2019年12月20日号 Vol.364

実際に起きた事件が題材
今世紀屈指の傑作!
オペラ「ヴォツェック」


Wozzeck Photo: Ruth Walz / Salzburg Festival


Peter Mattei in Wozzeck. Photo: Paola Kudacki / Met Opera


La Bohème Photo: Evan Zimmerman / Met Opera


(left)Anna Netrebko in Tosca. Photo: Ken Howard / Met Opera (right) Yusif Eyvazov in Turandot. Photo: Marty Sohl / Met Opera


南アフリカ、ヨハネスブルグ出身の現代アート作家、ウィリアム・ケントリッジ演出の第3弾! ケントリッジは、2009年〜10年シーズンにショスタコーヴィチ作曲「鼻」で衝撃のMETデビューを果たし、ユニークな舞台作りで従来のオペラ演出の想像を超えた斬新な旋風を巻き起こした。続いて、2015~16年~シーズンのベルク作曲「ルル」では、ケントリッジ演出とコンテンポラリーオペラの相乗効果で至高領域を究めたとされ、2019年には高松宮殿下記念世界文化賞を受賞している。
指揮は、2018年からMETの音楽監督の重責を担っているセガンがこの難解な作品に挑む。タイトルロールには、METで幅広い役柄をこなし存在感をアピールしているバリトンのスター、ペーター・マッテイが迫真の演技で悲劇の兵士を演じる。
アルバン・ベルク(1885~193 5ウィーン出身)は、第2次ウィーン楽派の中心的存在として、シェーンベルクやウェーベルンと共に、12音技法に独自の展開をもたらした。1914年にビューヒナーの「ヴォイツェック」の上演を見て衝撃を受け、劇場に通いつめたあと、この作品を基にしたオペラの作曲を決意。しかし、台本の準備を始めると第1次世界大戦が勃発。徴兵されて受けた苛酷な体験は作品の随所に反映されている。各場面には、インヴェンション、フーガ、パッサカリアなどのバロック時代の音楽形式も取り入れられ、ドラマの展開をより効果的なものにしている。恐ろしいほどの迫真の表現は今世紀屈指の傑作と評価される。

▼あらすじ
1821年、ドイツの小さな町で実際に起きた事件が題材。理髪師上がりの貧乏兵士のヴォツェックは、愛人のマリーと子どもを養うため、医師の研究室で実験台となっている。貧乏暮らしに疲れたマリーは、鼓手長の誘いに乗り、ヴォツェックを裏切る。愛人の浮気に気づいたヴォツェックは酒場で踊るマリーと鼓手長を目撃し、マリーへの殺意を抱く。鼓手長はマリーをものにしたことを自慢してヴォツェックをからかう。たまりかねて鼓手長に挑みかかるが、逆にやっつけられ絶望感に襲われる。一方、マリーは不倫したことを悔やむが、ヴォツェックはマリーを森へ連れ出し、口論の末、ついにナイフで刺し殺して自分も狂乱状態となり、沼で溺れ死んでしまう。

大晦日恒例ガラはボエーム、トスカ、トゥーランドットと
盛りだくさん!


METのスーパースター、アンナ・ネトレプコが、プッチーニの不朽の名作3作品から「ボエーム」の第1幕、「トスカ」の第1幕、そしてMETの舞台ではなかなかお目にかかれないネトレプコの「トゥーランドット」第2幕と、盛りだくさんのゴージャスな舞台が一夜で体験できる企画となっている。ネトレプコは、2002年プロコフィエフ作曲「戦争と平和」でMETデビューを果たして以来、殆どのメジャー作品の主役を演じ続け世界的ディーヴァの地位を確立。
指揮はヤニック・ネゼ=セガン。相手役は、ボエームのロドルフォにマシュー・ポレンザーニ、トスカのカヴァラドッシ、さらにトゥーランドットのカラフには、夫ユシフ・エイヴァゾフが花を添える。お見逃しなく!(針ケ谷郁)

Wozzeck 新演出 ドイツ語上演
■12月27日
1月2日/7日/11日(M)/16日/19日(M)/22日
■アルバン・ベルク作曲
■初演:1925年12月14日ベルリン、国立歌劇場
■原作:ドイツの劇作家ゲオルク・ビューヒナー
未完の戯曲『ヴォイツェック』
■演出:ウィリアム・ケントリッジ
■指揮:ヤニック・ネゼ=セガン
■配役:ヴォツェック:ペーター・マッテイ
マリー:エルザ・ヴァンデン・ヒーヴァー
鼓手長:クリストファー・ビュントリス
大尉:ゲルハルド・ジーゲル
医者:クリスチャン・ヴァン・ホーン


大晦日恒例ガラ公演
■12月31日(火)5:30pm


■会場:The Metropolitan Opera House
 30 Lincoln Center Plaza
■212-362-6000
metopera.org



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