パコ・ロドリゲス |
フレンチホルン。ギネス世界記録には「世界で一番難しい金管楽器」と掲載され、ジャズのブラスバンドに置いては、ベルが後ろを向いているが故か編成に組み込まれない。元来、目立たない地味な存在なのだ。
そんな楽器をこよなく愛し、スポットライトを浴びさせようとする日本人女性フレンチホルン奏者がいる。近年、数々の著名コンペティションで作曲賞も受賞している山村優子だ。
「この温かく味わい深い音色でしょうか。私は25年近くフレンチホルンを吹いていますが、今でも心を打たれます。滑らかな曲線を描くかのような、そっと柔らかく心に触れるホルンの音は、他の楽器には無いものだと思っています」
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ホルンは獣の角「Horn」が語源で、元は動物の角を信号用の楽器として使われ発達した。狩猟時の乗馬中にも邪魔にならないよう管は長く丸く肩に掛けられる形状となり、ベルも後ろ向きになった。
フレンチホルンという名前から、フランスで生まれた楽器と思われやすいが、実はフランス宮廷文化の一部としてイギリスに入って来た為にフレンチホルンと名前が付けられたという。
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世界一難しい楽器を始めた頃、山村は当然苦労した。
「中高の時、吹奏楽部で演奏していましたが、とにかく下手で、演奏の基礎を作る事にとても苦労しました。先輩たちですら、どうしたらいいか分からない事が多く、プロ講師を呼ぶ予算もなかった為、ひたすら試行錯誤しました」
今ではニューヨークでもヴィクター・ジョーンズやジェイ・ロドリゲスといった一流ジャズ・ミュージシャンたちにも認められる存在となったが、山村の才能はホルン奏者としてだけではなく、作曲者としても非常に評価が高く、アメリカン・ソングライティング・アワード(2014年)、ジョンレノン・ソングライティング・コンテスト(2012年)で最優秀賞を受賞した。
「私が作曲を始めた理由の一つは、現在、一般出版されているジャズの曲にフレンチホルンの音が十分活かされるものが少ないと強く感じたからです。これまでの受賞曲は全てホルンで演奏する事を前提に書きました。私が作曲を始めた理由の一つは、現在、一般出版されているジャズの曲にフレンチホルンの音が十分活かされるものが少なかったからです。実際、作曲の作業の多くの部分を、ホルンで確認しながら行います」
また、作曲の依頼を受ける際も、最終的な音楽の流れを確認する作業では自らホルンを吹き、確認する事も多いと言うことで、ホルンと作曲は山村にとって切っても切り離せない関係のようだ。
そんな彼女が、最近演奏する時に特に気をつけているのが「姿勢」。
「身体を機能的に、美しい姿勢で保つ事が、潜在的に持っている身体能力を最大限に引き出してくれると思います。私は更に技術を磨きたいので、こういった積み重ねはとても大切です」
クラシックの作曲家の作品にとても学ぶ事が多いと言う山村は、クラシック界で活躍するパコ・ロドリゲスと共演することが決まった。
パコ・ロドリゲスは、リセウ大劇場交響楽団やマドリード室内管弦楽団のソリストとして、またスペイン・カタルーニャ・ホルン協会の会長として世界中で活躍する国際ハンスホイヤー・アーティストだ。
「色彩豊かで情熱に満ちた彼の演奏は、現代を生きるホルン奏者として確実に私達の心に新しいクラシック音楽の発見と感動を与えてくれる事でしょう」と山村優子も絶賛する。
「今、出している音が自分」と良い意味で力が抜け、自然に音楽を携える事が出来るようになってきたという山村優子。11月13日(木)、パコ・ロドリゲスと共演するマンハッタンのコンサートで、スペインと日本、男性と女性、クラシックとジャズと様々な角度からフレンチホルンの魅力を楽しんでみてはどうだろう。
(河野洋)
国境を越えて〜2本のフレンチホルンによる音楽対話
Crossing Borders:Music Dialog of Two French Horns
■11月13日(木)7:00pm
■会場:Opera America
330 Seventh Ave., 7F Tel: 212-796-8620
■前売$20、当日$25
■www.operaamerica.org
■オンラインチケット bpt.me/908552 |