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Vol.230:2014年5月16日号
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 よみタイムについて
河野洋: 名古屋市生まれ。12歳でロックに目覚め、ギター、バンド活動を始める。89年米国横断、欧州縦断のひとり旅の後、92年NYに移住。03年ソロアルバムのリリースと同時にレコード会社、Mar Creation, Inc.を設立。現在は会社では、アーティストマネジメント、PR、音楽、映像制作などエンターテイメントに関連するサービスを提供するかたわら、「NY Japan CineFest」「j-Summit New York」などのイベントをプロデュース。その他にも、エイズ、3.11震災後の日本復興に関わるチャリティイベントや、平和、社会、環境問題などをテーマにしたプロジェクトにも積極的に取組んでいる。
ウェブサイト : www.marcreation.com / メール: contact@marcreation.com
「オンガク喫茶」のこぼれ話はブログ「ゼロからのレコードレーベル」

よみタイムVol.230 2014年5月16日発行号

オルガンが生み出す
カラフルでパワフルな旋律
ゲイル・アーチャー


 時空を越えて伝わる音楽。バロック時代のモンテヴェルディ、ヴィヴァルディ、ヘンデルは現在も数多く演奏され、人々に愛されている。その代表格と言えるヨハン・セバスティアン・バッハが残したトッカータとフーガ、ニ短調。パイプオルガンの代名詞と言える曲だ。
 トッカータの力強い旋律が静寂の空間に木霊し、オルガン奏者の魂が、抑えた鍵盤、無数のパイプを通って、神聖な教会の空間に流れ出す。響き渡る神々しい音は優しくリスナーの体全体を包込む。
 オルガンを弾くことは、ゲイル・アーチャーにとって生きている証しだ。ニュージャージー州北部で育ったゲイルは、7歳でピアノを始め、8歳で聖歌を歌い始めた。ペダル鍵盤に足が届くようになると、ピアノからオルガンに転向した。

 彼女はグラミー賞ノミネート経験もある国際的なコンサート・オルガン奏者で、聖歌隊の指揮者でもある。2010年にはJSバッハの生誕325周年を記念してニューヨーク市内のセントラル・シナゴーグで6回に渡りコンサートに出演し、JSバッハの「フーガの技法」を演奏した。

 ゲイルはコンサート・オルガニストとして実積と実力があるにも関わらず、男性社会と言われるオルガン界で少しでも女性が活動しやすくなるよう、自分以外の女性の作曲家、オルガン奏者、指揮者を全面的にサポートしている。
 2年ほど前に彼女はオンライン・マガジン「ミューズ・フォーラム(MusForum)」をスタート。オルガン奏者、作曲家などが情報交換をする女性アーティストたちの為のコミュニティだ。「Mus」には、「Music(音楽)」と「Muse(芸術の女神)」の二つの意味が込められている。
 女性オルガン奏者たちが職を得るフィールドは3つある。現在、全米で約80名の女性が教壇に立つという大学。北米でオルガン学科を任される女性教授が一人もいないという音楽学校。そして教会だ。教会も小さな街や村では女性オルガニストが活発に活動しているが、大都市になると立場は逆転。男性オルガニストが主導権を取り、女性は一握り程度しかいないという。
 この状況を変え、女性オルガニストがもっと幅広く活躍できる社会を作ることがゲイルの何よりの願いであり、目標だ。
 「女性に対する正しい認識を得る為には、草の根的活動を辛抱強く継続すること、常にポジティブな姿勢が必要です。才能溢れる女性アーティストたちに、扉は大きく開かれていなければいけないと強く感じます」と語る。

 今年2月、女性作曲家の作品を集め自らが演奏したCD「The Muse's Voice: A Celebration of Women Composers」を発表した。これは自身の7枚目のソロ・アルバムになる。収録された作品は、米国人のジェニファー・ヒグドン、英国人のジュディス・ビンガム、フランス人の故ナディア・ブーランジェ、故ジャンヌ・ドゥメッシューと全て女性が書いたもので、ゲイルが選んだ崇高な14曲だ。
 そのゲイルが来る5月21日、マンハッタンのトリニティ教会で演奏会を行う。同教会が毎週水曜日の昼下がりにオルガン奏者を招き、開催しているコンサート「PIPES AT ONE」の一環だ。
 また今回は、ゲイルの演奏はもちろんのこと、壮大なパイプオルガンのサウンドをサンプリングし、最新テクノロジーを駆使して再現するデジタル・パイプオルガンを使った演奏とサウンドも見所、聞き所の一つと言える。
 「オルガン音楽はカラフル且つパワフルで、生き生きとしたものです。木と金属でできたパイプオルガンが作り出すサウンドは、会場の空間を埋め尽くし、音楽の美しさが即座に人々に感動をもたらし、素晴らしいインスピレーションを与えます。だからこそ、そんな素晴らしいオルガン音楽を私は愛し、人々に知ってもらう最大の努力を惜しまないのです」と力強く語るゲイル・アーチャー。
 現代においてパイプオルガンは、人と音楽を結び、心を豊かにしてくれる、大切な潤滑油なのかもしれない。
(河野洋)

Gail Archer
■5月21日(水)1:15pm
■会場: Trinity Church
 74 Trinity Pl.(Broadway @ Wall St.)
 TEL: 212-602-0800
■入場無料
www.trinitywallstreet.org/pipes