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 よみタイムについて
 
 
よみタイムVol.128 2010年1月15日号掲載
プレシャス・ピース(代表) 小平伸浩さん(48歳)
和紙で演出、モダンな空間
作り手の顔が見える
上質和紙をこの地で

アーティストとしても積極的に活動中だ

 オフィスの壁には大型の和紙サンプルが、所狭しと掛けられている。その合間には和紙の原料となる楮(コウゾ)の標本も並ぶ。ガラス板に和紙を埋めこんだ万華鏡のような色合いのテーブルトップを前に、小平さんは和紙に囲まれて目を細める。
 和紙はエコロジーでもあるという。西洋紙は樹を切り倒して粉砕した木の粉に糊を加えてシートを作り生産するため切り倒された木は再生しない。和紙の原料であるコウゾは主に枝を切るだけで、たとえ幹を切ったとしても翌年には切り株から芽を出して再生する。「コウゾの木は殺されることなくずっとそこにいるんですよ」と小平さんは強調する。
 「作り手の顔が見える日本伝統の上質和紙をアメリカの地で普及させたい」との夢を実現するため05年に起業。
     ◇
 新潟から上京して大学は建築科、卒業後まもなくコーポレート・アーキテクトの分野では最大手と言われる企業に入社。しかし大企業の中にいては個性や能力を生かすことは難しいと痛感、3年ほど勤務を続けるうちに海外留学への夢がしだいに膨らんだ。
 ニューヨーク留学を目標に据えた小平青年は、留学資金を貯めるために会社を辞め建築の仕事はフリーランスに切り替えた。昼間はレストランのマネジャーとして働き、夜は建築や内装の仕事にあてた。ダブルジョブはきつかったが何より自分の時間が持てることが嬉しかった。
 なんとか軍資金を貯め91年にニューヨークに渡った。プラット・インスティチュートに入学、建築と芸術系の授業が一緒になった単科大学で学びたいという夢がかなったのだ。30歳のことだった。

 在学中にコンタクトの出来た日系のインテリア会社から誘われて就職する。インテリアの仕事は自分の考えがすぐに実現するという回転の早さが気に入った。
 インテリア関係の仕事では、多くの日系レストランも手がけた。「でも今ほとんど残ってないですね」とちょっと寂しそうだ。
 数年の後、今度は日系の大手ゼネコンに就職。社員として勤務していたが会社から進められて独立、社内フリーランスという立場になった。
 米国の土を踏んで10年過ぎた時、01年の9・11が起こる。ニューヨーク全体が意気消沈した。「何かニューヨークに恩返しができないか」という思いが湧いた。日本人としての自分が背負う日本とのつながりを生かしたい。その頃、本場ニューヨークのジャズスポット「ブルーノート」のグループ店である「名古屋ブルーノート」の仕事を請け負っていて、日本との往来が頻繁だった。日本でたくさん職人たちとの出会いを体験した。
 そんな中、これまで誰もやらなかった和紙専門ビジネスに没頭。「元々西洋テイストで、和の伝統工芸なんてのはどちらかと言えば苦手だったんですけどね。今は日本にいる日本人より日本のことを勉強しなければならない立場になっちゃった」と笑う。  
 すべて順調に行きかけた矢先、リーマンショックに端を発する経済危機に遭遇。再び不動産や建設サイトの動きが止まり、さらに円高が追い討ちをかけた。
 ハイエンド商品はあとまわしにされる傾向に見舞われ、ビジネスも大変な1年だった。「昨年1年はドル通貨じゃないヨーロッパや南米からの注文に救われました。まだまだ厳しいけど必ず良くなりますよ」。
 建築からインテリア、和紙の世界へとたどり着いた人生航路を「偶然ではなかった」と振り返る。不屈の闘志は、逆風の中で次から次へとアイデアを生み出している。

 今はニューヨークで自ら「紙漉き」も始めた。材料としての和紙販売ばかりでなく、アーティスト・ヒロ・オダイラとしても勝負していく覚悟を決めたからだ。
 30パターンある高級和紙サンプルから選んでもらい、顧客の好みや大きさを聞いて制作販売するという路線のほかに、自ら制作した和紙アート作品をコンテンポラリーな空間で生かすためのライフスタイルを逆に提案している。
 注文を待つだけではなく提案という形で、ニューヨークのデザイナー、アーチストに和紙アートを積極的にプレゼンするという路線を加えるなど、景気回復を待ちながら周到な用意を張り巡らせている。
 和紙アート制作の合間には、ベース奏者として仲間たちとジャズの演奏を楽しむ。夫人と5歳になる息子の3人暮らし。
  (塩田眞実記者)

●和紙作品の常設展示場所
■Tama Gallery
 5 Hudson Street
 www.tamagallery.biz
■Precious Pieces
 5 Tudor City Place, Suite 102
 www.precious-piece.com