ブロードウェイ「ティナ：ティナ・ターナー・ミュージカル」ニューヨーク最新イベント情報【よみタイム】#Yomitime

2019年12月20日号 Vol.364
ヒット曲のオンパレード「ロックの女王」が歩んだ人生「ティナ：ティナ・ターナー・ミュージカル」 Adrienne Warren, Daniel J. Watts and The Cast of TINA. Photos by Manuel Harlan, 2019 Adrienne Warren 日本人が、このミュージカルの冒頭シーンを見たら、誰もが「エエ~!」と叫びたくなるでしょう。日本から遠く離れたニューヨークで上演中の「ティナ」は、「ロックの女王」と評されるティナ・ターナーの自伝ミュージカル。題材として日本が出てくる作品でもないのに、メロディにも乗っていない、突拍子もない強烈な日本語が冒頭で何度も繰り返されるのですから、面食らっても仕方ありません。その日本語とは、何と「南無妙法蓮華経」。ティナ・ターナーが、熱心な創価学会の信者であることは有名な話です。「私は帰依(きえ)します」という意味のお題目を無心に唱えるシーンは、ブランクのある大物歌手が、再起をはかって立つ久しぶりのステージを前に、仏にすがる心境を端的に表しています。彼女が心のよりどころを宗教に求めたのは、厳しい現実から救われたかったからでしょう。ここで話は子ども時代、ティナが生まれた町、テネシー州のナットブッシュにさかのぼります。そして、これでもか! というぐらい、不幸話が羅列されていくのです。牧師という仮面の下で、母親にすぐ手をあげる強権的な父親。耐えられなくなった母親は、ある日、ティナを置き去りにして妹だけを連れ、出て行きます。子どもに興味を示さない父親と祖母との3人での荒れた生活。そんな孤独の中、ロックに目覚めたティナは、「ロケット88」をヒットさせたミュージシャン、アイク・ターナーを追いかけ、自分を売り込むことに成功するのです。2人は結婚し、アイク&ターナー・レビューとして数々のヒットを飛ばします。ようやく報われたかに思われたティナですが、プライベートでは同じ悪夢に悩まされることに。アイクの裏の顔は、父親同様、カッとなると暴力をふるうDV男でした。借金取りも毎日押しかけてきます。ティナは、そんな現実から逃げたいと、さらに宗教に傾倒するのでした。やがてアイクと離婚したティナは、4人の子どもを育てるためにトイレ掃除の仕事をしたことも。そんな時、オリビア・ニュートンジョンのマネージャーをしていたロジャー・デイビスと邂逅、ソロデビューにこぎつけます。「ホワッツ・ラヴ・ゴット・トゥ・ドゥ・ウィズ・イット(愛の魔力)」では4つのグラミー賞を獲得。世代を超えて知られるヒット曲「シンプリー・ザ・ベスト」、「プライベート・ダンサー」、「ウィ・ドント・ニード・アナザー・ヒーロー」など、ステージでは迫力ある演奏が次々と続き、あっという間に最後のアンコールへとなだれ込む…という印象です。ロンドンでは、上演開始から1年以上経った現在も、チケットは入手困難が続く程の人気。このミュージカルには80歳を迎えたティナ・ターナー自身もプロデューサーとして名を連ねています。11月のオープニングナイトにも、往年と変わらぬ美貌で登場したティナ。しかし、去年は、腎不全で透析をしいられるまで体調は落ち込んでいました。そのティナに腎臓を提供したのは、ミュージカルでも最後に描かれている再婚した16歳年下の音楽プロデューサーの夫でした。 ◇ ライオンのように髪を逆立て、熱演するエイドリアン・ウォーレンは、ティナそのもの。映画「マーガレット・サッチャー鉄の女の涙」の監督でもあるフィリダ・ロイドの演出の手堅さは、アバのミュージカル「マンマ・ミア!」でも実証済み。安心して没頭できます。シンガーにスポットを当て、その生涯を描いた作品は、現在もオフでロングラン中のフォーシーズンズのミュージカル「ジャージー・ボーイズ」の大ヒット以来、定番化したもの。以後、ボーイ・ジョージ、キャロル・キング、グロリア・エステファン、ドナ・サマー、シェール、ザ・テンプテーションズと続きに続いています。誰もが聞いたことのある名曲がバンバン出てくるので、ある程度のヒットが見込めるからでしょう。来夏にはマイケル・ジャクソンのミュージカルも上演予定で、プロデュースにはジョニー・デップが加わるとのこと。そのうちエルトン・ジョンが自分のミュージカルをプロデュース!なんて日がくるかもしれません。ドラマ「SMASH!」の劇中劇になっていたマリリン・モンローのミュージカル「ボムシェル」のブロードウェイ入りも聞こえてきています。個人的にはジェームス・ディーンのミュージカルを、作曲家のフランク・ワイルドホーン氏あたりに創ってもらいたいところ…当たりそうでしょう?(佐藤博之) Tina: The Tina Turner Musical ■会場：LUNT-FONTANNE THEATRE 　205 W. 46th St. ■$114～ ■上演時間2時間45分 ■tinaonbroadway.com Tweet HOME

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ヒット曲のオンパレード
「ロックの女王」が歩んだ人生
「ティナ：ティナ・ターナー・ミュージカル」

Adrienne Warren, Daniel J. Watts and The Cast of TINA. Photos by Manuel Harlan, 2019

Adrienne Warren

日本人が、このミュージカルの冒頭シーンを見たら、誰もが「エエ~!」と叫びたくなるでしょう。日本から遠く離れたニューヨークで上演中の「ティナ」は、「ロックの女王」と評されるティナ・ターナーの自伝ミュージカル。題材として日本が出てくる作品でもないのに、メロディにも乗っていない、突拍子もない強烈な日本語が冒頭で何度も繰り返されるのですから、面食らっても仕方ありません。
その日本語とは、何と「南無妙法蓮華経」。ティナ・ターナーが、熱心な創価学会の信者であることは有名な話です。「私は帰依(きえ)します」という意味のお題目を無心に唱えるシーンは、ブランクのある大物歌手が、再起をはかって立つ久しぶりのステージを前に、仏にすがる心境を端的に表しています。彼女が心のよりどころを宗教に求めたのは、厳しい現実から救われたかったからでしょう。
ここで話は子ども時代、ティナが生まれた町、テネシー州のナットブッシュにさかのぼります。そして、これでもか! というぐらい、不幸話が羅列されていくのです。
牧師という仮面の下で、母親にすぐ手をあげる強権的な父親。耐えられなくなった母親は、ある日、ティナを置き去りにして妹だけを連れ、出て行きます。子どもに興味を示さない父親と祖母との3人での荒れた生活。そんな孤独の中、ロックに目覚めたティナは、「ロケット88」をヒットさせたミュージシャン、アイク・ターナーを追いかけ、自分を売り込むことに成功するのです。2人は結婚し、アイク&ターナー・レビューとして数々のヒットを飛ばします。
ようやく報われたかに思われたティナですが、プライベートでは同じ悪夢に悩まされることに。アイクの裏の顔は、父親同様、カッとなると暴力をふるうDV男でした。借金取りも毎日押しかけてきます。ティナは、そんな現実から逃げたいと、さらに宗教に傾倒するのでした。
やがてアイクと離婚したティナは、4人の子どもを育てるためにトイレ掃除の仕事をしたことも。そんな時、オリビア・ニュートンジョンのマネージャーをしていたロジャー・デイビスと邂逅、ソロデビューにこぎつけます。
「ホワッツ・ラヴ・ゴット・トゥ・ドゥ・ウィズ・イット(愛の魔力)」では4つのグラミー賞を獲得。世代を超えて知られるヒット曲「シンプリー・ザ・ベスト」、「プライベート・ダンサー」、「ウィ・ドント・ニード・アナザー・ヒーロー」など、ステージでは迫力ある演奏が次々と続き、あっという間に最後のアンコールへとなだれ込む…という印象です。
ロンドンでは、上演開始から1年以上経った現在も、チケットは入手困難が続く程の人気。
このミュージカルには80歳を迎えたティナ・ターナー自身もプロデューサーとして名を連ねています。11月のオープニングナイトにも、往年と変わらぬ美貌で登場したティナ。しかし、去年は、腎不全で透析をしいられるまで体調は落ち込んでいました。そのティナに腎臓を提供したのは、ミュージカルでも最後に描かれている再婚した16歳年下の音楽プロデューサーの夫でした。
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ライオンのように髪を逆立て、熱演するエイドリアン・ウォーレンは、ティナそのもの。映画「マーガレット・サッチャー鉄の女の涙」の監督でもあるフィリダ・ロイドの演出の手堅さは、アバのミュージカル「マンマ・ミア!」でも実証済み。安心して没頭できます。
シンガーにスポットを当て、その生涯を描いた作品は、現在もオフでロングラン中のフォーシーズンズのミュージカル「ジャージー・ボーイズ」の大ヒット以来、定番化したもの。以後、ボーイ・ジョージ、キャロル・キング、グロリア・エステファン、ドナ・サマー、シェール、ザ・テンプテーションズと続きに続いています。誰もが聞いたことのある名曲がバンバン出てくるので、ある程度のヒットが見込めるからでしょう。
来夏にはマイケル・ジャクソンのミュージカルも上演予定で、プロデュースにはジョニー・デップが加わるとのこと。そのうちエルトン・ジョンが自分のミュージカルをプロデュース!なんて日がくるかもしれません。
ドラマ「SMASH!」の劇中劇になっていたマリリン・モンローのミュージカル「ボムシェル」のブロードウェイ入りも聞こえてきています。
個人的にはジェームス・ディーンのミュージカルを、作曲家のフランク・ワイルドホーン氏あたりに創ってもらいたいところ…当たりそうでしょう?(佐藤博之)

Tina: The Tina Turner Musical
■会場：LUNT-FONTANNE THEATRE
　205 W. 46th St.
■$114～
■上演時間2時間45分
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