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 よみタイムについて
 
 
よみタイムVol.143 2010年10月1日号掲載
アーティスト 依田 順子
見た風景に歴史も織り込み、再構築
在ニューヨーク40年「運がよかったのよ」

セントラルパーク・シリーズの中の1作品
依田順子プロフィール:66年武蔵野美術大学造形学部美術学科油絵専攻卒業。翌年、同校造形専攻科油絵専攻終了。69年来米。80年ザブリスキー画廊でニューヨーク初の個展。東京、ヨーロッパなどでもショーを展開している。

  ニューヨーク在住のベテラン・アーティスト、依田順子の個展が、市内東57丁目のザブリスキー画廊で10月23日まで開催されている。
 1978年以来、2年に一回のペースで同画廊で個展を開いてきた依田の今回の作品は、セントラルパーク・シリーズ。大小14点のアクリル画に加え、紙粘土で作ったゾウの彫刻が21点。
 依田の作品は、色使いとディテールが見る者を楽しませるアクリル抽象画だ。作品のいくつかは、よく見ると立体仕上げ。故郷・徳島県で作られる上質な和紙にまずは色を入れ、それをいくつもいくつもリボンのように結び、キャンバスに貼り付けたら、その上からさらに色をのせていくという。
これまでの作品シリーズ「リバーフロー(川の流れ)」「シャドー・オブ・ザ・グラウンド」などと共通している要素は「地図」。「子どものころから地図が好きだった」という依田の作品は、航空写真などをモチーフに仕上げた抽象画が多い。
 今回のセントラルパーク・シリーズも然り。このテーマを選んだのは、もとはといえば、スペースシャトルから撮影された地球の写真を見たことがきっかけだった。
 「宇宙から夜の地球を撮ると、光はオレンジ色で、あとは真っ黒。あのきっちりした長方形が、周りをオレンジに囲まれて真っ黒に浮き上がっているのを見たときに、セントラルパークというのは、地球上でも確かな位置を占めているんだって思いました。私、この『確かな位置』っていう感覚が好きなんです」と依田は話す。
 2008年にメトロポリタン美術館が発行した冊子「クリエーティング・セントラルパーク」も、依田の創作意欲をさらに掻き立てた。そこには、1850年代にデザインコンペで選ばれた、現在のセントラルパークのオリジナルデザインマップが印刷されていた。
 「その後、たまたま市内のモーガンライブラリーで、そのオリジナルデザインマップが展示されたのを見にいき、すごく嬉しくて、もう絶対にセントラルパーク・シリーズを作ろうって思ったんです」
 今回の作品には、テクノロジーの力も借りた。「自分の目で見た風景に加え、グーグルマップで公園を上から見て、それをモチーフにしたの」。
 公園の風景をそのまま描けば、ただの風景画。依田の絵は、見た風景に、公園の歴史も織り込んで、それを再構築する。
 紙粘土で作った真っ白いゾウの彫刻は、ギャラリーの壁に掛けられた色とりどりのアクリル抽象画と好対照をなしている。「昔のセントラルパーク動物園に、ゾウがたくさんいたことを雑誌で知りました。1873年のころの写真を見て、ゾウを数えたら12頭もいたんです」。子どものころ徳島県の動物園で見たゾウの「花子」のことを思い出し、セントラルパーク・シリーズに加えたいと思ったという。
 在ニューヨーク40年になる。市内でも名高いザブリスキー画廊で個展ができる日本人は3人しかいない。その一人が依田だ。「運がよかったのよ」と、あくまでも控えめ。その人間的な温かさが、作品に表れている。
(ささききん)

依田順子個展「Central Park」
10月23日(土)まで
Zabriskie Gallery
41 E. 57th St. 4th Fl
(corner of Madison Ave.)
TEL: 212-752-1223
www.zabriskiegallery.com