Copyright (C)2013 YOMITIME, A Division of Yomitime, Inc. All rights reserved
Vol.243:2014年11月29日号
イベント情報






 連載コラム
 [医療]
 先生おしえて!

 [スポーツ]
 ゴルフ・レッスン

 NY近郊ゴルフ場ガイド


 [インタビュー]
 人・出会い
 WHO
 ジャポニズム
 有名人@NY

 [エッセイ]
 NY人間模様
 世界の目、日本の目

 [イベント]
 1押しオペラ

 [街ネタ]
 おでかけナビ

 [特集バックナンバー]

 よみタイムについて
河野洋: 名古屋市生まれ。12歳でロックに目覚め、ギター、バンド活動を始める。89年米国横断、欧州縦断のひとり旅の後、92年NYに移住。03年ソロアルバムのリリースと同時にレコード会社、Mar Creation, Inc.を設立。現在は会社では、アーティストマネジメント、PR、音楽、映像制作などエンターテイメントに関連するサービスを提供するかたわら、「NY Japan CineFest」「j-Summit New York」などのイベントをプロデュース。その他にも、エイズ、3.11震災後の日本復興に関わるチャリティイベントや、平和、社会、環境問題などをテーマにしたプロジェクトにも積極的に取組んでいる。
ウェブサイト : www.marcreation.com / メール: contact@marcreation.com
「オンガク喫茶」のこぼれ話はブログ「ゼロからのレコードレーベル」

よみタイムVol.243 2014年11月29日発行号

旅する音楽、国を持たない世界人
リチャード・ボナ


 「食と音楽。この二つがその土地やルーツを探る鍵だよ」
 アフリカのカメルーン共和国に生まれたジャズベーシスト/シンガーのリチャード・ボナは言う。
 「カリビアンで食事をすると、子供の頃を思い出す。また、アフリカからブラジルのバイアに連れてこられた奴隷たちは、慣れ親しんだ食事や歌だけは異国でも忘れずに楽しんだ。そうしたものは時代に流されず、継承される。日本に行くとモンゴルの影響が見えるし、モザンビークやケニアでは、インドを始めとするアジアが感じられる」
 音楽も旅をするのだ。アフリカ音楽は現在のミュージック・シーンで、その影響を及ぼしている。レゲエ、サルサ、カリプソなど。
 旅するリチャードは音楽そのものかもしれない。1989年にパリ、1995年にはニューヨークに拠点を移し、常にツアーやレコーディングで世界中をまわっている。
 ジョー・ザヴィヌル、パット・メセニー、クインシー・ジョーンズ、ボビー・マクファーリン、渡辺貞夫、チャカ・カーン。過去に共演したアーティストの名前を見れば、「ジャコ・パストリアスの再来」などという肩書きがなくても、彼の実力が充分に計り知れるというものだ。アルバムも既に7枚リリースした。
 「カメルーンに生まれて良かったなんて思ったことはないよ。そもそも俺には国というコンセプトがないから。愛国心などという言葉も似合わない。俺が住んでいるのはこの地球で、俺は世界人だと思っている。世の中には学ぶべきことが山ほどあるから、鳥のように自由に思うがまま旅をするのさ」
 彼のテンポの良い口調を聞いていると、発する言葉たちが音楽的な響きすら帯びてくる。しかし、最近では旅行をしなくてもインターネットで何でも手に入るご時世になった。
 「昔はアメリカから聞きたいレコードが届くまでに半年や一年かかることもあった。それが今では世界のどこへでも瞬時に送ることができる。テクノロジーのお陰で音楽(ソフト)は手軽にコピーされ、ミュージシャンの代用すらするようになった」
 再生、停止、早送り、巻き戻し、音量調整も簡単で無料でも楽しめるデジタル音楽に慣れてしまうと、外出して、お金もかかる不便なコンサートでライブ音楽の素晴らしさを体験することすらなく日々を過ごしてしまうようになる。
 便利の代償に大事なものを失いつつあるとリチャードは指摘する。
 「最近ではスーパースターたちが録音されたものを使って『ライブ』をやるのが当たり前になった。口パクとかカラオケ使用、なんて掲げてやるならいいが、全てライブイベントとして紹介される。そして観客は目の前の派手なアーティストたちや裸同然のダンサーに気を取られて、誰が音楽を演奏しているかなんておかまい無しなのさ」と苦笑する。
 「生演奏か再生されたものかは音を聞けば直ぐにわかる。だが、質の違いが判らない人間が増えているんだ。これはメディアや音楽業界の問題でもある。ライブ音楽は適切な音響機器やシステム、そしてエンジニアやミュージシャンたちが必要になるからお金がかかる。しかしビジネスは質ではなく量産を求めるようになった。コストがかかるミュージシャンなど雇わず、着飾ったシンガーだけにパフォーマンスさせ、伴奏はカラオケで済ませるのさ」
 音楽とは一生をかける仕事だ。モーツァルト、ベートーヴェン、マイルス・デイビス、ジョン・コルトレーン…偉大な音楽家に続くリチャードは、会場に足を運んで来てくれる人たちにフォーカスし、質の高い音楽のライブ演奏を続ける。

 そんなリチャード・ボナが自身のバンド、マンデカン・クバーノを率いてニューヨークへやって来る。今回は年末年始の1週間、ミッドタウンのジャズ・スタンダードで、ご機嫌なアフロ・キューバン音楽を聴かせてくれる。2014年を振り返り、フレッシュな気持ちで2015年を迎えるには最高のライブショー。
 本物のライブ音楽とは何か!? リチャード・ボナの演奏を聴けば、その答えは体で感じられる。
(河野洋)

Richard Bona: Mandekan Cubano
■12月30日(火)〜2015年1月4日(日)7:30pm / 10:00pm
■会場:JAZZ STANDARD
 116 E. 27th St. Tel: 212-576-2232
■予約:www.jazzstandard.com
■入場料:$35
※12月31日(水)7:30pmは$135、10:00pmは$195