NYで北海道の仲間たちと懇談した田中さん一家(前列右端) |
スペインが生んだ世紀の建築家アントニオ・ガウディ研究の第一人者で30年にわたり、現地でガウディの建築物の実測と建築図面の作成を続けている建築家の田中裕也さんが、ニューヨークを訪れ13日夕、市内の新橋レストランで出身の北海道の仲間たちと懇談した。
田中さんは以前からスペインの建築家でニューヨークに数々の建築物を設計したラファエル・グアスタビーノの作品をこの目で見てみたいと思っていたが、今回友人の誘いなどから一家揃って初めてのニューヨーク訪問にこぎつけた。
ニューヨークでは多くの建物をプロの目から見学した。田中さんは、一旦、ワシントンDC、シカゴに行ったあと、23日に再びニューヨークに戻り、24日午後7時から市内14丁目のスペイン慈善協会でサグラダ・ファミリア教会の実測を通して発見したことなど、豊富な資料を見せながら講演する。講演はスペイン語で、英語の通訳がつく。参加費無料で簡単なスナックと飲み物が用意される。(問い合わせ:914・400・5719
荻原まで)
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田中さんは52年、北海道稚内市生まれ。75年国士舘大学工学部建築科を卒業後、大阪の建築事務所に就職した。だが、卒業研修旅行で訪れたスペインのバルセロナでガウディ未完の大聖堂「サグラダ・ファミリア」、奇怪な家々や波打つベンチなどおとぎの国にでも出てきそうな公園に目を丸くした。「一体、どんな図面を描いたのだろう」と疑問に思った。
「どうしてもガウディの生まれ故郷で、ガウディを研究したい」と3年間勤めた会社を退職し、巻き尺ひとつ持ってバルセロナに渡った。
ガウディの母校、カタルニア工科大学院に学び、92年に博士号を取得した。その間、ガウディの代表作のひとつ「グエル公園」の階段を巻き尺で計るなど、徹底的にガウディの建築物の図面を描いた。
というのもガウディは、模型を基に建築に取りかかる独特の手法を用いた。そのため、設計図はほとんど残ってないという。
「ガウディに迫るには設計図を作るしかないと思った」と話す。次から次へとガウディの作品を設計していく離れ業に世界は驚嘆した。
「31年のスペイン生活で起こった出来事は、写真を見ることで思い出す」という。特にサグラダ・ファミリア教会の写真をみると階段室や戴冠式の実測で途方に暮れていた事があったそうだ。「特に相手が彫刻であれば実測はしにくい。作図にする場合はそのボリュームで計るしかない」と苦難の心を打ち明けていた。
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