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Vol.247:2015年2月13日号
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河野洋: 名古屋市生まれ。12歳でロックに目覚め、ギター、バンド活動を始める。89年米国横断、欧州縦断のひとり旅の後、92年NYに移住。03年ソロアルバムのリリースと同時にレコード会社、Mar Creation, Inc.を設立。現在は会社では、アーティストマネジメント、PR、音楽、映像制作などエンターテイメントに関連するサービスを提供するかたわら、「NY Japan CineFest」「j-Summit New York」などのイベントをプロデュース。その他にも、エイズ、3.11震災後の日本復興に関わるチャリティイベントや、平和、社会、環境問題などをテーマにしたプロジェクトにも積極的に取組んでいる。
ウェブサイト : www.marcreation.com / メール: contact@marcreation.com
「オンガク喫茶」のこぼれ話はブログ「ゼロからのレコードレーベル」

よみタイムVol.247 2015年2月13日発行号

時代超えた音の美・調和
物語を想起させる魅力
箏/三味線 木村 伶香能



木村伶香能(左)と玉木光による「デュオ夢乃」


櫻井亜木子
阿吽の呼吸、侘び寂び。世界に誇りうる日本人の心とは、「調和」かもしれない。和と洋、箏と三味線、こうした異なる世界の間で、絶妙なバランスで存在感を誇示できるシルクの舞、それが木村伶香能(きむら・れいかの)の音楽観だ。
「箏にも三味線にも代えられない魅力があるのです」と語る木村は自らを「欲張り」と笑う。江戸文化が熟していくのと並行して歴史を重ねた二つの古典楽器が、21世紀においても木村の心をつかんで離さないのは、その音色の美しさだ。
「箏や三味線の素晴らしいところは、一音が放たれた時の衝撃です。それは何ものにも代え難い、背筋が伸びる瞬間。そして、音が紡がれていくことで作り出される独特の空間。日本の音楽は古典作品と密接な関係にあって、それを聴くことで物語を想起させる性質があると思います」と古典楽器の魅力を語る。
三味線を始めたのは箏の後だが、日本を代表する現代邦楽の三味線奏者、西潟昭子、そして人間国宝であり、浄瑠璃音楽の1つ河東節三味線の師匠、山彦千子との師弟関係がその奥義を知るきっかけだった。
「三味線は、お座敷音楽からロックまで本当に色々ありますが、古典と現代という180度違う世界を極めている先生がたと出逢うことができ、本当にラッキーでした」と木村は二刀流の道を歩み始めた理由を話す。
もちろん二つの道を極めて行くのは安易なことではないが、「箏と三味線の神様」と呼ばれる中能島欣一など、二つの楽器を同等のハイレベルで演奏したという先輩たちが実在した事実もあり、木村は決して不可能なことではないと考えている。
そんな木村伶香能が、雪解けが待ち遠しい如月と弥生、ソロとデュオのリサイタルで、その実力を見せてくれる。

2月18日は、日本から文化交流大使として来米中の琵琶奏者、櫻井亜木子との共演。このコンサートの見所の一つは、琵琶と三味線が一度に体験できることだろう。これらの楽器の共通項の一つは、弦が振動する際に生まれる音「サワリ」だが、この二つの楽器の組み合わせは意外と珍しく日本でも中々見られない。今回は二人のソロとデュオ、古典と現代音楽を織り交ぜ「雪」をテーマにした曲を演奏する。

2月22日は、ユニット「デュオ夢乃」としてリサイタルを行う。木村の人生最大のパートナーであるチェロ奏者、玉木光と一対を成す。その絶妙のコンビネーションは、音楽家としてのみではなく、普段の生活の中で共有する莫大な時間と空間に大きく支えられる。二人の歴史が舞台を作っていると言っても過言ではないだろう。
彼らの地道な音楽活動と確固たる実力は音楽業界でも認められている。昨秋、全米室内楽協会から、全米選抜14組の1組として助成金を得た二人は、和洋デュオという希少な組み合わせだけではなく、演奏力の高さが評価された。
また、昨年の京都のリサイタルでは、現代邦楽の作曲家、マーティン・リーガンの「花鳥風月」組曲を委嘱初演。その成果が認められ、京都の青山財団からは2014年青山音楽賞バロックザール賞が贈られた。
今回は「Fire and Water(火と水)」と題され、マーティン・リーガンと双璧を成す佐藤容子が書き下ろした三味線とチェロのデュオ曲が一つの聞きどころとなる。
またデュオ夢乃は演奏指導にも力を注いでおり、箏、三味線、チェロを学ぶ生徒たちに発表の場を与えたいという思いから、2月28日に「Students Recital」を開催する。ここでもデュオの演奏を含め和洋折衷の幅広い音楽が楽しめる。

箏と三味線の二足のわらじを履く木村伶香能が、独奏者としての実力を思う存分発揮するのが3月15日のリサイタルだ。「平家物語」にちなんだ曲を、昔と今で聞き比べるのが今回の魅力の一つとなる。
数ある古典からは、山田流において最も重要とされる「奥の四つもの」のひとつ「熊野(ゆや)」を披露。30分にも及ぶ大作の為、アメリカでは演奏される機会が無いが、「今回は最初から最後まで全てを聞いてもらうことで新しい発見をしてもらいたい」と敢えて挑戦する名曲。桜満開の風情と遊女熊野の母を慕う心情が美しい旋律に乗って表現される。
そして、もう一つの主軸となるのが「平家物語」を根幹としたダロン・ハーゲンによる委嘱初演曲「Appassionato」。今回は古典から現代音楽がプログラムを彩る。

バランス。それは両極端の限界を押し広げることで安定感が増す。木村伶香能は、現在、二面性を追求できる数少ない注目すべき演奏家の一人だ。
(河野洋)

琵琶と三味線コンサート 
■2月18日(水)7:00pm
■会場:Fort Lee Public Library
 320 Main St. Fort Lee, NJ
■料金:無料

デュオ夢乃リサイタル
■2月22日(日)2:00pm
■会場:NY Buddhist Church
 331 Riverside Dr.
■料金:推奨寄付
 一般$20、シニ/学生/$10

デュオ夢乃 Students Recital
■2月28日(土)2:00pm
■会場:Still Mind Zendo
 37 W. 17th St., 6th fl.
■料金:無料

木村伶香能コンサート
■3月15日(日)4:00pm
■会場:Tenri Cultural Institute
 43 W. 13th St.
■料金:$25、シニア/学生$15