2018年12月21日号 Vol.340

パリで実在した女優のドラマ
チレアの主要なオペラ作品
「アドリアーナ・ルクヴルール」

アドリアーナ・ルクヴルール
Anna Netrebko and Piotr Beczała in "Adriana Lecouvreur".All Photos: Vincent Peters/Met Opera

アドリアーナ・ルクヴルール
Piotr Beczała and Anna Netrebko in "Adriana Lecouvreur."


1730年のパリ社交界を舞台に、一世を風靡した実在の女優アドリエンヌ・ルクブルール(1692~1730年)にまつわる実話を基にした恋愛悲劇。この作品でイタリアの作曲家チレア(1866~1950年)は、ヴェリズモ・オペラ作曲家としての名声を獲得した。
主演のアンナ・ネトレプコは、揺るぎない演技力と人気でMETをはじめ世界中のオペラハウスでトップスターの地位を圧巻している。相手役のピョートル・ベチャワは、ポーランド出身の実力派テノール。ネトレプコとは、2009年にドニゼッティ作曲「ランメルモールのルチア」で共演して以来、2010年にプッチーニ作曲「ボエーム」、2012年マスネ作曲「マノン」、2013年チャイコフスキー作曲「エフゲニー・オネーギン」、2014年に同じく「イオランタ」と様々なキャラクターで、ケミストリーもばっちり! 今回、6作目の共演となる「アドリアーナ・ルクヴルール」でまた新たなレパートリーが加わることに。第一幕でアドリアーナが歌うアリア「私は創造神の卑しい僕(しもべ)」をはじめ、甘く美しい旋律は往年の歌姫によって歌い継がれている。
ニューイヤーズ・イヴ恒例の新演出プレミア・ガラにふさわしい、デイヴィッド・マクヴィカーによるロココ調の華麗な演出は一押し!

▼あらすじ

パリのコメディー・フランセーズの人気絶頂の女優アドリアーナは、マウリツィオと愛し合っている。アドリアーナは、彼女の愛の証としてスミレのブーケを彼にわたす。ブイヨン公爵夫人は、ザクセンの伯爵であるマウリツィオへの愛があるため、フランスにザクセン援助するよう奔走している。ブイヨン公爵邸の夜会に招かれたマウリツィオが、すみれのブーケを持っているのを見た公爵夫人はすぐさま、ほかの女性の存在に気付く。ある出来事をきっかけに、互いに恋敵だと知ったアドリアーナとブイヨン公爵夫人は火花を散らす。夜会の席で朗読を所望されたアドリアーナは、公爵夫人の不義をなじる内容の「フェドーラ」(夫を裏切った淫乱な女性)を読み上げる。激怒した夫人は、すみれのブーケに毒を仕込み、マウリツィオからだと偽ってアドリアーナに送り返す。届けられた箱を開けたアドリアーナは、枯れたすみれを見て絶望し、すみれの花に接吻をすると暖炉に投げ込む。マウリツィオが訪ねてきて求婚するが、アドリアーナにはすでに毒が回っていて、マウリツィオの腕に抱かれながら息絶える。(針ケ谷郁)

ADORIANA LECOUVREUR イタリア語上演 新演出
■12月31日
■1月4日/8日/12日(M)/16日/19日/23日/26日
■フランチェスコ・チレア作曲
■初演:1902年11月6日ミラノのテアトロ・リリコ
■原作:ウジェーヌ・スクリーブとエルネスト・ルグーヴェの合作の
 フランス語の戯曲(1849年)に基づく
■演出:デイヴィッド・マクヴィカー
■指揮:ジャナンドレア・ノセダ
■配役:アドリアーナ・ルクヴルール=アンナ・ネトレプコ/ジェニファー・ロウリー
    マウリツィオ=ピョートル・ベチャワ
    ブイヨン公妃=アニータ・ラチヴェリシュヴィリ
    ミショネ=アンブロージョ・マエストリ
    ブイヨン公爵=マウリツィオ・ムラーロ


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