄(1960年)
10/30:おとし穴(1962年)
10/30:藪の中の黒猫(1968年)
10/31:鬼婆(1964年)


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