2019年12月20日号 Vol.364

地下鉄アート

駅 Whitehall Street (Manhattan)

ジーン・シン「エレベーテッド」
JEAN SHIN : Elevated, 2017


All photos by YOMITIME



韓国・ソウル生まれ(1971年)で、両親と共に6歳でアメリカへ移住、現在はブルックリンを拠点に活動するアーティストのジーン・シン。日常的なオブジェを素材に、「アイデンティティ」や「コミュニティー」をテーマにしたインスタレーションで知られている。特定のアイテム(例えば処方薬瓶、スポーツトロフィー、セーター、レコードなど)を収集して創られるインスタレーションは、放置されたオブジェクトに所有者の生活を反映させると共に、コミュニティーとしての問題も想起させる。

「エレベーテッド」と題された作品は3パターンの図柄で、それぞれセラミックタイル、ガラスモザイク、合わせガラスで制作。かつてマンハッタンを運行していた「高架鉄道」の「セカンド・アベニュー」ラインと「サード・アベニュー」ラインのアーカイブ写真をベースにしている。地上出入口のエスカレーターエリアには、1940年代に解体・撤去された高架鉄道の鉄骨を描いたセラミックタイル(写真上)が、中2階には、その当時、駅を利用していた人々を描いたガラスモザイク(写真中央)が、プラットホームレベルには、当時の街並みが描かれた合わせガラス(写真下)が設置されている。過去の風景を残すと同時に、ニューヨーク市が発展する中で歴史的なモノが失われているという事実を示している。


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