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 よみタイムについて
 
 
よみタイムVol.187 2012年8月3日号掲載

いつでも、どこでもゲリラ・ティー
茶道家
森 宗碧 さん
新たな形でのいざない
まずは茶道に親しんで

ジャパン・ウィークでの3日間セミナー(グランド・セントラル駅)

 大学1年で始めた茶道をアメリカで普及させたいと使命感に燃えて2011年の春ニューヨークに来た。間もなく起きた東日本大震災。茶道を通じて何か自分に出来ることはないかと「チャリT茶会」(チャリティーとお茶のTeaを重ねた)を震災直後に立ち上げた。
 「茶道って何、ということをまず多くの人に知ってもらいたい」。
 茶道の堅苦しい型はひとまずおき、お茶を味わうこと、その場限りの出会いである「一期一会」を楽しむことに主眼を置いた。どの茶会もアメリカ人日本人を問わず未経験者がほとんど、好奇心と緊張がないまぜになった参加者であふれている。時間をわけて参加者を入れ替え、一日に数回茶を振舞うこともある。正坐に耐えられない人は胡坐もOKとあって、初心者たちは「安心」して茶を楽しみ、宗碧さんの点前を見守る余裕も生まれるというものだ。
 1年がたち、チャリT茶会は7月中旬で87回を数え、参加者は延べ450人にのぼる。リピーターも増えてきた。参加費用はすべて義援金として被災地に送られるため、参加者たちは日本文化の体感と被災地支援という両面で達成感が得られ評判は上々。チャリT茶会の輪は口コミで静かな広がりを見せている。

 茶道は大学の部活として始めた。学生時代は海外の発展途上国で仕事がしたいと、国連職員、国際公務員を頭に描きながら開発経済学(横浜国大大学院)を専攻した。在学中はしばしば海外に渡航し、シベリアで自然破壊に通じる森林伐採の現場を見て何故こういうことが起こるのかを考え、フィリピンのダムを前にしてはダム建設が周辺の原住民の暮らしにどんな影響を与えるのかなどを憂いた。
 「今、思うと父の影響が強かったのだと思います」と宗碧さんは言う。実家は千葉県船橋市にある真言宗の古刹。兄二人も僧侶である。
 「私が子どもの頃から、住職である父はカンボディアなど海外に出かけて難民の支援活動などをしていました」。「あれ?お父さん最近見ないな、と思っていると真っ黒に日焼けした父がお土産を持って帰ってくる。現地での写真を見せられながら、いつか私も行ってみたいと強く思うようになりました」。

 さらに実家がお寺であることで自然に身についた宗碧さんの特性がある。チャリT茶会が始まると、神妙な面持ちの素人参加者を前に、イントロダクションとして初めに宗碧さんが掛け軸の話とか歴史上の茶人についてさらりと話すのだが、これが実に自然で引き込まれるのである。
 「ある方から、お寺で法話を聞いているようだと言われました」と笑う。
 「で、ふと気がついたんです。檀家さんの集まりで説法をする父の姿を、ずっと身近に見て育ちましたからね。話が上手なわけじゃないけど違和感はありません」

 大学院を卒業するとコンサルティング会社や映画会社などでキャリアを磨いた。ボーカルを担当するバンド活動にも精を出してきた。しかし心の中で、それまでのあらゆるキャリアを生かしながら海外で茶道の普及にかけることが、最も自分らしい生き方ではないか、と思うようになる。幸い、妻の希望を叶えたいという夫の絢也さんの、仕事を投げ打っての全面的なバックアップが得られ、二人して背水の陣のような覚悟でニューヨークに生活拠点を移したのだ。
 「17年間お茶をやってきたけどお茶の家に生まれたわけでもない。だけど元々、お茶の世界は自由で平等なもの。名誉とか地位とかに関係なくみなさんに平等に広めたいんです。一般人である私が関わる意義というのはそこにあると思っています」

 アメリカ人の反応で興味深いのは子どもとか大人とか年齢に関係なく、細かいところに気がついてくれること。「柄杓の置き方がさっきと違うのは何故?」とか「お釜の蓋を途中で開けたり閉めたりするのはどうして?」などと見逃さない。これが日本人だと、お茶の経験がない人でもそれなりのイメージがあるためか、こんなものとスンナリ受け容れてあまり疑問に思わないという。宗碧さんの親しみやすさ重視の新たな茶道への誘いで、チャリT茶会の参加者の中からいずれ茶道に一生を捧げるアメリカ人も出てくるに違いない。
 「意外なのは、アメリカの方には飲みやすいと思われる薄茶よりドロっとした濃茶のほうが人気が高いんですよ」 
 「あと私の英語が充分じゃないために、アメリカ人には禅のように聞こえるらしく、こういう意味かああいう意味かと自由に深読みしてくれるので得しています」と可笑しそうに話した。         
(文=塩田眞実 写真=森絢也)

8月のチャリTの予定
Tea-Whisk チャリT茶会 ChariT!
8月6日(月)4:30pm〜5:30pm
 @Miya Shoji:145 W. 26th St.(bet. 6 & 7 Ave.)
8月17日(金)7:30pm〜8:30pm
 @Harney & Sons SoHo:433 Broome St.
8月25日(土)12:30pm/ 2pm/ 3:30pm
 @Brooklyn Bridge Park:1 Main St.
参加費$10
全額、Japan Societyの
Japan Earthquake Relief Fundに寄付
ウェブサイト www.tea-whisk.com
予約、問合せ info@tea-whisk.com