今年もクリスマスがやってくる。愛する人、家族への贈り物。
しかし、失業中のイーヴィー・アーチャーには、両親へのプレゼントを買うお金がなかった。そこで思いついたのが、どこでも買うことができない自作曲「オン・クリスマス・デー」だった。
「(作曲した)この年は両親と一緒にクリスマスを過ごせたけど、クリスマスに愛する人たちと一緒に居ることができない全ての人たちに捧げた」
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イーヴィーの音楽との出逢いは、両親にピアノをねだった2歳の頃に遡る。その後まもなく、作曲を始めたという彼女にとって音楽は切っても切れない密接な関係となった。
しかし、音楽をライフワークにすることを決断するまでには紆余曲折があったと言う。
「一番困難と感じるのは、安定した生活をしなくちゃいけないという思いに駆られる時よ。どんな分野でも、特に芸術の世界は、成功の保証なんて何一つないのに。私は何年もの間、音楽を追求することから逃げていた。だから今は胸を張って夢を追いかけられることに感謝している」
イーヴィーの音楽は、米国の広大な大地の果てにある地平線に向かう心地よさと、移り行く視界の景色と同期する心の情景が生み出す清々しさに似ている。悲しみや心の痛みを胸に、未来の扉を開き、新しい世界を見渡す爽快さ。それは、イーヴィーの音楽性がレコードやラジオを聞き漁って養われたものではなく、よく両親と車で旅行をしながら、音楽に親しんだ環境があったからだろう。
そのせいか、彼女の歌には牧歌的な面すら見られる。ニュージャージーで生まれ育ち、今でも活動の拠点を大都市ニューヨークに移さないのは、そんな背景があるのかもしれない。
「ニュージャージーに住むことで二面性が得られる気がするの。ニューヨークは遠くないから通うにも楽だし、NJの静けさ、そして、NYに比べて平和な感じが好きなのよ」
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彼女の音楽のサウンド面を支えるのが、プロデューサーのゲイリー・カッツである。ダイアナ・ロス、ローラ・ニーロ、そしてスティーリー・ダンの数々の名作を作り上げた巧みの技が彼女の楽曲にも見事に活かされている。
「ゲイリーと仕事ができて本当に感謝しているわ。才能があるだけではなく、心の温かい人なの。サウンドメーカーとしてオーガニックで本物の音を作ってくれる」
イーヴィーの音楽に耳を傾けると、そこにはアメリカが広がる。
「私にとってのアメリカはチャンスよ。この国で夢を追いかけることができてラッキーだわ。アメリカにいると、どこにでも行ける、何にでもなれると感じさせてくれる安らぎと自由がある」
彼女の歌声が、メロディーが、人々の心に灯りをもたらすように、アメリカ中に響き渡る日は、さほど遠くないだろう。
「人生において、ポジティブなアクションを起こすことに年齢は全く関係ないのよ。前方の道が険しいように見えても、最初の一歩目を誤る事なく踏み出す術は、誰もが直感的にわかるものなの。あなたがやると決めたこと、その幸福と成功を心から祈っています」
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今年もクリスマスがやってくる。1年を振り返る12月だが、彼女のコンサートに来てみれば、来年、どの方向へ第一歩を踏み出せばいいかが見えてくるだろう。力強いメッセージが込められたイーヴィー・アーチャーの音楽をバックグランドに。
(河野洋)
Evie Archer
■12月10日(火)7:00pm-9:00pm
■会場: Chez André
(The Standard, East Villageホテル内)
25 Cooper Square
■予約:aohayon@standardhotel.com
■カバーチャージ:無し
■standardhotels.com/east-village
■12月17日(火)7:00pm
■会場:Rockwood Music Hall
196 Allen St.
Tel: 212-477-4155
■カバーチャージ:無し(21歳以上/要ID)
■www.rockwoodmusichall.com
■1月15日(水)7:30pm
■会場:SubCulture
45 Bleecker St.
■チケット:$15〜$18
■www.subculturenewyork.com |