仕事の帰り道、同僚と立ち寄るマンハッタンのアイリッシュ・バー。店内を賑わす人々の会話は心地良く耳を刺激し、喉を潤す一杯の酒が気分を和らげてくれる。そんな気持ちにさせてくれるのが、2008年にアイルランドのダブリンで結成されたアイ・ドロー・スローの音楽だ。
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アイルランドは音楽アーティストの宝庫。ザ・チーフタンズ、ヴァン・モリソン、シン・リジー、U2、シニード・オコナー、エンヤ、ザ・クランベリーズなど、時代を問わず個性溢れる才能を輩出してきている。
そして、アイ・ドロー・スローは、そんなアーティストたちに引けを取らないアイルランドの精神を継承しつつも進化する新しいバンドと言えるだろう。
バンドは、曲作りを担うデイブ・ホールデン(ギター)とルイーズ・ホールデン(ボーカル)という息の合った兄妹が中心となり、エイドリアン・ハート(ヴァイオリン)、コリン・ダーハム(バンジョー)、コンラッド・リディ(ダブル・ベース)の5人で構成されている。
彼らの音楽は、懐かしさを覚えるものの、古臭い印象は全くない。
「バンドの楽器編成は至ってオーソドックスだけど、俺たちの曲作りやアレンジは、むしろコンテンポラリーと言える。そこが新鮮さを生み出す要因になっていると思う」と語るデイブ。
さらに彼らはアイリッシュの伝統音楽と同様に、アメリカのアパラチアン音楽からも強い影響を受けている。デイブ曰く、最近の音楽シーンでも再認識されているという音楽だが、アイリッシュ・フォーク音楽とアメリカのオールドタイム・ミュージックの融合が、今の時代に新しく響く理由なのかもしれない。
そして、今年ヨーロッパでリリースされた3枚目のアルバム「White Wave Chapel」が、ついに米国でもダウンロード購入ができるようになり、CDも7月にリリースされる。
来る5月1日のコンサートでは、彼らの過去のアルバムから、お気に入りのナンバーを中心に、最新アルバムからの曲も披露するということで、彼らの熱いステージが期待される。
娼婦のほのかな思いを歌う「Goldmine」は、アイ・ドロー・スローの音楽センスが光る極上のナンバー。
…だけど、私だってあなたの金鉱になれるのよ/あなたの愛しいゴールドマイン/私のまわりにあなたの壁で囲って/私を甘いワインに仕立てて/ほろ苦いワイン/あなたが私を見つけた時みたいに酔いしれて…
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「ニューヨークでみんなに会えることを楽しみにしているよ。きっと素晴らしい夜になる。コンサートに来られない人も、俺たちの公式ウェブサイト(別記)でビデオやニュースをチェックして欲しいな。ありがとう!」と、メッセージを送ってくれたデイブ。
5月1日の夜は、行きつけのアイリッシュ・バーをお休みして、アイ・ドロー・スローの音楽に酔いしれてみるのはどうだろう。
(河野洋)
I Draw Slow
■5月1日(木)8:00pm
■会場:Irish Arts Center:553 W. 51st St.
■一般$18、(会員$15)
■irishartscenter.org
★オフィシャルサイト www.idrawslow.com |