毎月第1月曜日の夜になると、名うてのジャズ・ミュージシャンや根っからのジャズ・ファンがグリニッチ・ヴィレッジにある老舗のジンク・バーに集ってくる。「今」を生きるビッグバンドのジャズを楽しむ為だ。
「イン・ザ・スピリット・オブ・ギル(エヴァンス)」と題された月に一度のジャズナイトをホストするのが、グルーヴ・コレクティヴのリーダー、ジェイ・ロドリゲス(サックス、フルート)、そしてアシッド・ジャズの先駆者、ヴィクター・ジョーンズ(ドラム、トランペット)率いる10人編成のザ・ロドリゲス・ジョーンズ・バンドである。
リーダー2人が存在するこのバンドについてジェイは語る。
「今では伝説となっているサド・ジョーンズ/メル・ルイス・オーケストラがいるだろ。ミュージシャン仲間が生み出すケミストリーって素晴らしいよ。ヴィクターは俺の兄弟みたいな存在で、寛容で冒険好き。いつもハードにスイングする。彼がリズム・セクションを、アレンジャー兼作曲家の俺はオーケストラの部分を担当している。お互いのアイデアを認めサポートし合える最高のパートナーだね」
このバンドの魅力の1つは、国籍も豊かで、男性のみならず女性が活躍している点だ。ベースのアマンダ・ルーザはブラジル人、フレンチ・ホルンの山村優子は日本人。ジャズ界では大先輩の2人にメンバーに選ばれた山村は言う。
「 とても光栄です。もちろん、彼らとの演奏から沢山の事を学んでいますが、クリエイティブな発想や発見はもとより、彼らの音楽に対する真摯で大きな愛情に触れることは特に貴重だと感じています。その姿勢には本当に敬服しますし、私もそうありたいと強く思います」
また山村は、ジャズ界では珍しいフレンチ・ホルン奏者。
「この楽器は自分が表現したい音やアプローチを作り出していく事ができると言うメリットがある上、比較される対象が少ないので、自分のスタイルや奏法を創りだせる喜びがあります。その反面、 模範とする対象が同じ楽器で少ないので、イメージが乏しくなってしまう可能性もあります」と希少な存在の楽器奏者は語る。
そんな彼女は、9月19日にマンハッタンでCDリリースコンサート、今秋には日本ツアーが控えている。フレンチ・ホルンに興味がある人は彼女のソロ演奏を体験してみるのもいいだろう。
このメンバー構成についてジェイは言う。「ここはニューヨークシティだぜ。国際的になって当たり前だし、今の時代、女性なしでは何も成し遂げられないから、このメンバーになったのは自然な流れだった。これまでも女性ミュージシャンはもっと評価されるべきだったし、実際にこうして注目されるようになったことは喜ばしいことさ」と、女性音楽家の活動を支持している。
最後に、よみタイム読者へ、ジェイからメッセージをもらった。
「俺たちに関心を持ってもらえたことに感謝しているよ。俺たちのアンサンブルで、メンバーたちの才能を見て、彼らが自身のリーダーバンドで演奏する時は、是非サポートしてあげてほしい」と、メンバー思いの一面を見せた。
ザ・ロドリゲス・ジョーンズ・バンドは、今年になって結成され、デビューライブも春に行ったばかり。
ぜひ一度、「今」を生きるジャズメンたち、そして、「未来」へと息づくこのビッグバンドを、自分の目と耳で確かめてほしい。
(河野洋)
The Rodriguez Jones Band
■8月5日(月) 9pm & 11pm
■会場:Zinc Bar
82 W. 3rd St.
Bet. Thompson & Sullivan St.
Tel: 212-477-9462
■$15
■zincbar.com
バンドメンバー:
Jay Rodriguez, Saxophone, Flute
Victor Jones, Drums, Trumpet
Dylan Meek, Piano
Jake Hertzog, Guitar
Amanda Ruzza, Bass
Randall Haywood, Trumpet
Yuko Yamamura, French Horn
Stephen Hall, Saxophone
Ben Barson, Bariton Sax
Ben Stapp, Tuba |