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Vol.198:2013年1月25日号
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 よみタイムについて
河野洋: 名古屋市生まれ。12歳でロックに目覚め、ギター、バンド活動を始める。89年米国横断、欧州縦断のひとり旅の後、92年NYに移住。03年ソロアルバムのリリースと同時にレコード会社、Mar Creation, Inc.を設立。現在は会社では、アーティストマネジメント、PR、音楽、映像制作などエンターテイメントに関連するサービスを提供するかたわら、「NY Japan CineFest」「j-Summit New York」などのイベントをプロデュース。その他にも、エイズ、3.11震災後の日本復興に関わるチャリティイベントや、平和、社会、環境問題などをテーマにしたプロジェクトにも積極的に取組んでいる。
ウェブサイト : www.marcreation.com / メール: contact@marcreation.com
「オンガク喫茶」のこぼれ話はブログ「ゼロからのレコードレーベル」

よみタイムVol.198 2013年1月25日発行号

パワフルかつソウルフルな歌声
シンガーソングライター
トリクシー・ウィットリー



デビューアルバム「Fourth Corner」

 才知は年齢と共に鋭さを増すが、才能は年齢と関係なく開花する。来る1月29日にデビューアルバム「Fourth Corner」を発表するトリクシー・ウィットリーは、弱冠と称するには申し訳ないほどの経験と実力を持つ25歳のシンガーソングライターだ。

 ベルギー生まれのトリクシーは3歳で初めて舞台に立つと、11歳でブリュッセル近代美術館における最年少のレギュラーDJとなる。幼少の頃から芸能活動にどっぷりと浸った背景には、欧州ジプシーの血筋を引く母親とシンガーソングライター、クリス・ウィットリーを父親に持つ境遇があった。
 彼女は主に、ベルギーとニューヨークで育ったが、頻繁にフランス、テキサス、メキシコの家族を訪問するという、言ってみれば放牧民族的な生活が肌にしみ込んでいた。更に、ミュージシャン、画家、作家など、芸術肌の人間と過ごす日々の連続からか、若くしてある夢を抱くようになった。
 「私がソロアルバムを作ろうと考え始めたのは12歳の頃よ。音楽の持つ煽動力と表現への渇望が私の夢を支えたの」
 大人に囲まれての生活だったが、子供だからと言って肩身の狭い思いをすることはなかった。
 「私の周りには、いつもアーティスティックな人たちがいて、そんな環境の中で育てられて運が良かったと思う。私が子供だからと言って軽視するような人はいなかったし、逆に敬意を持って接してくれたわ。私の家族の信条は、年齢、人種、体の大きさに関係なく、誰もが他の人と学び合い、教え合うことができるというもの。とは言え、ティーンの頃の私は、反抗的だったけど…」

 17歳で高校を中退し、ニューヨークに拠点を移したトリクシーは、しがないバイト生活を営みながら、ピアノ、ギター、そして、ドラムを学んだが、その利点について彼女は言う。
 「音楽は内面から生まれてくるものでしょ。だから自己表現の手段として、様々な楽器を学ぶことは大きな助けになるの。リズム楽器はメロディー楽器になり得るし、またその逆も然り。技術的な面も大切だけど、そういう楽器の本質にとても魅かれる」
 その楽器を表現の道具として操るトリクシーは2008年、運命を決めるデビューソロEP「Strong Blood」を完成させる。このEPを手に、ベルギーの音楽フェスティバルの会場を訪れたトリクシーは、U2、ボブ・ディランと名だたるアーティストたちのプロデューサーとして知られるダニエル・ラノワと出会い、母に背中を押されながらもEPを彼に渡し、会場を後にした。
 2009年、彼女はニューヨークで先の見えない生活を続けていたが、投げ出した学校に戻り、再び音楽を学ぶ決意を新たにしたその日、予期しないことが起こった。
 それは一本の電話だった。電話の向こう側にはダニエル・ラノワがいた。
 「ダニエルから学んだこと、今でも学んでいることを挙げたらきりがないわ。音楽、価値観、人々、優先事項。自分を更に成長、進化させる術、そして自分に不必要なもの見分けて排除する術」
 そんな多くのことを教えてくれたダニエルは、自身が率いるバンド「Black Dub」のボーカリストにトリクシーを抜擢する。
 しかし、メンバーは彼女以外、経験豊かなベテランミュージシャンばかり。そんな中で、自分らしさを自然体で発揮できたのだろうか。
 「初めて一緒に音を出した瞬間から、メンバー間の繋がりを感じたわ。でも実際にバンドとしての活動が始まると、不安との葛藤が浮き彫りになって、時に臆病になったの。でも、いつも最後には皆と判り合えた。バンドは音楽を通して愛し合い、そして励まし合う場所だったの」
 こうしてトリクシーはBlack Dubの一員として、2010年にバンドのデビュー作となる「Black Dub」を発表し、2011年にはワールドツアーを敢行するという貴重な体験をしたのだ。

 幕を開けた2013年。1月の米国を皮切りに今春、欧州、英国で新作「Fourth Corner」の発売が決定している。その記念ライブが1月31日にマンハッタンで開催。若さと経験を武器に、飛躍し続けるシンガーソングライター、トリクシー・ウィットリーが、ついにその全貌を露にする。
 さらに現在、日本のレーベルと契約交渉が進んでいるとのこと、日本でのデビューも近々決まりそうだ。
 「常に成長を肌で感じながら音楽を探求し続けたい」と語るトリクシーは、その年齢、そして華奢な体からは想像もできないパワフルかつソウルフルな歌声で、会場を感嘆と感動で包み込む圧巻のステージを披露してくれることだろう。
(河野洋)

Trixie Whitley
1月31日(土)開場7pm、開演8pm
会場:Le Poison Rouge
158 Bleecker St.(18歳以上/要ID)
チケット:$15
www.lepoissonrouge.com
関連サイト:www.trixiewhitley.com