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 よみタイムについて
   
よみタイムVol.70 2007年8月3日号掲載

「現代作家たちの作品が市場でとても活発になってきた」とマービスさん
 ギャラリー・オーナー ジョーン・マービス

8歳の時、墨絵に魅せられる
幸運、人間国宝との邂逅



上棟式の日光輪王寺の関口住職(右)とウッド日本協会理事長

 この9月にマジソン街に自分の名前を冠したギャラリーを新たにオープンする。7月25日に行われた上棟式には、日光の天台宗輪王寺の関口住職が列席して仏式のセレモニーが執り行われた。
 これまで30年間、プロのディーラーとしてやってきたが、プライベート・ギャラリーを自宅で運営し予約客だけと付き合ってきた。プライベートとの大きな違いはパブリックに展覧会が開けること。店舗をオープンしたあとも予約オンリーのスタイルは維持するが、エキジビション中は一般公開する。
 セントラルパークを見下ろす自宅兼仕事場のソファにもたれて「そうね、少し変わった子どもだったかも知れません」とマービスさんは穏やかに微笑む。
 両親はともに科学者で日本文化には何の興味も示さなかったが、マービスさんは8歳のころ、公共放送テレビ(PBS)でやっていた「墨絵」の描き方を教える教育番組にのめり込み、毎日学校から戻るとテレビを見ながら松の木や鶴の絵を水彩を使って練習したという。また、町の図書館で浮世絵の本を見つけ、借りてくるとクレヨンで「模写」をするような子どもだった。ただ、他のアジアの国の美術、文化には一般教養以上の興味は持てなかったという。一環して「日本」がマービスさんの心を捉えて離さなかった。
    ◇
 60年代のアメリカでは「日本製」と言えばまだまだ「安物」の代名詞。70年代に入ってさえもアメリカで日本美術史に関する大学院の博士課程のプログラムは5校に過ぎなかった。しかし、マービスさんはツキにも恵まれた。日本美術専門のディーラーの道に入ったのは30年前。ちょうど日本の経済が目覚しい成長を遂げ「Things Japanese」が名誉回復へ向かう時期に、少女時代から培った日本趣味に磨きをかけ、日本美術ディーラーとしてのプロを目指した。時期が偶然一致して「ほんとに私はラッキーでしたね」と当時を振り返る。
 今日、日本の陶芸は陽の目を見、洗練された芸術作品として認知されるようになったが、20年前は状況が違った。
 一昔前までほとんどのアメリカの学生が長い夏の休みに向かうのはヨーロッパだった。「私の長い間の夢はずっと、日本に行ってみたい、だったんです」日本に関心のない両親はそれでも「大学のプログラムに参加して行くこと、学位取得のクレジットに役立つなら経済的に援助してやろう」と条件付きで理解を示してくれた。シラキュース大学の企画「日本セラミックス探求」プログラムを見つけた。陶芸に特に興味があったわけではないが両親との約束を果たした。しかし、この時の旅こそが思わぬ人生の転機となった。
 2か月の滞在で、仲間と精力的に日本を歩き回った。各地の美術館、作家の工房、現代陶工を自宅に訪れ、その技術を実際に見聞きし、直接仕事場で対話した。
 今振り返ると信じられない体験がある。「浜田庄司との出会い」だ。浜田は1894年生まれ。1978年に亡くなるまで主に昭和を舞台に活躍したコンテンポラリー・アーチストの巨人だ。現代の日本陶芸界の頂点に立ち、現代作家に大きな影響を与えている作家である。55年に人間国宝、68年に文化勲章を受章している。その天才とこの旅の途中で邂逅(かいこう)したのだ。
 大学院を終了すると、マービスさんは頻繁に日本とニューヨークを行き来するようになる。もっともっと日本の絵画、屏風、浮世絵、を学ぶためというのが目的だったが、個人的に、あちこちで陶芸作品を手に入れた。「ニューヨークの自宅に作品を置いておくと、日本画や版画を求め、私の元に来る取引相手や顧客が部屋に飾られている陶芸作品に強い興味を示すの。」
 たいていの場合「ごめんなさいね。これ売り物じゃないの。私の家に必要なものなんです」とヤンワリ断ることが増えた。やがて時が経つにつれて壺や鉢などが増え、収納スペースに困った。
 転機は訪れた。83年、ワシントンのスミソニアン美術館とロンドンのビクトリア・アルバート美術館で開かれた菊地智コレクション「現代日本陶芸展」を見て仰天する。初めて見る質の高い現代作家のコンテンポラリー作品群に目を奪われた。「これだ」と思った。翌年、日本で友人を介して現代陶芸収集家マダム・キクチと出会う。この時から「日本現代陶芸のディーラー」を目指した。
 浮世絵や日本画などの骨董の世界はすでに出尽くしていて伸びは期待できない。購入者も限られている。一方、現代日本の陶芸作家のコンテンポラリー作品はこれからの分野でポテンシャルが高い。アメリカ人にもっともっとその新たなコンテンポラリーの美の世界を伝えたい、と心に刻んだ。 
幸い現代作家たちの質の高さはマービスさんの期待に応えるだけの高水準を保っている。
 ディーラーであるということはビジネス・センスと良いものを紹介したいというミッションとしての観点をあわせ持った実践のパワーが要求される。マービスさんは、顧客にとって先生でもある。実際ニューヨークでの著名なコレクションにはマービスさんのテイストが多分に含まれていることが多い。
 一方、若い才能の発見もマービスさんの喜びであり使命である。まさに日本の現代陶芸の未来を握るキーパソンとも言えそうだ。日本の美と伝統文化をこよなく愛し、一人でも多くのアメリカ人に伝えたいという情熱は、これからも次々に新しく生まれてくる日本の若手陶芸作家に、高いモチベーションを与え続けることだろう。
 これからも頻繁に日米を行き来し、良い作家がいれば、どこにでも出向いて行くという。
(塩田眞実記者)

9月17日オープン予定
JOAN B MIRVISS LTD
39 East 78th Street,
4th Floor
New York, NY 10075
Tel:212-799-4021
www.mirviss.com