2019年10月18日号 Vol.360

文:佐々木香奈(猫グルーマー)
NCGIA (National Cat Groomers Institute of America) member

爪ケアの意外なグッド・オプション?

ペットグッズのカタログなどで、色付きの爪キャップを付けられた猫の写真を見たことがある人は多いと思う。反応はきっと「猫は飼い主のファッションアイテムじゃない。猫の身にもなってみろ」と反発するか、「猫に爪キャップなんてばかばかしい」とうすら笑うか、といったところだろう。私もグルーマーになる前は反発派だった。まあ正直、今でも「爪をちゃんと切っていれば、爪キャップは必要ない」とは思う。
でも、グルーマーの勉強と研修を通して、あれは決してファッションでも飼い主の遊びでもないことは分かった。というのも、猫の爪は切っていても、ひっかかれればそれなりに痛いし傷もつく。あの縫針の先のようにとんがった爪で引っ掻かれるよりは、被害は小さいってだけ。なので、小さい子供が引っ掻かれないよう万全を期したい家庭や、高価な家具をどうしても守りたいといった人には、あの爪キャップは悪いオプションではない。ほとんどの猫は気にもしないし、だめなら取ればいい。
ちなみに素材は柔らかいプラスチックで、どっかの獣医さんが開発した商品だ。動物に無害な瞬間接着剤を使っており、一度付けたらそう簡単には取れないし、仮に猫が飲み込んだとしても、小さくて角がないキャップはウンチに混じって排泄されるから安全。ただし、一度装着したら永久にってわけじゃない。これを付けていても爪は伸びるので、大体6〜8週間ほどで付け替えが必要になる。グルーマーに頼んでやってもらってもいいし、獣医さんのところでもやってくれる。猫の爪も大小いろいろなので、爪キャップも大中小とサイズがある。色もよりどりみどり。
そもそも、この夏からニューヨーク州では猫の「ディクロー(declawing)」が正式に違法になったので、爪ケアのオプションは多い方がいい。ちなみにディクローとは、英語で「onychectomy」という手術で、猫の指の第一関節ごと切断する。日本語で「抜爪(ばっそう)手術」というらしいが、「抜く」んじゃなくて「切断」。ニューヨーク州獣医師協会は、これを違法にすることに反対したらしい。「declawすることで、猫を捨てるという選択をしないで済むこともある」というのが理由だそうだが、こういう飼い主こそ我々猫グルーマーを呼んでくれたらいいのにと思う。
もう一つ、「tendonectomy」という手術があるが、これもチョーとんでもない。関節ごと切断しない代わりに、指の腱を切り、猫が爪をグワっと出すあの動きをできなくする。日本語で「深指屈筋腱切除術」というらしい。これ、やめていただきたい。
爪は猫にとって必要な生活のツール。それを奪われると、「ジャキーン・ガシュッ」ができない代わりに、かみ付くようになる猫も多い。愛猫の生活の質を考慮して、適切な爪ケアをしてあげてください。

最初に猫缶フードを商品化したのは、1876年イギリスのSpratt社で、1895年アメリカに輸入された。アメリカで猫缶作りが始まったのは1930年代。


グルーミングはまず爪切りから。ささっと迅速に。自分の身も守りつつ、お猫さまのご機嫌も取りつつ。


Kana S. Cat Grooming
kanacatgrooming@gmail.com
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