ニューヨークの青少年合唱団「ヤングピープルズ・コーラス(YPC)」が、7月14日から8月10日まで日本で公演旅行した。そのメンバーの一員として加わったラファエル・ラブジィー君、18歳。初めての日本旅行に胸をときめかせた。
ラファエル君は、音楽療法師の母親の影響もあり、妹とともに合唱団に参加している。YPCは、7歳から18歳までの少年少女で構成されていて、世界合唱オリンピックの3部門で金メダルを受賞するなど、その実力と心に響く美しいハーモニーに定評がある。
ラファエル君は選抜メンバー35人(男子11人、女子24人)の一人に選ばれ憧れの日本旅行が重いがけず現実のものとなった。
日本での滞在は26日間、公演旅行は20日間で北海道を除く本州、四国、九州の18都市を回る強行軍。温度、湿度の高い真夏の日本の印象は「確かに湿度温度ともにニューヨークよりは高かったけど、予想してたよりもしのぎやすかった」と夏の思い出を懐かしむ。
「成田空港に到着後、すぐバスで仙台へ。そのあとはほとんど毎日のように移動が続いて大変でしたが楽しいことだらけであまり疲れは感じなかった」「何百年前も昔に建てられたお寺があるかと思うと同じ場所に、モダンな大都会が広がるなんて、すごくミステリアス。どこに行っても見ほれてしまったのは神社、特に春日大社が素晴らしかった」と初めて間近に見た日本の風景を興奮して話す。
コンサートは、どの都市も売り切れとなり、メディアでも高い評価を受けた。「ステージが中央にあって、観客が前にも背後にもいるような作りのところもあってビックリしたけど日本のホールは素晴らしい。終了後、聴衆がステージに上がって我々団員と一緒にダンスを踊ったり」と眼を細める。
熊本で初めて行ったカラオケも楽しい思い出となった。四国では地元の中学の70人くらい団員がいる合唱団を訪問、お互いに得意な歌を披露しあったり、歌が終わったあとはみんなでゲームやダンスをして盛り上がった」公演旅行中、最初で最期の同世代との楽しい交流会だった。
ラファエル君の一家は家族揃って大の親日家。ラファエル君自身は、NY剣禅道場で剣道に打ち込む日々、現在一級を取得、さらに上の初段を目指して稽古に励んでいる。妹、弟がいるが全員日本文化に魅かれ14歳の妹は今年春から、500年近い伝統を持つ古武術・新陰流兵法(剣術)を学び始めた。弟も合気道を始めたいと意欲満々だ。兄弟は日本語教室にも通った経験を持ち、ひらがなや簡単な漢字なら書くことも出来る。
残念だったのは、中学や高校の剣道部を覗く時間がなかったこと。空港や街角では、剣道の道具を持ったグループなども見かけ、ドキドキ心ときめいたが「僕はシャイで、声をかける勇気はなかった」とはにかむ。
合唱団の規則上、メンバーは18歳まで。ラファエル君にとっては、YPCは今年が最期だ。
「今度日本に行くチャンスがあれば、ヒッチハイクや、剣道も体験してみたい」と眼を輝かせる。将来は農業や代替エネルギーの分野に進みたいという。「歌と剣道は生涯続ける」ときっぱり。ラファエル君と日本は今後どのような関わりをみせるのだろうか、楽しみだ。青春はまだ始まったばかり。
(塩田眞実)
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