2021年9月17日号 Vol.406

文:佐々木香奈(猫グルーマー)
NCGIA (National Cat Groomers Institute of America) member

一にロー(生)、二にウェット、最後にドライ

インスタグラムのフィードに出てくる日本からの猫関連投稿に多いのが、「どうやったらうちの猫ちゃんに水を飲んでもらえるんだろう」というやつ。みんな猫に水を飲ませるのに四苦八苦している様子が窺える。正直、不思議で仕方がない。

そもそも健康な猫なら、ウェットフードを食べていれば水はほとんど飲まないし、飲まなくていいというのがアメリカでの常識(少なくとも筆者が知る獣医さんたちはみんなそう言う)。なぜなら、ウェットフードには猫に必要な水分が含まれているから。日本は猫ブームで、いろんな雑誌も発行され、情報も、秀逸な猫グッズも溢れているのに、どうやらフードの基本的な情報が行き届いておらず、多くの飼い主がドライフードを与えているようだ。



ドライフードが絶対ダメとは言わない。猫によって嗜好もあれば、飼い主のライフスタイル事情もあろう。ただ、猫に必要な「水分」という観点だけをとっても、ウェットフードの方が好ましいことは明白だ。
 
フードについて猫グルーマーの筆者があれこれ吹聴してもクレディビリティーに欠けるので、ここは一つアニマル・プラネットの猫ウィスパラー、ジャクソン・ギャラクシーと、ホリスティック獣医のマーティー・バーンスタイン先生の著書から、猫フードについての知識を抜粋してみた。

「水? いらニャい」とローフードを主食にする我が家のルフィー様

猫フードを、ロー(つまり生肉)、調理加工されたウェット(缶とかパウチとか)、そしてドライに大別し、水分含有率を比較すると、ローが75%、ウェットが60%、ドライは10%以下。要は、ドライフードを食べている猫がいくら水を飲んでも、ローとウェットの水分量には追いつかないのだ。これだけとっても、ギャラクシーは「ベストはローフード、次にウェット、ドライはトリートだけにしておこう」と著書に書いている。「ハイエンドのドライをやるくらいなら、ローエンドのウエットをやれ」とも。マーティー先生に至ってはすでにローフードの宣教師だ。

いずれにしても、ドライフードが究極の加工食品であることは議論の余地なし。人間も健康増進のためには「なるべくホールフーズを食べ、加工食品は避けよう」というが、猫も同じだ。ドライフードはあのカリカリ状態にするために、いろんな混ぜ物(いわゆるfiller)をした挙句に高熱処理される。いくら今流行りの「グルテンフリー」と謳われていても、グルテンじゃない何らかの粉類がまぜられており、消化も悪い。ドライフードの方が歯にいいというのも、ギャラクシー曰く「迷信だ」。

いやー、今回はドライフードの悪口だけ書いて終わってしまったが、次回はぜひうちの愛猫ルフィーの主食たるローフードについてお話しするので、乞うご期待。

アメリカで猫のドライフードが開発・発売されたのが1940年代。理由はズバリ肉不足。当時のドライフードは、人間の食肉に使えない部位(スクラップ)が使われていた。(ギャラクシーの著書「Total Cat Mojo」から)

Kana S. Cat Grooming
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