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よみタイムVol.79 12月21日発行号

 [其の14]



コロンビア大学で行われたチャリティーショーに出席したヒロ・ヤマガタ

風のように現れるヒロ・ヤマガタ
三次元の仏像蘇らせる企画を
前世で出会ったような気が

 生まれてきて以来、誰でもさまざまな人や物に出会って生きて来ている。一つ一つの出会いをほとんどの人は偶然だと思っているが、偶然などというものはどこにも存在しないのだそうだ。
 なにもかも必然で、大自然の法則があらかじめ決めたことなのだという。「それが縁というものなんですな」と、時々足をむける禅寺の住職に教えられた。
 誰でも前世を持っている。一晩眠っても翌朝にはちゃんと昨日の生活を継続するように、死んでも一定の期間眠って、また生まれてくる。ただ、あまりにも長い眠りなので、昨夜のできごとのように前世のことをはっきりとは思い出せない。
 しかし、ある種のひらめきは残っているので、この世のあちこちを彷徨っているうちに前世で縁のあった人とすれ違うことがあると、なぜかわけもなく心ひかれる。そして親しくなったり、憎んだりする。みんな前世の暮らしを続けているというわけだ。
 ヒロとは、前世で会ったことがあるのではないかという気がしている。初めて会ったのはもう30年以上も前のこと。パリでだった。みんな若くて貧しくて、自由だけが取り柄だった。自由で、未来に対する期待と不安にとりつかれていた。
 サクレクールの階段でボードレールの詩やビートニクの話などをしたあと、ヒロは風のようにどこかへ行ってしまった。名前さえ教えず、ましてや絵描きだとも言わなかった。
 そのあと出会ったのはニューヨークでだった。彼は売れっ子のアーティストで、1886年にフランスから独立の記念に贈られた自由の女神像の100年祭のオフィシャルなポスターの作家として西海岸からやってきたのだ。海の上の自由の女神像を中心に花火や風船が絵全体を被い、ビルというビルの窓から無数の人がその光景を眺めているそのポスターは、はなやかな祭りの気分をいやが上にも盛り上げる。仕事でその場にいた私は、彼のそのスターぶりに圧倒されて、声をかける気もしなかった。まぶしかった。しかし、彼は私をみつけた。私たちはまったく新しい関係で、古い記憶を分かち合うことになった。
 その後、ヒロはよくニューヨークを訪れた。ソーホーの画廊で個展だとか、エリザベス・テイラーの息のかかったチャリティーのイベントだとか。
 どのときもすごい人だかりだった。当時最高の価格でもっともよく売れている絵の作家として、時の人でもあった。


レーガン大統領の誕生日用に注文された作品

 「ぼくはもう絵を描かないよ」
 ヒロは苦しそうだった。
 その後、彼は方向転換したようだった。彫刻を作ったり、クラッシックカーを大量に集めて、そのボディ全体を熱帯の花のイメージで埋め尽くしたりしていた。アレンギンズバーグなどが出るビートニクの映画の制作もした。そのほかにもさまざまな分野で精力的に仕事をした。どれも大がかりで派手だった。
 私の知らないヒロは、もっとたくさんあるに違いない。なにしろ、彼はときどきふいに私の前に現われるだけで、すぐに風のように立ち去ってしまうのだから。
 「今、ニューヨークにいるんだ。会える?」
 そして「じゃ、また、電話するよ」
 それきり何か月、または何年か経つのだ。そして、ある時、ふいに電話がなる。そんな風な関係だが、会うたびにヒロが確実に大物になっていくことは確かだ。
 レーザー光と発光体を使って作った複雑な光と暗黒の空間は、閉じられた画廊の空間を無限の宇宙に変えていて、その中を歩くにはアストロノウツの訓練がいるのではと思わせたし、その技法はますます複雑さをまして、いまや歴史的にもなろうとしている。
 昨年、ある人から新聞の切り抜きのファックスが送られてきた。
 「アフガニスタン中部の渓谷バーミヤンに、岸壁の窪みに刻まれて、1500年間、シルクロードの長旅に疲れた旅人の心を癒しつづけた高さ55メートルと37メートルの2体の大仏は、ジンギスカーンでさえ破壊できなかったのに、2001年に、偶像を嫌うイスラム教徒のタリバンの執拗なダイナマイトによって、完全に破壊された。
 それを惜しむ世界中の人々が大勢いま修復を模索しているが、中で最も興味深いのは、タリバン後のアフガニスタン政府の協力で、一連のレーザー光線を照射して三次元の仏像を元の場所に蘇らせるという日本のアーティスト、ヤマガタの企画。09年にはグランドオープニングをしたいと、ヤマガタは語っている。
 ヒロと私は、前世でどんな関係にあったのかなぁと、考えたりする。