ジャズの虜になるのは大人だけではない。むしろ自由奔放で奇想天外な発想を持つ子供の方が、即興演奏が基本のジャズに適しているかもしれない。
弱冠24歳。チャド・レフコヴィッツ-ブラウンは、ニューヨーク州北部にあるエルマイラで産声を上げた。父がジャズ好きな音楽教師だったこともあり、いつも家の中ではチャーリー・パーカーなどの音楽が流れ、トランペットを始め、色々な楽器も並んでいた。幼少のチャドには音の遊園地だったようだ。
その中でもチャドを魅了したのがジャズとサックスだった。音楽の基礎を父から学ぶと、水を得た魚のように即興演奏にのめり込む。
「型通りに楽譜に沿って演奏したりするのは全然面白くなかった。親父もそれを理解してくれて、まず僕にブルース・スケールを教えてくれ、自由にソロを弾く楽しさを学んだのさ。音符を自由に選び繋ぐ即興演奏は、まるでゲームみたいなもので夢中になったね」
11歳になるとチャドはクラブに出演するようになり、大人のジャズメンとスウィングし始める。子供の頃に養われた柔軟性は大人になった今も変わらない。
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例えば、チャドの一週間はこんな感じだ。水曜にディジーズ(Dizzy's)でクラレンス・ペンや小曽根真とのカルテットで華麗にソロを吹いたと思えば、木曜には54ビロー(54 Below)に舞台を移し、ブロードウェイ・シンガーたちのバックで、ビッグバンドの一員としてスーツ姿でバッチリ決める。日曜になると、バードランド(Birdland)でアルトゥーロ・オファリルのアフロ・ラテン・ジャズ・オーケストラに参戦し、火曜にはジンク・バー(Zinc Bar)でロバート・ロドリゲス率いるジャズコンボでファンを唸らせる。
彼のライブを追えば、ニューヨークの一通りのジャズ・クラブとジャズ・ミュージシャンを体験できるのでは、と思ってしまうほど、至る所に出没する華麗なサックス奏者チャド。
子供の頃から、一緒に演奏するのは年上のミュージシャンが圧倒的に多い彼だが、これほど引っ張りだこになる理由は何だろう。
「若いミュージシャンは自分がやりたいこと、自己主張が強くなる傾向にあると思うけど、僕は共演するミュージシャンたちが何を僕に求めているかを考えて演奏に取組んでいる」と自己分析。ステージの真ん中で演奏していても、自分のソロが終わると、いさぎよくステージ隅に移動し、他のミュージシャンたちを盛り立てる。
サイドマンとして活躍してきた彼だが、2013年には待望のリーダーアルバム「Imagery Manifesto」をリリースした。全曲オリジナル、セルフ・プロデュースという自信作だ。そして、既に今年の夏にはセカンド・アルバムのレコーディングが予定されており、ソロ・アーティストとしても今後大いに活躍が期待される。
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そんなチャドが6月、自身が率いるバンドとアダム・ラーソンとのクインテットでニューヨーク公演を行う。前者はオリジナルとカバーを交えたエレクトリック・バンド、後者はストレートアヘッドなジャズが堪能できる。この機会に、チャド・レフコヴィッツ-ブラウンというサックス奏者を通し、是非ゲーム感覚でジャズの醍醐味を楽しんでもらいたい。
(河野洋)
Chad Lefkowitz-Brown Electric Band
■6月6日(金) 25:00 ※7日(土)真夜中1時
■会場: Rockwood Music Hall, Stage 1
196 Allen St.
TEL: 212-477-4155
■カバー料金無し
■www.rockwoodmusichall.com
Lefkowitz-Brown and Larson Quintet
■6月10日(火)〜14日(土)11:30pm
■会場: Dizzy's Club Coca Cola
10 Columbus Circle
TEL: 212-258-9800
■カバー: $5 (10/11日)、$10 (12/13日)、$20 (14日)
ミニマムオーダー$10(1人)
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