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Vol.199:2013年2月8日号
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 よみタイムについて
河野洋: 名古屋市生まれ。12歳でロックに目覚め、ギター、バンド活動を始める。89年米国横断、欧州縦断のひとり旅の後、92年NYに移住。03年ソロアルバムのリリースと同時にレコード会社、Mar Creation, Inc.を設立。現在は会社では、アーティストマネジメント、PR、音楽、映像制作などエンターテイメントに関連するサービスを提供するかたわら、「NY Japan CineFest」「j-Summit New York」などのイベントをプロデュース。その他にも、エイズ、3.11震災後の日本復興に関わるチャリティイベントや、平和、社会、環境問題などをテーマにしたプロジェクトにも積極的に取組んでいる。
ウェブサイト : www.marcreation.com / メール: contact@marcreation.com
「オンガク喫茶」のこぼれ話はブログ「ゼロからのレコードレーベル」

よみタイムVol.199 2013年2月8日発行号

古きを学び、現代を斬る新感覚ライブ
シンガーソングライター
エミリー・オータム


 シンガーソングライター、バイオリニスト、詩人と多くの顔を持つエミリー・オータムは良い意味でつかみ所がない。
 彼女のアルバムを聴けば、クラシック、テクノ、オルタナ、キャバレーなど、ありとあらゆるジャンルの音が次から次へと飛び出し、写真を見れば、悩殺ファッション、ゴシックなメイク、パンクなヘアスタイル、体にはタトゥーと、聴覚的にも視覚的にもワイルドに脳を刺激される。
 この時点で我々はエミリー・オータムの猛毒に体が麻痺してしまうのだ。

 カリフォルニア生まれのエミリーがバイオリンを始めたのは4歳の時だった。
 交響曲やバイオリン協奏曲を聴き漁り、クラシックにどっぷりと浸かっていた1人の演奏者が、シンガーに変貌を遂げる原因は何だったのだろう。
 「 人間の最も自然な伝達方法って 声を使うことだと思うの。子供の頃は楽器が私の『声』だったけど、自我が強くなるに従って、詩や曲を書き始め、そして自分の『声』を使えばいいってことに気がついて、歌を唄うようになった。そしたら言葉を使って歌ったり書いたりすることが止まらなくなったわ」と笑う。
 しかし、歌で伝える面白さを覚えたものの、完全にシンガーに転向してしまうことは、バイオリンに対しての「裏切り行為」と考えた彼女は、「シンガーと演奏家」という2人のエミリーを育んで行く事を決める。
 好きなものは何でも取り入れ、例えそれがあり得ない、とんでもない組み合わせであったとしても彼女は断固として「エミリー・オータムの世界」に確立していった。
 クラシック音楽を愛し、モダンインダストリアルロックに没頭できる許容範囲こそがエミリーの強みであり、その一つの例が、1枚はアコースティックバイオリン、もう1枚はエレクトリックバイオリンで演奏するという斬新な切り口によるダブルアルバム「Laced/Unlaced」(2007)と言えるのではないだろうか。

 アメリカ人のエミリーだが、彼女の人気はドイツで火がついた。2007年から2年に渡って続けられたという話題のライブは噂が噂を呼び、欧州全土へと波紋を起こし、現在では逆輸入という形で米国でも人気を集めている。
 ライブ映像をインターネットで見る限り、これは音楽コンサートなのか? ブロードウェイなのか? はたまたシアターなのか? ? ? と疑問符が頭の中を駆け巡る。
 現在続行中の「FLAG」と題された今回のツアー。アメリカでも大好評で熱狂的なファンを狂喜乱舞させている。
 ヴィクトリア時代のハープシーコードで観客を優雅な世界で包み込んだと思えば、ヘヴィメタルのギタリストをも彷彿させる狂心のエレクトリックバイオリン・ソロを披露。さらにはクイーンの名曲「ボヘミアン・ラプソディー」のカバーまで飛び出す懐の深さで、観衆を全く飽きさせることはない。
 ステージを見れば、肌も露なセクシー衣装に身をまとったエミリーが、女性だけの編成によるバーレスクダンサーたちとかけあい、火喰いあり、竹馬ありの、サーカスショーの要素も含まれた波瀾万丈のステージパフォーマンスが繰り広げられるのだ。

 そんな彼女には目標がたくさんある。
 「実はブロードウェイにもチャレンジしたいの。ライブツアーはその予行演習みたいなものね。だってブロードウェイがプレミアしたら毎晩パフォーマンスして、昼と夜の2回公演の日もあるハードスケジュールじゃない? だからツアーをすることは、その時の為の準備みたいなものなのよ」
 こうした話を聞けばアーティスト「エミリー・オータム」は西洋文化の申し子と思われそうだが、実は本人は知らない言語や文化にとても興味を持っており、特に日本への思いは人一倍強い。日本に魅かれる理由の一つが、自社ブランドで製造販売までしている「お茶」。
 「お茶は一つの植物から作られるのに、文化や環境が変れば、煎じ方も違うし、飲み方も違う。お茶は、ソーシャルな場を提供するものとしても世界中で愛されている共通の飲み物、そんなところにとても魅かれるのよ」と繊細な面も見せる。
 彼女の夢は茶室を建てることらしく、日本ツアーが実現した暁には茶道を学びたいそうだ。

 古きを学び、現代を斬る新感覚のエミリー・オータム。破壊的な想像力が未来に向けて一直線に駆け抜ける。そんな、エミリー・オータムのライブショーを体験したら、アドレナリンが止まらない!
(河野洋)

Emilie Autumn
■2月22日(金)開演7:00pm
■会場:The Gramercy Theatre
 127 E. 23rd St.
■Tel: 212-614-6932 ■$22
www.thegramercytheatre.com
■関連サイト:emilieautumn.com