9 Volt |
EDOM |
ニューヨークには マーク・リボーやオズ・ノイと言った、独創性の高い革新的なギタリストが多い。イスラエル生まれのエヤル・マオーズも明らかにその一派を担う一人と言えるだろう。
元々は子供の頃、ピアノを習い始めたマオーズだったが、どうもしっくりと馴染まず1年程でやめてしまう。しかし、音楽への興味は続いた。高校生になったある日、彼は衝撃を受ける。それは、友達のロックバンドで見たギタリストだった。
「あれ(ギター)でソロを弾きたい!」
マオーズはボストンのバークリー音楽大学で音楽を学ぶが、卒業後は「(ミュージシャンとして活動していく)ガッツがなかった」と一旦は祖国へ戻ってしまう。
しかし、バンドメンバーでもあるシャニール・ブルーメンクランツ(ベース)の強い説得により1998年にニューヨークへ移住。同胞シャニール、そしてアヴィシャイ・コーエン(トランペット)と共に、ベラ・バルトークとエリック・サティの音楽に触発されたというレモン・ジュース・カルテット(1993年結成)をNYで再開させた。
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彼の音楽は、ロック、ジャズ、そして前衛音楽にユダヤ音楽や民族音楽が融合された非常にユニークなものだ。この奇妙とも言える組み合わせは、大学でも先生たちが理解に苦しんだほどだと言う。
マオーズが影響を受けたというフランク・ザッパ、オーネット・コールマン、ジョン・ゾーンと言ったアーティストの名前を聞けば、彼の奇抜な音楽性が少しは想像できるかもしれない。
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その彼が7月15日から20日まで、実験音楽と前衛音楽の専門音楽クラブ、ザ・ストーンで異なる10個の音楽プロジェクトで、合計12回のショーを行う。「1週間では足りない」と言うくらい、止めどなく溢れ出る彼のアイディアは、表現豊かな演奏とカラフルなギターサウンドで具現化される。
18日(金)は、ロックやポップスなど比較的判りやすいサウンドフォーマットに、はち切れんばかりの感情的でエネルギッシュなマオーズのギターが、アヴァンギャルドなアプローチで聞ける。本人もお薦めのメイン・バンド、「エドム」。
室内楽が好きな人には、日本人パーカショニスト武石聡が参加する16日(水)のユダヤ音楽プロジェクト、「ディミョン」が見逃せない。ユダヤから中近東音楽をベースに、弦楽器のヴィオラがクラシック的で洗練されたサウンドの厚みを加え、2人のパーカショニストが織りなすエスニックなリズムセクションが心地良く絡む。マオーズの原石に近いソウルフルな演奏が楽しめる。
さらに刺激的なアヴァンギャルドさを求めるなら、ロック的なプログレッシブ・ジャズが楽しめる、17日(木)午後10時の「9ボルト」、20日(日)午後10時の「ハイパーカラー」をチェックしてみるといいだろう。鍵盤の才女、永井晶子が参加する20日(日)午後8時の「LMNトリオ」も必見。
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「僕にとってギターは伝達道具。誰もが理解できる音楽という言語を通して、僕のエネルギーを世界の人に伝えたい」
エヤル・マオーズは、ギターでストレートにリスナーの心に語りかけることができる、強烈な光を放つ、今一番ホットな個性派ギタリストだ。
(河野洋)
THE STONE RESIDENCIES
EYAL MAOZ
■7月15日(火)〜20日(日)
■会場:The Stone
Avenue C & 2nd St.
Tel: 212-473-0043
■一般$15、学生$10
■www.thestonenyc.com
●15日(火)
・8pm:THE X - MODERN CLASSICAL WORKS
・10pm:EYAL MAOZ'S CRAZY SLAVIC BAND
●16日(水)
・8pm/10pm:EYAL MAOZ DIMYON
●17日(木)
・8:00pm:THE COLLAPSE GUITAR QUARTET
・10:00pm:9 VOLT WITH TIM BERNE
●18日(金)
・8:00pm/10:00pm:EYAL MAOZ'S EDOM
●19日(土)
・8:00pm:1895
・10:00pm:JOHN ZORN ABRAXAS
●20日(日)
・8:00pm:LMN TRIO
・10:00pm:HYPERCOLOR |