2020年12月18日号 Vol.388 | |
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コロナ禍で動き出したもの(2/2)作り手の意識が主題深層意識の覚醒 今年ベストの美術展を挙げるなら、ホイットニー美術館で開催中の「アメリカの生活:メキシコ人壁画家によるアメリカ美術の再生1925〜1945」展だろう。アメリカ美術の栄光の歴史は、戦後の抽象表現主義に始まり、その始まりを促したのは20世紀初頭のパリの前衛芸術、立役者はデ・クーニングらヨーロッパからの移住者――こうした定説を覆すかのように、メキシコ壁画運動の三巨匠オロスコ、リベラ、シケイロスを主役に立てた、まさに大英断の展覧会だ。 彼ら3人は、大恐慌の最中、アメリカに招聘され、いわゆる国家称揚の壁画制作に取り組むはずだったが、実際には、当時のメキシコ移民排斥運動を背景に社会の不正に挑むポリティカルな公共アートを生み出していく。その力強いイメージと多大な影響力は、昨今のBLM運動と結びつくストリートアートの意義とも重なり、極めてタイムリーな展覧会となっている。
いずれも、e-Bayなどネットオークションで買い集めたもの。黒人男性を象った射撃訓練用の標的や、誇張された黒人の風貌が印刷された缶詰や洗剤の箱、昔のゲーム盤など、一見微笑ましくも、黒人蔑視を助長するイメージだ。やがて消えゆく一時代前の品々とはいえ、しっかり見据えよということだろうか。逆に、イメージの有無はどうあれ、人種に対する偏見は無くならないということだろうか。
2021年を前に、これまでの定義や形式に捉われない新しいアートやアート展に期待したい。
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