会場はノラ・ジョーンズ、シェリル・クロウ、レディ・ガガなども出演した「カッティング・ルーム」 |
ライアン・ショーはシンガーというより音楽そのもの。初めて彼のライブを見れば、浮かぶ思いはみな同じではないだろうか。
ソウルの神がステージで伝道しているかのように、ライアンは至上の愛を説き、鎮魂歌を捧げる魂のメッセンジャーと化す。彼の躍動するリズム感も、変幻自在に変わる透明感溢れる声も、全身からみなぎるエネルギーや情熱と共にパワフルなメロディーとなって流れ出してくる、正真正銘のソウル・シンガー。
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ジョージア州ディケーター市に生まれたライアンが歌い始めたのは5歳の時。信仰深い家族に囲まれ育ったという彼の当時の舞台は教会であり、音楽はゴスペル一色だった。周りがポップスなどを聞いている時でも、彼はダリル・コーリーやジェームス・ムーアと言ったゴスペル・シンガーたちを四六時中聞いていたと言う。
そんなバックグラウンドがある為か、実際、ライブ中、ソロ演奏するバック・ミュージシャンを静かに見守る彼の姿は、時に牧師を彷彿させる。
ジョージア州立大学に進んだ後、ライアンはゴスペル・ミュージカル「A Good Man Is Hard to Find (Part II)」に合格し、ステージは教会からシアターとなる。その後、活動の拠点をニューヨークに移した彼は、ビーコン・シアター、モータウン・カフェ(57丁目)などでキャリアを積み、現在はブロードウェイの「モータウン」でスティービー・ワンダー役として活躍するまでになったのだ。
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ライアンは昔、50年代から70年代の音楽を聴き込むにつれ、コンテンポラリー音楽に欠如しているエッセンスが、それらの時代の音楽にはあったことに気がつく。
「僕が大切にしているものは、本物の音楽に必要なコード、メロディー、歌詞、アレンジといった要素だよ。これら全てのエッセンスが音楽の中に活かされていたのは80年代後半が最後だったと思う。アニタ・ベイカーやルーサー・ヴァンドロスのようなアーティストたちだね。90年代中盤の音楽に残っていたのは、2つのコードとドラム・ループだけ」と、21世紀を迎えた現在ソウルミュージックの救世主ライアンは静かに語る。
2008年に「This Is Ryan Shaw」でソロ・デビューを飾り、グラミー賞で2度に渡りノミネートされたライアン。ハードロックバンド、ヴァン・ヘーレンのオープニング・バンドまで務め、その実力はジャンルを越えて認められるようになり、着実に彼の名前は広まっていく。
ライアンが満を持して昨年発表した入魂の最新アルバムが「リアル・ラブ」である。アル・クーパー、ロバート・ランドルフ、ソウル・サバイバーなど豪華ゲストを迎えたこのアルバムは、ビートルズの名曲「イエスタデイ」のカバーを始め、オリジナル曲「Karina」などパワフルかつソウルフルなナンバーが並び、iTunes R&B/ソウル・チャートのベスト10へと駆け上る今や押しも推されぬスターの仲間入りを果たした。
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そんなライアン・ショーのライブが、ミッドタウンにある音楽クラブ「カッティング・ルーム」で毎月第2、第4月曜日に楽しめる。彼のライブに来る客層は黒人、白人、アジア人がバランス良く席を埋め、誰もが楽しめるエンターテイメント・ショーだ。
ブロードウェイの「モータウン」は値段が高いし、ハーレムまで行ってゴスペルを聴くのは少し面倒と言うニューヨーカーには、一度ライアン・ショーの「Soul Out Loud - Soul Night」を是非体験してみてほしい。スティービー・ワンダーの名曲「迷信」やマイケル・ジャクソン、モータウンのヒットナンバーから、最新アルバムからのソウルナンバーまで最高のソウル・ワールドを体験させてくれる!
(河野洋)
Soul Out Loud - Soul Night feat. Ryan Shaw
■6月24日(月)・7月8日(月)・7月22日(月)10:00pm
■会場:The Cutting Room
44 E. 32nd St.(Bet. Madison & Park Ave.)
Tel: 212-691-1900
■前売$15、 当日$20
■thecuttingroomnyc.com |