ニューアルバム「 La Rumba is a Lovesome Thing/A Tribute to Billy Strayhorn」 |
ニューヨークで生まれ育ったサックス奏者、ポール・カーロンには、ラテンジャズの代名詞がついてまわる。
「ここニューヨークが発祥の地じゃないかな。俺のDNAに『ラテン』があったわけじゃないけど、90年代初頭にマンハッタンでラテンジャズを耳にするようになって虜になった」
外国人が演歌を、日本人がソウルを歌うようにアメリカ人がラテンジャズを演奏することは大きな挑戦であり、それ故、二つのものが融合した時の面白さは類を見ないほどである。
96年になると、ポールはキューバ、ブラジル、プエルトリコの音楽に取組むようになり、アッパーウェストサイドで毎週ライブ演奏を続けた。ラテン音楽に魅力を感じた一つの理由は、リズム的観点からジャズとアフロ・ラテンに接点を見いだしたことだった。
そして、自分の血に流れていないラテンのリズム「クラーベ」。ポールはこれを真剣に勉強したという。
「ビーバップなど様々なジャズのスタイルをラテン音楽に取り込んだりすることは難しくないが、本質がつかめていない状態で、それをやっても薄っぺらなものに響いてしまう。クラーベを体にしみ込ませること、それはラテンジャズを演奏していく上で必須だった」と語る。
ポールは演奏者だけでなく、作曲家、アレンジャーでもあるが、同時に自主レーベルも運営し、様々な形体のグループにリーダーとしても参加している。 「Grupo Los Santos」(98年結成、ジャズ&アフロ・キューバン、ブラジリアン、フラメンコ) 「Paul Carlon Octet」(02年結成、ボーカル、ダンスを含むラテンジャズ)「The McCarron Brothers」(06年結成、オルタナティブ・ジャズ)、「RumbaTap」(アフロミュージック&ダンス)、「Swingadelic」(ビッグバンド)など、休むことなく活動中だ。
しかし、ニューヨークで音楽活動することは並大抵のことではない。これだけ自分のやりたい音楽をバランス良く続けられる秘訣は何なのだろう。
「ギタリストのチャーリー・クリスチャンが言っていたことなんだが、ライブ(音楽を演奏)するのは3つの理由があって、1つ目はお金がもらえる、2つ目は楽しめる、3つ目は何かが学べる、ということなんだ。つまり、この3つの理由がどれも当てはまらなければ、演奏する意味がないってことだね」と常に目的意識を持って演奏活動をすることが大切だと語る。
その彼が2年もの年月を費やして制作したアルバム「 La Rumba is a Lovesome Thing/A Tribute to Billy Strayhorn」が7月9日、ZOHO MUSICレーベルからリリースされる。タイトルにもあるように、このアルバムはピアニスト兼作曲家の故ビリー・ストレイホーンに捧げられたもの。
ポールの血となりつつあるラテンジャズと、彼が尊敬するビリー・ストレイホーンの融合が楽しめる内容で、ビリーが作曲した代表作「A列車で行こう」(デューク・エリントン楽団で知られる)も収録されている。ラテンジャズを知らない人も多いに楽しめるだろう。
同アルバム発売を記念して、CDリリース・コンサートがマンハッタンのグリニッチ・ハウスで行われる。ポールがトップクラスのジャズコンポーザーと崇めるビリー・ストレイホーンの音楽を、自身が率いる11人編成のグループでどんなラテンジャズを聞かせるか非常に興味深いところ。
コンサートの後はワインやおつまみありのレセプションも用意されており、ラテンジャズについてポールと直接話をすることもできそうだ。
最後にポールから一言。
「アーティストとしての俺の仕事は、ライブに見に来てくれた人を音楽で別の世界に導くこと。ビリー・ストレイホーンの素晴らしさを知ってもらいたいし、ラテンジャズの世界を体験してほしい。コンサートを観る前と後では違う人間になってほしいんだ。そして、いつか日本を訪れて、僕の音楽を日本のみんなと分かち合いたい」
(河野洋)
CD Release Party: Paul Carlon
■7月11日(木)
コンサート 7:00pm〜8:30pm
レセプション 8:30pm〜10:00pm
■会場:Greenwich House
46 Barrow St.
212-242-4770
■入場料:$15、$25(CD付き)
■www.greenwichhouse.org |