2019年11月29日号 Vol.363

地下鉄アート

駅 Whitehall Street (Manhattan)

フランク・ジョルジーニ「パッセージ(移り変わり)」
FRANK GIORGINI : Passages, 2000


All photos by YOMITIME



アップステイト・ニューヨークに住むアーティスト、フランク・ジョルジーニ(1947年生まれ)は、セラミック・アートのスペシャリスト。マンハッタンのパーソンズ美術大学で建築タイル・デザインを教え、著書「ハンドメイド・タイル(Lark Books/1994年)」は、陶磁器制作の教育用バイブルとして広く利用されている。1995年には、アメリカでセラミック関連作品の保存・普及に特化する非営利団体「タイル・ヒリデージ・ファウンデーション」から財団賞が授与された。

「パッセージ」と題されたセラミックとガラスのモザイク壁画は、バッテリーパークの移り変わりを描いたもの。エスカレーター横に設置された都市の景観は、現在から過去へとさかのぼっていく。周囲にそびえる高層ビル群(制作当時には存在していたツインタワーも見える)、ヨーロッパから初の入植者が到着した港、イングランドの探検家ヘンリー・ハドソンの船「ハーフムーン号」の停泊、そして人々が定住する前の湿地帯で生きる動植物が生き生きと描かれ、遠くにはネイティブ・インデイアンのカヌーも見える。全ての景色に描かれた鳥たちが、異なる時代を繫ぎ、飛び交う。ニューヨークの歴史を紐解き、現代社会を生きる我々が、忘れがちな過去への「敬意」を示している。


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