破壊的なパワー、重厚なリズムに鋼鉄のサウンド。それが、80年代に爆発的な人気を誇ったヘヴィメタル。その代表的なバンドの一つがカナダ出身のアンヴィルだ。
今では、ヘヴィメタルと言っても、パワー、スラッシュ、スピード、デス、ブラック、北欧、シンフォニックなど、ジャンルが細分化したが、メタリカやスレイヤーと言った大御所たちも、偉大さを認めるアンヴィルは元祖ヘヴィメタルバンドの一つなのである。
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デビュー後、ブラックレザーに鋲ベルト、そんなファッションに身をまとい、長髪を振り乱し、爆音と共にシャウトするホットなアンヴィルにファンは熱狂した。
1984年夏には、未だ売り出し中だったボン・ジョヴィ、既に大人気だったマイケル・シェンカー・グループ、スコーピオンズ、ホワイト・スネイクを招聘して日本で行われた「スーパーロック84」にアンヴィルも招聘され、明るい未来は約束されていたかのようだった。
しかし、この後、ボン・ジョヴィは破竹の勢いでスターダムにのし上がり、このフェスに出演したバンドは、全て世界的な成功を収めるが、アンヴィルだけは歯車が狂う。
様々な問題が生じ、アンヴィルはメタルファンからも忘れ去られた存在になる。それでも、リーダーのリップス、相棒のロブ・ライナーの主要メンバーはバイトで食いつなぎ、ロック・スターの夢を追い続ける。
ある日、20年ぶりの欧州ツアーのオファーが届き、喜び勇んでツアーに望むものの、蓋を開けてみると、現地プロモータからギャラが支払われなかったり、小さなバンや電車を乗り継ぎ会場から会場を回るドサ周りのような苦労の連続に頭を抱える。
そんな彼らを赤裸々に綴ったのが、ダスティン・ホフマンやマイケル・ムーアらが絶賛するドキュメンタリー映画「アンヴィル〜夢を諦められない男たち〜」(2008年)だった。
この映画の世界的ヒットで、アンヴィルは脚光を浴び、再びヘヴィメタ・バンドとしてのステータスを築く。
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1978年の結成以来、山あり谷ありのバンド人生ではあるが、それでもアンヴィルは37年もの間、ヘヴィメタルバンドとして活動している数少ないベテランである事実は否めない。
昨年リリースした「HOPE IN HELL」(地獄の希望)は、どんな試練をも必ず乗り越え、自分たちが信じる道を突き進む不屈の精神がひしひしと感じられる快心作となった。
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来る3月14日、母国カナダからスタートする北米ツアー。今回は約45日間に渡り、29回の公演が予定されているが、家に帰ることなく、ずっとロード(ツアー)に出ていたいというリップスは、既にソールドアウト寸前というニューヨーク公演を前に気炎を吐く。
「今回のツアーでは最新作から3、4曲と俺たちのお馴染みのメタルナンバーを用意している。ニューヨークシティのショーも今から心待ちにしているぜ。いつもの様に特別な夜になることは間違いないから、みんな来てくれよ!」
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寝ても覚めてもヘヴィメタル。オヤジになっても疾走し続ける熱いベテラン・バンド、アンヴィルに、ヘヴィメタの神髄を聞かせてもらおう。
(河野洋)
Anvil
■3月26日(水)7:00pm
アーティストの都合により5月20日(火)7:00pmに延期
■会場: Santos Party House – Upstairs
96 Lafayette St.
Tel: 212-584-5492
■前売$16、当日$18ドル
年齢制限有り:16歳以上
■www.santospartyhouse.com |