2018年12月21日号 Vol.340

ゴーゴーズのヒット曲満載!
理屈抜きで笑えるコメディ
「ヘッド・オーバー・ヒールズ」

ヘッド・オーバー・ヒールズ
Bonnie Milligan as Pamela (center) with Tanya Haglund, Samantha Pollino, Ari Groover and Amber Ardolino. All photos by Joan Marcus

ヘッド・オーバー・ヒールズ
Peppermint (center) as Pythio, The Oracle of Delphi and the ensemble

ヘッド・オーバー・ヒールズ
(l to r) Tom Alan Robbins as Dametas and Jeremy Kushnier as King Basilius


「あなた、私の好きなタイプのゲイよ!」
ミュージカル「ミーン・ガールズ」を観に行ったとき、ステージドアから出てきた主人公の親友役の男優に、息子と一緒に観にきた母親がいきなりこう言い放ったのでした。ふと傍らの息子を見ると、舞台衣裳と同じピンクのデカポロシャツを着て、にこにことサインをもらっていました。
こんな風景が日常として見られるほど、今やゲイ役はブロードウェイの上演作品に欠かせない存在となりました。この潮流はロンドンも同じで、上演中のミュージカル「カンパニー」は主人公のプレイボーイがキャリアウーマンに置き換えられ、マリッジブルーを抱える親友役はゲイカップルになっていました。彼らが出てくると自然と舞台が華やかに明るくなり、楽しさが増します。
そんな、家族でも楽しめる新作ミュージカル・コメディが、2019年1月6日(日)、いよいよ終演を迎えます。
タイトルになっている「ヘッド・オーバー・ヒールズ」は、80年代に全米を席捲した女性ロックバンド・ゴーゴーズの大ヒット曲。聞くだけで体を動かしたくなるノリノリのリズムに乗って展開されるのは、アニメ「シュレック」のようなメルヘンの世界です。
基となっているのは、16世紀の英国の詩人フィリップ・シドニーが書いた「アルカディア」。これがミュージカル「アベニューQ」の脚本家ジェフ・ウィッティの手にかかると、こんなにもハチャメチャなコメディになってしまうのです。

時代背景は、原作のまんまのエリザベス朝。主人公の羊飼い・ムセドーラスは身分を越え、姉妹の王女の妹・フィロクレアと恋に落ち、愛し合う間柄に。
ブスでデブの姉・パメラは、総督の娘・モプサとの同性愛に目覚めてしまうのですが、予言者・オラクルのお告げを避けるため、王家の一行は突然旅に出ることに。
フィロクレアと別れたくないムセドーラスは、アマゾネスのような「女兵士」に化けて一行に潜り込むのですが、その女装したムセドーラスに、何と王様自身が恋に落ちてしまうというドタバタぶり。
美形でも何でもないムセドーラスが金髪のカツラをかぶったり脱いだり、女になったり男になったりと大活躍。とにかく理屈抜きで笑えます。

この物語のキーマンとなっている予言者・オラクルを演じているのが、テレビでもおなじみのトランスジェンダー、ペパーミント。舞台上でも大きな彼女が怪しい魅力を振りまきます。
からみ合い、入り組んだ恋愛の糸はどうなってしまうのか。ミュージカルコメディの王道をいく作品に仕上がっています。
このミュージカル、プロデュースは映画「恋に落ちたシェイクスピア」などに主演したグイネス・パルトロウ。彼女自身も同映画で男役のロミオを演じ、オスカーを獲得した経験から、この手の物語には思い入れが深いようで、今年6月の開幕から半年のロングランは、彼女の読みが見事に当たったということでしょう。母親のブライス・ダナーを見習って、今後はプロデュースだけでなく、ぜひブロードウェイ・デビューも飾ってほしいものです。
上演されているハドソン劇場は、19 03年にできたニューヨーク最古の由緒ある劇場。ティファニー創業者の息子が作ったステンドグラスもあるので、そちらも楽しめて一石二鳥。「笑う門には福来たる」というように、クローズ前に大笑いして新年を迎えましょう!(佐藤博之)

Head Over Heels
■2019年1月6日(日)まで
■会場:HUDSON THEATRE
 141 W. 44th St.
■$49~
■上演時間2時間20 分
headoverheelsthemusical.com


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