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Vol.245:2015年1月16日号
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 よみタイムについて
河野洋: 名古屋市生まれ。12歳でロックに目覚め、ギター、バンド活動を始める。89年米国横断、欧州縦断のひとり旅の後、92年NYに移住。03年ソロアルバムのリリースと同時にレコード会社、Mar Creation, Inc.を設立。現在は会社では、アーティストマネジメント、PR、音楽、映像制作などエンターテイメントに関連するサービスを提供するかたわら、「NY Japan CineFest」「j-Summit New York」などのイベントをプロデュース。その他にも、エイズ、3.11震災後の日本復興に関わるチャリティイベントや、平和、社会、環境問題などをテーマにしたプロジェクトにも積極的に取組んでいる。
ウェブサイト : www.marcreation.com / メール: contact@marcreation.com
「オンガク喫茶」のこぼれ話はブログ「ゼロからのレコードレーベル」

よみタイムVol.245 2015年1月16日発行号

ポジティブでエネルギッシュ
NY最後の「Uzuhiスマイル」
UZUHI



 日は沈み、新しい朝がやってくる。「UZUHI(うずひ)」(太陽の意)は、そんな当たり前のような一日に「Smile(笑顔)」をもたらしてくれるエネルギッシュなジャパニーズ・パンクバンドだ。
 バンド・リーダーの剛者(ボーカル)は、子供の頃から人前で歌ったり踊ったりするのが大好きで、人を笑わすなどエンターテイメントに興味を持っていた。中学になると、X JAPANやLUNA SEAと言ったビジュアル系バンドからロックの洗礼を受け、高校ではパンクバンドでボーカリストとしての腕を磨く。
 将来がぼんやりしていた剛者だったが、「バンドやるなら世界を目指せ」という兄の一言に目覚め、大学進学を条件に両親の同意を得てアメリカ行きを決める。最初に来たロサンゼルスは、パンク精神で尖っていたせいか、のんびりした空気に馴染めず、3ヶ月もしないうちにニューヨークに拠点を移す。
 掲示板などでメンバーを集め、2004年秋にUZUHIを結成。4人編成でスタートするもののメンバーが定着せず、暫くは結成時のギタリストと二人で他のメンバーは流動的という形で活動を続けた。やがて、和太鼓とピアノを入れるという構想が浮かび、バンドの一つの特徴でもあるベーシスト不在のバンド形体が定着していく。そして、2007年に現在のバンドの要の一人となるクラシック・ピアニストの松田つばさが加わった。
 「ラブ・エトセトラという女性デュオで活動している時、私のライブを見た剛者さんが手伝ってほしいと『騙されて』UZUHIに入ったんです」と笑うつばさ。UZUHIの音楽スタイルは、自分がそれまでやってきたものとかけ離れており、「まさか一緒に演奏するとは、これっぽっちも思わなかった」バンドだったらしい。

 ジャンルは違えども、ベース奏者がいないバンドであるがゆえ、ピアノを弾きながらカッコいいベース・ラインを弾くと言う新しい試みに興味を抱いたつばさは、バンドに参加。騙され続けながらも既に8年目、今やバンドになくてはならない顔となった。しかし、彼女は元々パンクとは全く無縁のクラシック畑のピアニストだった。
 赤ん坊の頃から母の歌声や姉のピアノを聞いていたつばさは4歳でピアノを、5歳で作曲を始める。その後はクラシック一辺倒だったが、一浪し音楽大学への進学で悩んでいたある日、本屋で何気なく開いた音楽雑誌に「ジャズとは何か?」という記事を瞬間的に見つける。
 「ジャズ=即興演奏」。そんな方程式が幼少時に学んだ作曲と直結したつばさは、聞いたことすらなかったジャズが自分にもできるかもしれないという考えが頭をよぎる。しかし、当時の日本には大学にジャズ科が存在しなかった為、新聞奨学生として専門学校でジャズを学び始めた。
 そんなある日、思いも寄らない転換期が訪れる。先生が勝手に申し込んだバークリー音楽大学から在学当時では過去最高の奨学金が下りたのだ。英語が大嫌いで、アメリカにも全く興味がなかったが、まわりの人たちに背中を押され、意に反してボストンに来てしまう。
 学校は素晴らしく楽しかったが、卒業後は日本に帰るつもりだった。しかし、3年もバークリーで勉強したのにライブ経験がなく、日本に帰っても音楽家としての土産話もない。彼女はせめてミュージシャンとして箔を付けようとニューヨークに1年だけ住むことを決意し、その滞在が延長され現在に至る。

 UZUHIは結成以来、ハードコア・パンク、アコースティック・パンクとスタイルを変えながらも、常にポジティブでエネルギッシュなステージを武器に、10年の歴史を築いて来た。日本のザ・ブルーハーツ、ニューヨークのPeelander-Zという先輩バンドのパンク・スピリットを継承し、西はテキサスまで及ぶ東海岸ツアーを何度も敢行、ニューヨークの日本人パンクバンドとして名を轟かせる。
 また、UZUHIが他のバンドと違うところは、バンド活動のみならずコミュニティ作りにも努めている点だ。
 ツアーとライブでアメリカ人との交流を深め、同胞アーティストに活動の場を与える「Stairways to the Dreams」というショーケース・イベントを継続的に開催。3・11をきっかけにスタートした震災イベント「サンライズ・フェスト」では、大人のみならず子ども向けのイベントも盛り込み、日本人同士との結束を固める貢献をしている。
 こうして米国での土台がしっかりしてきたUZUHIだが、バンドの柱となる剛者とつばさが、結婚、そして息子の誕生をきっかけに、現在「UNITED WE SMILE」と題する米国ツアーを最後に永久帰国することが決まった。そして、そんな彼らの勇姿が見られるニューヨーク最後のコンサートが2月8日に行われる。
 今回は東日本大震災四周年を機に、自らが主催する「サンライズ・フェスト」と題するファンドレイジング・イベントの一環としての出演となり、他にもニューヨークを拠点に活動するTHE RiCECOOKERS、BROWN RICE FAMILY、ROBIN'S EGG BLUEなど全部で8バンドが集結する。
 ライブが終わるとファンと一緒に記念撮影をするのが恒例となっているUZUHIだが、今回は、きっと飛び切りの笑顔がたくさん写真に収まることだろう。そして拠点が日本になっても、UZUHIスマイルは蔓延していく。
(河野洋)

SUNRISE FEST〜A DAY FOR YOU & JAPAN〜
■2月8日(日)5:00pm
■会場:The Bowery Electric
 327 Bowery ■Tel: 212-576-2232
■$10(年齢制限:21+)
www.theboweryelectric.com