2019年8月23日号 Vol.356

地下鉄アート

駅 125th Street (Manhattan)

ヒューストン・コンウィル「オープン・シークレット」
HOUSTON CONWILL : The Open Secret, 1986


All photos by YOMITIME


ケンタッキー州ルイビルで生まれ、ニューヨークのブロンクスで亡くなったアフリカ系アメリカ人のヒューストン・コンウィル(1947〜2016)は、彫刻家、画家、コンセプチュアル・アーティストとして活動。1960年代のアメリカで、黒人によって始められた文化的な運動「Black is beautiful(黒は美しい)」で、同じ人種の活動家や知識人などを、作品を通して称賛。著名な作品のひとつに、ニューヨーク市立図書館のショームバーグ黒人文化研究センター(Schomburg Center for Research in Black Culture)のフロアデザインがある。人造大理石と黄銅を使用し1992年に完成した同フロアは、アメリカの黒人詩人、ラングストン・ヒューズを讃えている。ハーレムの「スタジオ・ミュージアム・イン・ハーレム」は、コンウィルの作品を「黒人文化における永遠の記念碑である」と評価する。

ブロンズ製のレリーフ「オープン・シークレット」は、コンウィルの長年のテーマであった「コミュニティ」「冒険」「神聖な空間」の概念を、独特なデザインで表現したもの。1980年代、ハーレムでの生活の様子を示したタイムカプセルであり、黒人の経験や平等の探求に関連した、「謎」を内包しているという。「私たちが見つけた『永遠の秘密」を、子供たちや孫たちのためにタイムカプセルに保存した。冒険するのは『場所』かもしれないし、私たち自身の『心の中』かもしれない」と、生前、コンウィルは述べている。1986年に設置された同作は、MTAアートの中でも古いインスタレーションのひとつ。


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