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 よみタイムについて
   
よみタイムVol.91 2008年6月20日号掲載
東京電力  片倉 百樹

環境問題を考える
ヒートポンプで温暖化に歯止め
東京電力・片倉百樹氏に聞く


ヒートポンプを探せ!
ふしぎなエコ技術
定価1470円(税込)

「ヒートポンプ」とは、大気中の熱をヒートポンプで集め、夜間電力で氷や冷水(冬は温水)にして蓄え、昼間の冷房(冬は暖房)に利用するシステムだ。CO2排出削減や省エネルギーに大いに貢献するため、急速に普及している。
 そんな中、「ヒートポンプを探せ!」が電気新聞ブックスから出版された。著者は片倉百樹氏と電気新聞論説主幹の藤森礼一郎氏。
 本書は06年3月から電気新聞に掲載された「ふしぎなエコ技術・ヒートポンプを探せ!」を加筆して再編集したもの。問答形式で地球温暖化、省エネを解いたもの。

 主要国首脳会議の北海道洞爺湖サミットが7月7日から開催されるが、大きなテーマは地球温暖化の環境問題。そんな中、注目を集めているのが、省エネルギーシステムの「ヒートポンプ」。この分野の第一人者、東京電力・片倉百樹執行役員に話を聞いた。(吉澤信政記者)

 サミットを間近に控え、環境問題が盛り上がっていますが、ニューヨークにいると、日本の国としての取り組み方とか、企業の取り組み方などが気になります。

片倉 7月7日から始まる北海道洞爺湖サミットがひとつのターゲットで、国レベルでのいろいろな活動がなされています。福田首相がリーダーシップをとってサミットに臨もうと国内ではいろいろやっています。
 最近、福田さんも低炭素持続可能性のある社会作りに取り組む上での一番の基本は原子力だと言われています。エネルギーの供給サイドは原子力を進めること、需要サイドではヒートポンプを進める、ということが鮮明に言われるようになりました。特に、甘利正・経済産業大臣は、事あるたびにそれをおっしゃっています。

 昨年夏の新潟地震で柏崎の刈羽発電所がダメージを受けましたが、その後どうなっているんでしょう。

片倉 我々電力を扱っている者としては、今、特に東京電力で考えると4割が原子力なんです。その半分が柏崎。地震による被害もあって、昨年7月16日以降は全部運転を止めたので、総「発電電力」量の20%しか賄えないという状況です。
 一方で、低炭素社会という観点から、世の中の大きな動きの一つとして、需要サイドを電力で集約する方が、環境に優しいということが大体常識になってきています。電力を使うシステムそのものの高効率化が図られ、その代表的なものが、いろんなところで言われているヒートポンプなんです。
 ヒートポンプそのものが非常に効率が上がっています。今まではわりと不得手だった給湯=お湯を作るという分野。著しい技術開発によって、今はそれが実現でき、化石系のエネルギーを使うよりも、はるかに少ない、半分くらいの炭酸ガス排出量で済むと言われてます。
 日本全体で見て、給湯とか暖房を、化石系からヒートポンプに置き換えてみたらどうかと考えると、民生用と産業用全部入れて、1億3000万トンの炭酸ガスを減らすだけの力がある。これは大変な評価なんです。
 今、日本が地球に出している炭酸ガスは13億トンですから、需要サイドでヒートポンプのような高効率機器を使うと、その1割に相当するという感じです。もうちょっと中身を見てみると、産業用が3000万トン、民生用が1億トンということです。
 日本の場合は、京都のCOP3(第3回締約国会議)の時、1990年比で、2008年から10年で6%炭酸ガスを減らしますと言っていました。実際は、それよりも8%くらい増えているので、14%に大幅アップ。
 しかしそうは言っても、この1億3000万トンという量を見てみると、かなりの量がヒートポンプでキャンセルできる。そういう意味では、産業用、業務用、あるいは家庭用で、こういった分野がヒートポンプに代替されると、エネルギーが電力で集約されることこそが、実は環境に優しいシステムになるということが、みなさんに大体理解されるようになりました。
 その辺のところをもう少し世界全体に理解されるように、官も民もやっていかなければならない。まあ、こんな感じですね。

 サミットの大きなテーマですか?

片倉 そうです。日本はそういう意味ではこれからもヒートポンプ、あるいは産業用エネルギーにおける電化は、息長く、技術開発も含めて進めていくべき、というのが今の状況です。
 我々が言ってしまうと業界の話としてなかなか信用されませんが、昨年の日経新聞では、東大の総長もはっきり言っています。エネルギーの電化が地球温暖化に歯止めをかけるキーテクノロジーだと。

 日本だけなんですか? 今こうやってヒートポンプに関してやっているのは?

片倉 日本だけではありません。ただ、ヒートポンプについては、先端的なテクノロジーを持っているのが日本。特にお湯を作るというヒートポンプ「エコキュート」というのが家庭用でありますが、これは日本で始めて実用化されたもので、02年から市場に投入されました。昨年9月で100万台を超えています。政府としては2010年までに520万台を普及させたいと言っていますが、ちょっとそれにはラグがありますが、できるだけ普及させるように努めています。

地球を救うキー
テクノロジーに


 「エコキュート」ってどういう意味ですか?

片倉 「エコ」はエコノミーとエコロジー、「キュート」は、実は日本語の「給湯」なんですよ。まだ、世界的にはあまりメジャーな技術ではありませんが、イギリスからも引き合いが来ていますし、日本のメーカーはヨーロッパに拠点を作って、ヨーロッパで普及させようとしています。、これはある意味では地球を救うキーテクノロジーの世界商品として、また家庭用では一番大事なものとして使われるようになるかも知れません。

 システムは国ごとに変えないといけないんですか?

片倉 そうですね。カリフォルニア州のシュワルツネッガー知事のところに説明に行ったんですが、あまりにシステムがタフだと笑われてしまいました。アメリカはそんなことを言っている場合ではないという気はしますけどね。
 アメリカは非常に安く売ってるんですね。その代わり収入になるかどうかは別なんですが、非常に安くて、桁が一つ違う感じです。いくら意見交換をしても合わないから、彼らは本当に分かってないのかなと思って、終わった後に大きなホームセンターに行ってみたところ、やはりそういう値段で売ってるんです。5、600ドルでした。日本のものは40万円くらいしますから、桁が一つ違うので、びっくりしたんです。
 ただ、アメリカはある意味ではエネルギー垂れ流しのシステムですから、今後必要性を考えることになると思います。ヨーロッパはすでに確実に気が付いていて、増やそうとしているわけです。
 ということですから、やはりアメリカも将来は使っていくことになるでしょうね。
 世界商品になれば、市場が大きくなるから、価格はすぐに落ちる。今は日本が中心で、まだ世界商品になっていないし、日本の中でもまだ市場が集約形成されているわけではない。けれどもガス給湯市場は圧倒的に大きく、市場の拡大につれて、値段の問題は解消されると思います。

 世界に普及するまでどれぐらいかかりますか?まだまだ先ですか。

片倉 いや、そうでもないと思います。これだけ環境問題に関心が集まっている。やはり炭酸ガスの元は化石を使うということですから。それをシャットアウトするのは、全世界的な傾向です。ヒートポンプ全体が普及するのと同様、特に給湯市場での家庭用の「エコキュート」というのは、これから世界商品として出て行くだろうと思います。
 ちょっと違いますが、車が今、姿を変えようとしている。つまり、エンジンから電気自動車に変えようと。カリフォルニアが一度失敗しましたが、アメリカは電気自動車に回帰するという趨勢にあります。

 日本の技術開発はすばらしいので、メディアを通してもっとPRすればいいと思います。

片倉 私も、ヒートポンプ教の教祖として、いろんなところに出ていろんな話をしています。電力会社として、お客様がいろんなエネルギーの補整器を使うときに、お客様にとって一番省エネで、効率的なものというのは、これからの問題ですよね。
 エネルギー業者というのは、屋台のものが売れてなくなったからと言って、屋台を閉めるわけにいきません。資源に限りのある地球からエネルギーを取り、それをお客さまに売ってる会社ですから、そういう意味では、基本はあくまで省エネでなければならない。エネルギーを販売する会社がなぜそういうことを言うかといわれるかもしれませんが、僕は違うと思うんです。なくなってしまう可能性があるものについて、売り切れで屋台を閉めると、そういうわけにいかんのですよ。
 ちなみに、世界に比べて、日本の原子力稼働率は非常に低いです。大体70%いくかいかないか。フランスにしても、アメリカにしても、稼働率が84%と非常に高い。

 柏崎の止まっている原子力発電所は一番大きいんですか?

片倉 一つの基地で821万キロワットの発電設備というのは、世界最大です。

 いつごろ運転を再開されるんですか?

片倉 それは分からない。新しい耐震基準で見直して、それに合わせてリフォームするということですから。
 ただ、核心部分は全然問題はなく、IAGAの査察官も、地震後2回ほど来ましたが、びっくりして帰ったほど。 被爆国ということもあって、日本人は原子力については過敏です。仕方がないことではありますが、それに乗じてこういった問題と重ね合わせるということもあります。何でもそうですが、きちっと管理したものでさえあれば、問題はないわけです。

片倉百樹(かたくら・ももき)=1968年東京大学工学部都市工学科卒後、東京電力入社。一貫してエネルギー営業部門に従事し、家庭・都市・産業などあらゆる分野にむけた「ヒートポンプ・蓄熱システム」の開発、普及に力を注いだ。現在は執行役員、販売営業本部副本部長。