2021年11月26日号 Vol.411

活躍中の映画監督、初期作品・最新作を紹介
JS映画上映シリーズ
「フラッシュ・フォワード~デビュー作の風景~」

「おらおらでひとりいぐも」© Ora Ora Be Goin Alone, 2020

ジャパン・ソサエティー(JS)と日本の文化庁が共催する映画上映シリーズ第2弾として、「フラッシュ・フォワード〜デビュー作の風景〜」が、12月3日(金)から23日(木)まで開催される。映像産業振興機構(VIPO)の協力を得ている。

上映は、オンラインとJS劇場内上映でのハイブリッド形式。このシリーズでは、現在活躍中の映画監督の初期作品に注目。日本を代表する監督・沖田修一、河瀨直美、阪本順治、塩田明彦、周防正行、西川美和のデビュー作と、最新作を紹介する。それぞれの監督の出発地点と今を切り取ることで、それぞれがどのように特徴的な手法を創りあげてきたかを考察する。



カンヌ国際映画祭でカメラドール(新人監督賞)を最年少受賞した河瀨直美監督のデビュー作「萌の朱雀」(1997年)や、プロボクサーの自伝小説を本人主演で描いた、阪本順治監督インディーズ映画「どついたるねん」(89年)など、話題作満載の上映イベントだ。これらはオンラインで上映される。

「団地」© The Projects, 2016

国立映画アーカイブ(日本)の協力で、JS劇場の大スクリーンでリアル上映されるのは、山中貞雄監督の「丹下左膳餘話 百萬両の壷」と、「河内山宗俊」の2作品の4K復元版だ。劇場での上映日程は12月11日(土)と17日(金)。

山中監督は、小津安二郎や成瀬巳喜男と同時代に活躍。28歳の若さでこの世を去ったため作品数は少ないが、名高い作品を残している。天性のストーリーテリング能力で、時代劇の近代化に貢献した監督だ。黒澤明、鈴木清順、黒木和雄など多くの映画人に影響を与えた。

「サトウくん」© A Boy Sato, 2017

上映作品紹介
オンライン上映作品

【沖田修一監督】
「南極料理人」(2009年/125分)
情熱的な料理人・西村淳(堺雅人)が、南極観測隊に料理担当で1年半参加。何が起こるかわからない環境の中、心のこもった食事で激寒での生活に温もりを与える。
「おらおらでひとりいぐも」(2020年/137分)
75歳の桃子(田中裕子)は、夫の死後、大きな空き家で孤独に暮らしているが、一日の終わりが次の日のはじまりに変わると、桃子の孤独感は奇妙な形で現れるようになる。

【河瀨直美監督】
「萌の朱雀」(1997年/95分)
古代中国の南方の守護神・朱雀に由来する題名を持つこの作品は、河瀨監督が8mmフィルムで始めたドキュメンタリーの延長線上にある作品。
「Vision」(2018年/110分)
人の心のあらゆる苦しみを癒すことができるという伝説の薬草を求めて、フランス人エッセイストのジャンヌ(ジュリエット・ビノシュ)が、霧に包まれた奈良の森にやってきた。豊かな自然の中で彼女は森の番人たちと出会う。

【阪本順治監督】
「どついたるねん」(1989年/110分)
脳挫傷から生還したプロボクサー・安達英志(赤井英和)は、命の危険も顧みず、ボクシングの栄光を再び手に入れようと再起を目指す。主演の赤井の人生と経歴に基づいているこのほろ苦い抵抗と困難の物語は、80年代を代表する映画となった。
「団地」(2016年/103分)
大阪郊外の団地。漢方薬局の廃業に伴い、半年前にこの団地に引っ越してきた老夫婦・ヒナ子(藤山直美)と清治(岸部一徳)。清治が失踪したことで、団地住民の間で離婚か、殺人、それともバラバラ殺人かとあらぬ噂が広まる。

【塩田明彦監督】
「月光の囁き」(1999年/97分)
朝早くから剣道の稽古に励む17歳の拓也と紗月の感情は、友情から恋心へと発展していく。しかし次第に、拓也の中にある変態的な嗜好が明るみになり、二人の関係は未知の領域へと突入していく。
「さよならくちびる」(2019年/116分)
ハル(門脇麦)とレオ(小松菜奈)による人気インディー・フォーク・デュオ「ハルレオ」が、解散前の最後の活動として、7日間のツアーを行うことになった。

【周防正行監督】
「ファンシイダンス」(1989年/101分)
由緒ある僧侶の家系に生まれたパンクロッカーの陽平(本木雅弘)。頭を丸め、恋人の真朱に別れを告げ、モッズスーツを僧衣に変え、家名を継ぐためしぶしぶ禅寺で1年間の修行をすることになる。
「カツベン!」(2019年/126分)
「Shall we ダンス?」の周防監督の最新作。日本の無声映画時代、真のスターはスクリーン上の俳優ではなく、活動弁士と呼ばれる生身の語り手。アクションやキャラクターの声を担当し、観客を動画の世界へと誘う。

【西川美和監督】
「蛇イチゴ」(2003年/108分)
是枝裕和監督のプロデュースで監督した初長編作品。普通の伝統的価値観という薄いベールに覆われた機能不全の明智家を、シニカルなタッチで描く。
「永い言い訳」(2016年/124分)
人気小説家の幸夫(本木雅弘)は、成功していても不満と倦怠感に苛まれていた。20年来の結婚生活には活気も愛も感じられず、軽率にも不倫をしてしまう。そんな中、妻の夏子とその親友ゆきが不慮の事故で死亡する。

JS劇場での上映作品
【山中貞雄監督】
「丹下左膳餘話 百萬両の壷」
(1935年/94分、4K修復・最長版)
■12月11日(土)7:00pm
名門柳生家が隠した百万両の財宝にまつわる秘密の地図が入った醜い壺が、誤って人の手に渡ってしまい、知らず知らずのうちに持ち主を転々とし、領主は取り返しに奔走する。
「河内山宗俊」
(1936年/82分、4K修復版)
■12月17日(金)7:00pm
歌舞伎の名作「天衣紛上野初花:河内山と直侍」をベースに、東京の貧民街を舞台にした緻密な時代劇。ギャンブル好きのトラブルメーカー広太郎は、ある日、侍の小刀を盗んだことがきっかけで、ドミノ倒しのように一連の厄介な出来事に巻き込まれてしまう。

注目の新人監督(オンライン上映のみ)
【金子雅和監督】
「アルビノの木」(2016年/86分)
緑豊かな山の風景の中で繰り広げられる痛切なモラルのジレンマを描いた作品。動物管理局のハンター、ユク(松岡龍平)が報酬を目当てに、近隣の村では森の神とされている希少な白鹿の捕獲を請け負う。

【佐々木想監督】
「サトウくん」(2017年/15分)
山間部の温泉町の駅の前で土方くんに声をかけたのは、引越ししたはずのサトウくん。かつての溜まり場や地元の名所を訪ねながら、サトウくんは町の何かがおかしいと感じ始める。

【三宅響子監督】
「波の向こう」(2013年/73分)
10年間の海外生活の後、3.11をきっかけに日本に帰国した三宅監督。若い頃住んでいた静かな海辺の町・浪江町を訪れる。浪江町は、福島原発に近いこともあり、立ち入り禁止区域となっていた。

【箱田優子監督】
「ブルーアワーにぶっ飛ばす」(2019年/92分)
30歳を過ぎた砂田(夏帆)は、東京のCMディレクター。女性差別的な業界からの不公平な圧力や、自滅的な行動に落胆し、自由奔放な親友の清浦(シム・ウンギョン)と一緒に故郷・茨城に帰る。

【内藤瑛亮監督】
「許された子供たち」(2020年/131分)
13歳の絆星(きら)はいじめっ子。同級生の樹(いつき)の喉にボウガンを撃ち込んでしまう。犯行を自供した絆星は、SNSの標的となるが、裁判で無罪放免に。が、絆星とその家族への注目は収束せず、SNSでの嫌がらせへとエスカレートしていく。

Flash Forward: Debut Works and Recent Films by Notable Japanese Directors
■12月3日(金)~23日(木)
■会場:JS劇場とオンライン
■劇場上映:一般$15、JS会員$10
※複数購入割引あり
■オンライン:
・オールアクセス・パス$55(21日間のレンタル付)
・1作品$10(3日間のレンタル付)
※複数作品コンボチケット(3日間のレンタル付)は12月3日(金)から販売
※JS会員はクーポンコードで20%割引適用
■購入:film.japansociety.org
japansociety.org


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