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よみタイムVol.148 2010年12月24日発行号

 [其の4]

チウタコの星研究で
次元の地球星からちょっと離れて

文・飯村昭子  イラスト・ウタコ

ハッピーになったK

 空を見上げると、無限の濃紺の中に、鋭く切り取られたような黄金色の三日月が浮かんでいた。生まれてから何千回も眺めたことのある空の風景なのに、Kの目にはどきっとするほど新鮮に、はじめて見るもののように映った。
  よく見ると、弓なりの形をした月が、さっきよりすこし左の方に移動している。今までなんとも思わなかったのに、それが急に神秘的に思えてくるのだった。この宇宙では、じっとしているものなんてないのだ。みんなそれぞれ回転して漂っている、この地球だって。そう思うと、地球の上に立っている自分がなんとも頼りなく、不思議な感じがしてくるのだった。
「人がこうして立ったり歩いたりできるのも、地球の引力のおかげなんだよね。引力がなけりゃ、宇宙飛行士みたいに空中を漂うしかない」
 Kは、なにか大発見をしたような気分で、ハッピーだった。
 Kは今夜、偶然に、占星術家のウタコに、自分の星占いをしてもらうという不思議な体験をした。 
  生年月日と生れた時間を知ると、ウタコは、びっしりと細かい数字が並んだ電話帳のようにぶ厚い本を出してきて、別の紙の上に、線状に星座を印した丸い図形を描き、数字を参照しながらその上に定規でさまざまな線をひき始めた。
 「さあ、これがあなたの生まれた時の星座のチャートよ。これには、あなたがどんな傾向を持っているかが現われているのよ。星座にはそれぞれ特徴があるからね」というと、ウタコは、今度はコンピューターに向かって操作を始めた。
  やがて、カタカタカタカタと、プリントされた紙がどんどん吐き出されてきた。多色の折れ線が重なってグラフになって印刷されている。
 「ワー、 すごい。何だ、これ」と、Kは興奮している。
 「あなたを司る星の時間ごとの運行グラフなのよ」と、ウタコはグラフに見入っている。地下鉄の路線案内みたいなさまざまに色分けされた線は、それぞれビジネス、積極性、幸運、思考、ロマンス、事故注意などを表わしている。それを見ながら、数字と見比べていたウタコが、突然、叫んだ。
 「あ、 すごい! K、冥王星があなたの真上に来ている! この星はね、エネルギーや創造力をもたらすすごい力のある星なの。これが あなたの上に来ている。真上に来るのはいつだろう。あ、今日じゃない。すごい、今、あなたの真上に来ているのよ、冥王星が。この星は軌道 を一周するのに248年もかかるので、寿命が100年に満たないほとんどの人間は、この星と無縁なのよ。それがあなたの上に来るなんて! しかも、今よ!今日よ、このことを知るために、今日あなたは、わたしの所に来ることになっていたのよ!」
  偶然ということはないのだと、ウタコは言った。「こればすべて過去何十万年もかけて占星術の学者たちが残した、天体をめぐる膨大な数の星 の運行のデータが示す結果なのだから。わたしの直感とか、そんなものじゃないのよ」
 Kは言葉も出ないほど驚いて数字を読むウタコの手元をみつめ、顔を真っ赤にして息をつめている。
  果てしない砂漠の地平線の上に並んで建つギザのピラミッドが思いだされた。
 古 代エジプトの王の墓とされているが、実は、この三角錐の巨大建造物は、オリオン星座を信仰し、高度な文明を持っていた古代エジプト人たち が、地上に再現した星座だといわれている。3つのピラミッドはオリオン座の3つの星、ナイル川は銀河。マヤ文明でも天体と人間の営みは密接だ。天を運行している星は古代から、人間たちに未来を予見する知恵を与えてきたのではないだろうか。
  実は、Kには、今着手しかかっている計画があった。彼にとっては大きな仕事で、じつは不安でもあった。
 「ぼ くの仕事はうまくいくかもしれないな」と、Kは思った。「冥王星がついているから」
 急に鼻歌でも出てきそうな楽しい気分になっていた。
 「占星術は、暗闇で光を与えるようなものね。同じ決められた道を歩くのでも、真っ暗闇の中を手探りで行くより行き先が見えるほうがいいで しょう。それだけのことよ。すべて数字だから、主観は一切入らないし。それで人が幸福になれればいい。占星術というのはそういうものなのよ」と、Kの様子を見てウタコは言う。
  地球星の引力に引っ張られて立ちつつも、あちこちの星にも影響されて生きている人間たち。肝心なことは、星に逆らわないこと。星に身を任せて生きて行く。できますか?

ウタコの
スピリチュアリティ

  地球はすごくレベルの低い星だと、ウタコは言う。
 「だっ て三次元の世界で、物質ばかりじゃないの。おそろしく高次元になっている他の星とは、地球のレベルでは、自由にコミュニケーションもできないじゃない。地球も変わってきてはいるけれどね」
  「たとえば、コミュニケーションにしても、理屈っぽい言葉に頼るでしょう。たとえばバイブレーションとかインスピレーションとか、あまり理屈っぽくないコミュニケーションの方法を追求しているのよ、もう何十年も」
  もともと作曲家で、いまでも子供にピアノを教えている。まだ一人で弾けない幼い子供たちの身体が、演奏するウタコのバイブレーションに同調してはじける。あるときは、山のような神秘的な装丁の本に埋もれて、時間や空間を超越した場所とのコミュニケーションの仕方を勉強し ている。
  今、ウタコの家は、マイケル・ジャクソンのディスプレイで埋まっている。マイケルに夢中で、マイケルの虜になっている。マイケルの歌声にあるバイブレーションとウタコの波長が同調しているのにちがいない。
 「今、 地球は太陽エネルギーの影響を受けたフォトンベルトに入っているから、さまざまなことが変わっているのよ。これからいろんなことが起こるわよ」と、彼女が言ったのは、何十年も前のことだった。
 「ま ず、次元が変わる。今は三次元だけど、四次元、五次元、六次元、いくらでも次元が増えるわよ」
 「じゃ、 時間に関しては、いつでも過去や未来に出入りできるの?」
 「も ちろん。そればかりではなく、いろんなことが変わると思う。まず、エネルギーが変わるでしょう。それから気候も変化するかもしれない。いろんなことも起きるでしょう」
 「エ ネルギーが変わるって、どう変わるの?」
 「分 からないわよ。でも、2012年までには変わるでしょう。マヤのカレンダーも、2012年で終わっているのよ」と、ウタコは言った。「紀元前からずっと続いていたのに」
  あのころ、2012年ははるかに遠い未来だった。石炭と石油に代るエネルギー源など想像もできなかった。でも、エコロジー、インターネット、宇宙開発、などなどが急に出てきて次元も複雑に増えたことは、ウタコの予言のとおりに思える。しかし、地球はやはり超三次元のままでいるではないか。もの(カネ)にしがみつく人間の意識をレベルアップしないかぎりは。
  もっとスピリチュアルな人間が増えないかぎりは。
 ウタコの言うことはほんとに興味深い。紀元前何万年以来続く超自然学の分野での研究者として、いつかノーベル賞を受けるかもしれないと思うくらいだ。
  古代エジプトやマヤ文明の高度な天文学の知識、スピリチュアルなものに対する情熱的な敬虔さ、神話を作る豊かな創造力の末裔を、ウタコの生き方に強く感じる。そして今、彼女を惹きつけてやまない現代の神話のヒーロー、マイケル・ジャクソン。そのバイブレーションの魅力を、考えている。
  ハッピー・ニューイヤー。