2021年11月26日号 Vol.411

「うつろう変化」を表現
手紙のような身近な存在に
画家:小中 寛顕

松山スタジオに所属するアーティスト、小中寛顕(こなか・ひろあき)の作品展「残光/ afterglow」が12月6日(月)から19日(日)まで、アッパーイーストのコーヒー&ワインバー「ステラ & フライ」で開催。新・旧あわせて数点が展示される。

大阪府出身の小中。地元の小・中学を卒業し、美術を学ぶため京都芸術高等学校へ。その後、京都造形芸術大学の日本画コースを卒業。京都アートスクールや、村上隆率いる「カイカイキキ」に在籍した後、今年6月からニューヨークで活動を開始した。



小中の作風は、「人工と自然」の関係性をテーマに、大学で学んだ日本画と、写真的な特徴を取り入れたもの。

「子どもの頃から森や海など自然の中で遊ぶことと、ボードゲームやテレビゲームなど、人工的なもので遊ぶことが好きでした。よく遊んでいたのは『ドミノ』ですが、一人で静かに黙々と時間をかけて作り上げる一方で、完成後に倒すのは一瞬、という時間の差にとても興味を持ったことを覚えています」。人の手によって精巧に並べるドミノ、そこに力を加えれば連鎖的に倒れていくという自然の力。小中の作品テーマである「人工と自然」は、対極のようで実のところその関係性は深い。

無題(light flow), 2018. / 530×455mm

「私は、記録や光を題材に、『うつろう変化』を表現しています。日本画で使用される箔や染料インクは、光や空間の影響を受けながら、その時々で変化。作品に偶然性と現象を取り込み再構築することで、イメージが持つ事実性を抽象化させる。結果として、それらが『うつろいゆくイメージ』を私たちに見せてくれると考えています」。小中にコントロールされて描かれた作品は、光、大気、時間によってその様相を変える。また鑑賞者の心理状態や置かれた状況により、さらに変化し続ける。小中はそれを「何気ない日常と、自然の光との間でやりとりされる『手紙』のような存在」だと表現。「私のアートは、陽の光や星の様に、身近な存在でありたい」 と打ち明ける。

Flowers, 2021/ 144×205mm

影響を受けた人物を尋ねると、「たくさんいますが、まずは母。とにかく私のわがままを優しく受け入れてくれた事に感謝しています。誰よりも強く偉大、母のような優しい人間でありたい」と話す。

また、小中には多くの出会いがあった。「凄まじい根性とユーモアを持った人柄が好き」だという建築家の安藤忠雄氏。「幅広い知識とその探究心を尊敬する」という批評家の浅田彰氏。「アーティストとして悩んでいる際、身近で働き学んだ」という村上隆氏。中でも国立国際美術館で開催された草間彌生展で本人に出会ったことが、現在ニューヨークで活動するきっかけになったそうだ。

「ニューヨークの『活気』には目を見張るものがあります。皆、生き残るため必死に活動しているという雰囲気が、一人の人間として制作に向き合うための原動力になっています」。作品をどう作り上げていくかを考え、体験している時間が楽しいという。「まずはアーティストとして、お世話になった人々に恩返しが出来るよう、作品を発表していきたい。将来的には『地中美術館』や『豊島美術館』のような『自然と人間を考える場所』を作りたいと思っています」

すべての人工物は自然に由来する。小中はそれらを「人為的」に利用することで、うつろう心を持った「人間」という存在を追求する。

「少し前まで日常だと思っていたことが、いつの間にか、私たちには見えない部分で変化し続けています。それらを受け入れ、些細な出来事の痕跡を作品の中に見つけてください」

小中寛顕「残光/ afterglow」展
■12月6日(月)〜19日(日)
 レセプション:7日(火)6:30-8pm
■会場:Stella & Fly:1705 First Ave.
www.stellaandfly.com

★アーティスト情報
www.instagram.com/hiroakikonaka


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