白黒映画の中で音楽を「見せる」クールな音楽革命デュオ、トゥイン・デンジャー。イギリスとアメリカ、男と女、声と楽器、二つの曲線を華麗に交差させる危ない二人の音楽が、今、実に瑞々しい。
トゥイン・デンジャーは、1980年代に一世風靡した英国グループ、「シャーデー」の主要メンバーであるスチュアート・マシューマン(サックス、ギター)と、サイケデリック・インディー・バンド、「ビースト・パトロール」のヴァネッサ・ブレイ(ボーカル)が結成したデュオだ。2015年1月にはデッカ/ユニヴァーサル・クラシックスからデビューすることが決定している。
しかし、そんな肩書きも、将来の約束などなくても、彼らの音楽とヴィジュアルは、オーディエンスを性急に魅了する。過去のキャリアを否定するかの様に、自分たちを開放し、壊していくことで、新しい自分たちを生み出して行くのだ。マシューマンは言う。
「このデュオでは、他人がどう思うかなんて気にせずに、ひたすら自分たちを失わせてきた。つまり、過去や未来からの影響を、直接ではなく、ぼんやりと受けていくのさ」
彼の言わんとしていることは、これまでの常識化してしまった音楽観や、意識的に創作する思考を捨てて、感じるままに音を紡いで行く、と考えられる。そして、ブレイは「狂った世界の中での、許しや安堵」そういう感覚を歌詞にしていると言う。
生まれた国も文化も時代も異なる二人だが、トゥイン・デンジャーでは絵的にも音的にも絶妙のバランスとコンビネーションを醸し出している。
「僕たちは、音楽、ファッション、芸術において両極性の嗜好を持っているんだ。音楽で言えば、ブラック・サバス、チェット・ベイカー、アルヴォ・ペルト、そして、アル・グリーン。もう一つの共通性は、街か森に居心地の良さを求めるところだね」と、マシューマン。
「マーヴィン・ゲイからザ・クラッシュまで、音楽の趣味は、とても幅広く似ているの。知り合った頃は、ディーバ、ブレード・ランナー、チャイナタウンなどの映画音楽でも話が盛り上がったわ」と、ブレイが付け足す。
そして、来年発売予定の新作について、マシューマンは語る。
「計画性もなく、どこからともなく、じわじわと姿を現してきている感じさ。羅針盤やGPSなしの旅を楽しんでいる」
彼の言葉から、自然発生のピュアな音楽が大いに期待できそうだ。
実は昨年、彼らのニューヨークでの小さなギグが発端で、日本のビルボード東京でもライブ公演が実現したと言うマシューマン。
「僕たちのことを全く知らない人たちの前で演奏したけど、トゥイン・デンジャーの音楽をとても好意的に受け入れてくれて、近い将来、再び日本公演を実現させたいよ」
そのトゥイン・デンジャーが、今度はニューヨーカーたちの前に姿を現す。
「今回はロックンロール・クラブが会場で、きっと私たちを身近に感じてもらえると思う。解放的で、楽しい、セクシーなショーになるわよ。ドレスアップして、シャンパンを飲みましょう。携帯やスマホじゃなくて、今、この瞬間に自分を失わせるのよ!」と刺激的なメッセージをくれたブレイ。
半年後のメジャー・デビューを控えたトゥイン・デンジャー。ニューヨークの新しい音楽が、正にここから生まれようとしている。
(河野洋)
Twin Danger
■8月1日(金) 開場7:30pm/開演8pm
■会場:The Bowery Electric
327 Bowery (bet. 2nd & 3rd Sts.)
Tel: 212-228-0228
■前売$10、当日$12 *入場21歳以上
■www.theboweryelectric.com |