2018年12月1日号 Vol.339

初演から100年
不滅のレパートリー
プッチーニのオペラ「三部作」

オペラ三部作
「外套」 All photos: Ken Howard / Met Opera

オペラ三部作
「修道女アンジェリカ」

オペラ三部作
「ジャンニ・スキッキ」


プッチーニが、パリで観たダンテの神曲「地獄篇、煉獄篇、天国篇」に影響を受け三部作のオペラを構想したという説がある。1918年にメトロポリタン歌劇場で世界初演された。今シーズンは初演から100周年を迎え、不滅のレパートリーのひとつになっている。
三部作を一晩で上演するには、あらゆるキャラクターで最上級の歌手を揃えるのが困難なことから、劇場で全篇上演される機会は少ない。それを実現できるのがMETの魅力である。
第一部の「外套」は、パリを舞台にしたヴェリズモの救いのない悲劇。バリトンとテノールの実力者、ガクニーゼとアルヴァレスの対決が見どころ。
第二部「修道女アンジェリカ」は、修道院を舞台に女性のみで演じられる神秘的な抒情劇が展開される。タイトルロールに美貌と美声を兼ね備えたオポライスが挑む。
第三部「ジャンニ・スキッキ」は、ダンテの「神曲(地獄篇)」に登場する「奸智に長けた人物ジャンニ・スキッキ」を基にした喜劇オペラ。バリトンの役柄を毎年新たに挑戦し続ける帝王ドミンゴが、コミカルな役をどう料理するかお楽しみに!
ドミンゴは、今シーズンMETデビュー50周年を迎え、来年の4月28日に祝賀リサイタルを開くほか、新演出「椿姫」のアルフレードの父親ジョルジョ・ジェルモン役で出演予定だ。
ラウレッタが歌う「私のお父さん」はあまりにも有名なアリア。オブライエンの演出は、時代をそれぞれ、より現代に置き換えて物語展開を身近なものとしている。「ジャンニ・スキッキ」の最後の場面では、舞台がお屋敷の屋上へとせり上がると、バルコニーからフィレンツェの街並みが一望に現れ、ドタバタ劇の喧騒を忘れさせる美しく静寂なエンディングとなっている。

外套
192 7年のパリが舞台。セーヌ川に浮かぶ運搬船の船長ミケーレとその妻ジョルジェッタの夫婦仲は、子供を失ってから冷え切っていた。ジョルジェッタは情夫である沖仲仕のルイージと逃避行をする手はずだったが、ミケーレに計画がばれてしまい、ルイージは絞め殺されて外套の中に隠される。そうとは知らないジョルジェッタは、夫に外套の中を見せられ絶望する。

修道女アンジェリカ
1938年のトスカーナ地方の修道院が舞台。貴族の娘アンジェリカは、親の許さぬ子供を産んだため修道院に入れられている。叔母の公爵夫人が訪ねてきて、子供が死んだことを聞かされ自殺を図るが、奇跡が起こり、アンジェリカの息子を抱いた聖母が現れる。

ジャンニ・スキッキ
1959年のフィレンツェが舞台。大富豪の遺産をめぐって親族が集まり、なんとか遺産を手にしようと相談が始まる。遺族のひとりリヌッチョの恋人でラウレッタの父親ジャンニ・スキッキの知恵を借りることが決まった。ジャンニ・スキッキは、自分が故人に成りすまし嘘の遺言をしようと提案し、全員賛成する。公証人の前で「財産は全てジャンニ・スキッキに贈る」と言って、まんまと遺産を独り占めしてしまう。
(針ケ谷郁)

IL TRITTICO 三部作
■11月30日/12月5日/8日(M)/12日/15日
■イタリア語上演 ■ジャコモ・プッチーニ作曲
■初演:1918年12月14日メトロポリタン歌劇場
■演出:ジャック・オブライエン
■指揮:バートランド・デ・ビリー
■チケット:212-362-6000
www.metoperafamily.org


外套
■原作:ディディエ・ゴルドの舞台劇
 「ラ・ウプランド(外套)」
■配役:ジョルジェッタ:
アンバー・ワーグナー/タチアナ・メルニチェンコ
フルゴーラ:マリアン・マコーミック
ルイージ:マルセロ・アルヴァレス
ミケーレ:ゲオルグ・ガグニーゼ/ルチオ・ガロ
タルパ:マウリツィオ・ムラーロ


修道女アンジェリカ
■配役:アンジェリカ:
 クリスティン・オポライス/エレーナ・スティキナ
ジェノヴィエッファ:モリーン・マッケイ
プリンシペッサ:スティファ二ー・ブライス


ジャンニ・スキッキ
■原作:ダンテ「神曲、地獄篇」
■配役:ラウレッタ:クリスティーナ・ミキタリヤン
ツィータ:スティファニー・ブライス
リヌッチョ:アタッラ・アヤン
ジャンニ・スキッキ:プラシド・ドミンゴ
シモーネ:マウリツィオ・ムラーロ


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