Copyright (C)2013 YOMITIME, A Division of Yomitime, Inc. All rights reserved
Vol.236:2014年8月15日号
イベント情報






 連載コラム
 [医療]
 先生おしえて!

 [スポーツ]
 ゴルフ・レッスン

 NY近郊ゴルフ場ガイド


 [インタビュー]
 人・出会い
 WHO
 ジャポニズム
 有名人@NY

 [エッセイ]
 NY人間模様
 世界の目、日本の目

 [イベント]
 1押しオペラ

 [街ネタ]
 おでかけナビ

 [特集バックナンバー]

 よみタイムについて
河野洋: 名古屋市生まれ。12歳でロックに目覚め、ギター、バンド活動を始める。89年米国横断、欧州縦断のひとり旅の後、92年NYに移住。03年ソロアルバムのリリースと同時にレコード会社、Mar Creation, Inc.を設立。現在は会社では、アーティストマネジメント、PR、音楽、映像制作などエンターテイメントに関連するサービスを提供するかたわら、「NY Japan CineFest」「j-Summit New York」などのイベントをプロデュース。その他にも、エイズ、3.11震災後の日本復興に関わるチャリティイベントや、平和、社会、環境問題などをテーマにしたプロジェクトにも積極的に取組んでいる。
ウェブサイト : www.marcreation.com / メール: contact@marcreation.com
「オンガク喫茶」のこぼれ話はブログ「ゼロからのレコードレーベル」

よみタイムVol.236 2014年8月15日発行号

「和」を「洋」に織り込む
新ジャンル、次世代の音楽
箏・三味線:金子 純恵



日本に生まれ、幼少の頃に箏と言う古典楽器に魅せられた金子純恵。ニューヨークを拠点に移した現在も、着物を身に纏い、三味線を奏でながら長唄も唄う。
 大和撫子として伝統を重んじ、日本の音楽文化を伝承することが、彼女の海外在住の目的なのだろうか。
 すると本人の口から、「現存するジャンルではカテゴライズできない音楽をやりたいのです」と言う意外な言葉が飛び出してきた。
 「古典楽器を使って、ジャズっぽい即興演奏、どっちともつかないオリジナルな音楽、つまり、西洋と東洋が程よくブレンドされたものが、今一番興味がありますね」と目を輝かせる。

 洋楽と邦楽の決定的な違いは「間(ま)と序破急(じょはきゅう)」だと金子は言う。メトロノームでは測りきれない、楽譜でも記すことができない日本独特の空気のようなこの「間」は、西洋音楽のコンセプトには見られないものだ。「侘び寂び」、「阿吽の呼吸」、「禅の世界」にも通ずるものだろう。

 子供の頃から多種多様な音楽コンサートに連れて行ってくれたという母のおかげか、金子純恵には音楽に関する境界線が存在しない。アイドル音楽に夢中になったり、ブリティッシュ・ロックに嵌ったり、バークリー音楽大学に入学するきっかけとなったジャズに没頭したり、良いと感じるものを次々と聞きまくった。
 今でこそ箏と三味線を職としているが、それ以外にもピアノを始めドラム、フルートなど、多くの楽器を子供の頃に学び演奏したと言う。きっと彼女の体の中には、ありとあらゆる音楽エッセンスが刻み込まれているに違いない。和洋折衷の精神は、こうしたことの積み重ねの結果だったのだろう。
 ただ、日本の伝統文化の下地が全くないアメリカで、和楽器奏者として活動することは決して楽ではないはずだ。しかし、ポジティブ思考の金子にとって、これも日本人であることを最大限に活かすための選択であり、箏も三味線も貴重な飛び道具らしい。苦境を最高の環境と捉えることが、競争の激しい異国の地、ニューヨークでサバイバルできる金子純恵の強みなのだろう。
 古典楽器と聞くと、保守的で形式的なイメージを思い浮かべるかもしれないが、箏や三味線は、その構造においては伝統を守り、大きく変貌することはないものの、演奏においては、伝統音楽、現代音楽、クラシック、ロック、ジャズと演奏されるジャンルは想像以上に多様だ。その柔軟な性質は他に類を見ない。
 そして、金子純恵は2012年に発表したデビュー・アルバム「J-Trad & More」で、ジャズ・スタンダード「マイ・フェイバリット・シングス」を取り上げ、三味線を使ったリード演奏、百人一首の世界を歌詞や長唄で鍛えた歌唱法など、「和」の要素をどっぷりと「洋」に織り込む絶妙なアレンジで、斬新な独自の世界を作り上げた。

 その金子純恵が今月、2つの異なるデュオでニューヨーク公演を行う。
 8月20日(水)は、フルート、篠笛の宮崎信子との女性和楽器デュオ「月舞」として登場。ルービン美術館で、1970年代以降の日本国内外で作曲された名曲を中心に演奏する。
 8月23日(土)は、笛、太鼓の渡辺薫とタッグを組み、古典から2人のオリジナルまでフリースタイルでダイナミック感溢れる和楽器の即興演奏を聞かせてくれる。
 「新しい音楽ジャンル『カネコ(金子)』を確立する」と冗談っぽくも真面目に話す金子純恵。次世代のジャパニーズ音楽を先導する一人になる。
(河野洋)

Spiral Music - 月舞
金子純恵&宮崎信子
■8月20日(水)開演:6:00PM
■会場:Rubin Museum of Art
 150 W. 17th St.(bet. 6th & 7th Aves.)
 Tel: 212-620-5000
■無料
www.rubinmuseum.org

金子純恵&渡辺薫(笛、太鼓)
■8月23日(土)開演7:30pm
■会場:Tenri Cultural Institute of New York
 43A W. 13th St.(bet. 5th & 6th Aves.)
 Tel: 212-645-2800
■$15(任意寄付)
www.tenri.org