2019年7月12日号 Vol.353

地下鉄アート

駅 86th Street (Manhattan)

ピーター・シス「ハッピー・シティ」
PETER SIS: Happy City, 2004


All photos by YOMITIME


イラストレーターで児童書作家のピーター・シスはチェコスロバキア生まれ(1949年)。映画監督の父と芸術家の母の元に生まれ、妹がいた。10代の頃、アメリカの詩人、アレン・ギンズバーグや、ロックバンドのビートルズ、ビーチボーイズ、ローリングストーンズなど、西洋文化に興味を持つ。プラハやロンドンの美術学校でアートを学び、自作の短編アニメが1980年のベルリン国際映画祭でゴールデンベア賞を受賞、アニメ作家のキャリアをスタートさせた。1982年、チェコ政府から1984年のオリンピック参加を題材にしたアニメ制作を依頼され、ロサンゼルスへ。ところが、東側諸国がボイコットすることになり、シスに帰国命令が下される。だが、シスはそれを拒否、アメリカへ亡命した。ニューヨークに拠点を移したシスは、小説家シド・フライシュマンの児童書「身がわり王子と大どろぼう」でイラストを担当。同書がニューベリー賞を受賞したことで、その才能が広く知られることに。現在まで、CMや雑誌の挿絵、オリジナル絵本なども手掛け、多くの賞を受賞している。

「ハッピー・シティー」は、活気あるニューヨークのコミュニティーを、4つの目で表現。「まつげ」の部分は、メトロポリタン美術館やグッゲンハイム美術館、グレイシーマンションなど、近隣のランドマークを取り入れたマンハタンのビル群を表現。白目の部分では、コミュニティーの多様性を表現するため様々な人種の人々が描かれ、中央の目玉部分は「回転木馬」で、おとぎ話に登場するような動物たちが描かれている。マルチカルチュラルなニューヨークで、異なる国籍の子どもたち全てが幸せになるように、というシスの思いが込められた作品。


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