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よみタイムVol.67 2007年6月15日号掲載

  数字のパズル「数独」開発者
鍛冶 真起

解く人の立場で問題作る
外国人の判事が世界に広める

 世界で8億人が挑戦しているといわれている「数独」。海外では「SUDOKU」としてニューヨークポスト紙などに毎日掲載されているほどポピュラーになっている。数独は1から9までの数字を空いているセルに埋めていくことで進められる。
 縦9マス、横9マスの合計81マスがあり、それぞれ、3x3のブロックになっている。幾つかの数字がすでに入っており、残りのスペースを埋めていく、といったもの。しかし、一行の内、ひとつの数字は一度しか使えないというルールがある。「頭の体操」で電車やバスの中で問題集を広げて奮闘している人たちをよく見る。
 数字だけなので、世界万国共通のパズルで人気が高い。
 これを発明したのが鍛冶さんだ。東京・石神井高校から慶應大学文学部に入り、将来は出版関係の仕事に就きたいと思っていた。しかし、何の変哲もない大学生活にイヤ気を覚えて、2年で中退。大好きな競馬、競輪や印刷会社でサラリーマンをして生活していた。
 そんな時、海外にいる友人がパズルマガジンを送ってくれた。クロスワードや間違い探しなどが多かった。「英語で書いてあるため、大半は分らなかった」がひとつだけ、ナンバープレースという数字だけの問題があった。しばらく考えると簡単に解けた。
 「もっと難しくしたらおもしろいのに」。仲間にそんな話をしたら「オレたちで問題集を作ろうよ」。
 「数字は全部シングルナンバーでいこう。子どもからお年寄りまで楽しめるものを作ろう」が「数独」の原点だった。
 「独身者が数字を楽しむ、ことで数独にしたんですよ」とネーミングの由来を話す。
 83年3人で立ち上げた会社は「ニコリ」。根っからのギャンブル好き。ある時、競馬雑誌でアイルランドの競走馬「ニコリ」のことが掲載されたものを読んだ。圧倒的に強いこの馬の名前に惹かれた。頭の片隅にこの名前が離れなかった。会社を作ろうとした時、迷いなく「ニコリ」にしようと思ったという。
 最初は、パズルマガジンを読む人口は少なく、3人が生活するのも大変だった。「でも金銭的欲望はあまりないですからね。問題を楽しく作ってマニアックな人から、反応があれば、結構おもしろかった」という。
 「数独」がブレイクしたのは05年だった。日本に仕事で来ていたニュージーランドの判事が本屋で買った数独に魅せられ、帰国後イギリスとニューヨークの新聞社に売り込んだのだそうだ。ニューヨークでは断られたが、イギリスの新聞社が掲載すると、大きな反響を呼び、2か月後にはフランスの新聞社からの掲載依頼が来た。
 この判事はウエィン・グールドーさんといって今では判事を辞め、どっぷりと数独にハマって世界各国に数独を広めるセールスマンだ。
 わずか3年足らずで世界92か国の新聞社や雑誌社と契約するほどの勢いで、止まるところを知らない。問題は数字に強い人なら誰でも作れるという。だが「ニコリ社の問題は中身が違う」と自負する。
 「問題に対する愛情の違いですね」と解説する。「ただ難しくするのではなく、解く人の身になるんです。どれだけ興奮して問題を解くかですね」。
 「ゴルフでもそうでしょう。同じパーを取るにも2オンして2パットよりも、木の間に打ち込んで、バンカー入れて、長いパットを入れてのパーは感動しますよね」とゴルフに例えて話す。
 今では問題集は多くの仲間が作る。「私の仕事は会社にいないことかな」と笑う。契約で世界各国を回る。その度に日本の国状を聞かれる。政治、経済、スポーツなど。「民間大使みたいなもんですよ」と大好きなタバコをおいしそうに吸った。
(吉澤信政記者)