2015年3月27日号 Vol.250


深みがありソウルフル
ブラジル音楽は「人生」そのもの
ヴァネッサ・ファラベラ&カルロス・ディアス


Photos by Fernando Natalici


 アマゾンの緑、ゴールドの黄、空の青。ブラジルは国旗が示すように自然と資源に恵まれた国だ。リオデジャネイロを象徴するコルコバードのキリスト像が、丘の上から手を広げ万人を受け入れているかのように、この国には様々な人種の人々がやってきた。
 アフリカ、ヨーロッパ、アジア、中近東から集まった移民の国。多様文化が融合し、人々が波打つブラジル。そんな国に生まれ育ったヴァネッサ・ファラベラとカルロス・ディアスの二人のシンガーは、今、ここニューヨークに立つ。

 親が子供たちに経験を、教師が生徒たちに学識を伝えるように、二人の役割はブラジル音楽の素晴らしさを人々に伝えることである。
 グアルーリョス出身のカルロス・ディアスは豪州でカポエイラを教え、モデルとしても活動した、ブロードウェーやシアター系を得意とする役者兼シンガー。
 「世界中どこでも同じ傾向にあるけど、ニューヨークでもブラジル音楽と言うと、ボサノヴァ、サンバ、フォホー(Forró)がもてはやされていて、本当に素晴らしいマラカトゥ(Maracatu)と言ったノルデスチ(北東部)の音楽が余り知られていないんだ」と語るカルロス。
 ベロオリゾンテ出身のヴァネッサ・ファラベラは、ジュリアード音楽院のサマープログラムを受講したのがきっかけで、ニューヨークを拠点に、渡辺貞夫やガトー・バルビエリなどの著名アーティストたちとも共演。長年、ニューヨークでキャリアを積み、日本でもトゥピ・レコーズからアルバムを発表している女性シンガー。
 「ボサノヴァは国外の方が人気あるのよ。ブラジルで若い人はあまり熱心に聞かないわ。だから私たちは海外で知られていないブラジル音楽を一緒に紹介していきましょうと、このブラジリアン・ミュージック・ソウルを始めたのよ」とカルロスとのプロジェクトの発端を説明する。

 ノルデスチの音楽は深みがあってソウルフルだ。シコ・セーザ、ゼ・ハマーリョ、レニーニ、エルバ・ハマーリョ、アルセウ・ヴァレンサ…にも関わらず、海外での知名は、サンバ、ボサノヴァ、MPBに比べると低い。ブラジル音楽はブラジルの人口分布図の様に幅広く奥が深い。
 だからこそ、いつまでも学ぶことにどん欲で、楽しくして仕方がないというヴァネッサ。昨年の夏、2ヵ月以上、毎日ボーカルレッスンを受けたという。
 「常に学び、教え、表現し、分かち合う。ニューヨークには溢れるくらいのチャンスがあるわ。自分がすべきことに集中して、ベストなものを吸収し、責任を持って自分の人生を人々に伝えて行く」
 二人は口を揃えて言う。ブラジル音楽を語る上で一番大切なものは一言で言えば「人生」だと。リズムは脈打つ生命力、旋律は波打つ感情。そして、詩は彫刻された知識。
 ヴァネッサとカルロスの歌声が、ブラジルのソウルを聞かせる。
(河野洋)

Brazilian Music Soul
■4月1日(水)10:30pm
■会場:THE IRIDIUM
 1650 Broadway (@ 51st St.)
■料金:$5
■予約:212-582-2121
theiridium.com


河野洋: 名古屋市生まれ。12歳でロックに目覚め、ギター、バンド活動を始める。89年米国横断、欧州縦断のひとり旅の後、92年NYに移住。03年ソロアルバムのリリースと同時にレコード会社、Mar Creation, Inc.を設立。現在は会社では、アーティストマネジメント、PR、音楽、映像制作などエンターテイメントに関連するサービスを提供するかたわら、「NY Japan CineFest」「j-Summit New York」などのイベントをプロデュース。その他にも、エイズ、3.11震災後の日本復興に関わるチャリティイベントや、平和、社会、環境問題などをテーマにしたプロジェクトにも積極的に取組んでいる。 ウェブサイト : www.marcreation.com / メール: contact@marcreation.com
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