ゴルフの週刊雑誌「ゴルフダイジェスト」に89年から20年間にわたって連載しているマンガ「千里の道も」の作者、中原まこと氏(60歳、ペンネームは中原一歩)と、絵・渡辺敏(さとし)氏(55歳)のコンビが、USオープン取材のためニューヨークを訪れた。両氏は6月18日から22日まで、ロングアイランドのベスページで行われた109回USオープンをたっぷり取材してニューヨークを後にした。USオープンを舞台にした「千里の道も」の連載は、現在続いている「マスターズ編」のあとに始めるそうだ。 (吉澤信政記者)
20年連載のマンガ「千里の道も」 |
日本のゴルフ界は17歳の若武者、石川遼くんが人気を一人占めにしているが、実は「遼」という名前は、「千里の道も」の主人公、坂本遼から取ったのではないかといわれている。というのも父親、勝美さん(51歳)が「千里の道も」がスタートした時からの大ファンで、6歳の時から遼くんにゴルフを教えたのも雑誌の影響を受けたからという。
さて、この「千里の道も」は89年に「週刊ゴルフダイジェスト」でスタートした連載コミック。ひとりの若者、坂本遼がプロゴルファーとして成長する姿を波乱万丈の青春とともに描いている。
延々と続く連載は好評で、今現在、主人公の遼がマスターズで単独トップに立つところだ。
登場人物はクリーニング店の長男に生まれ、高校時代、近所の練習場にアルバイトしたことがきっかけでゴルフに目覚める主人公の坂本遼。地道にクリーニング店を営んでいるが、かつては高校球児として注目されたこともある父親の坂本良夫。滅法気が強いが、大の応援団である母親の千鶴子、バツイチの出戻りで、今は遼のマネジャー気取りである姉の礼子。
遼のゴルフの師というわけだが、その後、対立と和解を繰り返し、今ではトーナメントでしのぎを削るライバルのひとりである猪俣隆三
など。
こういった人物はもちろん架空だが、コースに入ると、タイガー、ミケルソン、シンなど有名プロゴルファーの名前が実名で出て来る。
マスターズでこの後どうなるのかストーリーは作者である中原氏も「わからない」そうだ。
マスターズが終わると遼は、初めて全米オープンに出場する。今回はそのストーリーを書くためにやって来た。わずか1週間の滞在だが、ゴルフ場だけでなくマンハッタンをくまなく取材した。
「遼くんとニューヨークに住んでいる人たちの人間模様を描きたいんです」と中原氏。絵を担当の渡辺氏はカメラを手にあらゆる所でシャッターを押す。
USオープン本番前日には「よみタイム」社も訪れ、社内の写真も撮っていった。
中原氏は大阪府立池田高校から北海道大学農学部出身という変わり種。
一方、渡辺氏は新潟県長岡市の出身。高校時代はハンドボールでインターハイの選手だった。「スポーツと美術だけはいつも5評価でしたよ」と笑う。
中原氏はゴルフレッスンの記事を書いたり、無名プロゴルファーの取材するなどゴルフ関係の仕事もしていた。ある時、「ゴルフダイジェスト」がゴルフコミックを企画、中原氏に話がきた。自分の取材経験から、苦労してプロになる若武者をテーマに考えていた。
こうした構想が受け入れられ、絵の担当として渡辺氏を紹介された。何度も何度もミーティングをして89年5月にスタート。最初は3か月くらいと思っていたが、半年、1年、3年と伸び、今日に至っている。すでに単行本23刊を数えミリオンセラーになっている。
「千里の道も一歩一歩から、ということで、タイトルをつけましたが、こんなに長くなるとはね」とふたりは
目を合わせて笑った。
USオープン編ではニューヨークの日本人社会の人たちも登場するかも知れない。
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