ニューヨーク・イベント情報 2009年8月21日発行


知りたい!アメリカの市販薬

アメリカの薬局には実にいろんな薬や商品が売られている。「ファーマシー探訪が大好き」という人も多いはず。とはいえ種類が多すぎて、同じような薬があると違いがよく分からない。ここでは、日本診療所のナースプラクティショナー、小柳乃里子先生=写真=と一緒に「Duane Reade」の陳列棚を探訪。市販薬について勉強してみた。(文:ささききん)


小ノ乃里子NP-C 日本診療所


Q:市販薬って?

A:英語で「OTC」。「Over The Counter」medicineの略で、「店頭医薬品」とも訳すことができます。医師からの処方箋が必要な処方箋薬(Prescribed Medicine)と違って、OTCは誰でも買うことができます。アメリカで消費される医薬品の30%はOTCで、全米の売上額は1997年統計で200億ドル、2000年統計では340億ドルと、巨大な市場となっています。
 年々OTCの消費が増えている理由は、保険料の高騰や、保険による処方箋薬のカバー額が下がり自己負担額が上がるのに伴い、「自分のケアは自分で」という意識が高まったことが一つ。さらに、今まで処方箋がないと買えなかった薬が、OTCとして認められるようになったことが挙げられます。

Q:「ジェネリック」って何?

A:薬には、最初に開発される「先発医薬品」と、その特許期間終了後に発売される「ジェネリック医薬品(後発医薬品)」があります。
 まず先発医薬品とは、製薬会社が莫大な資金をつぎ込んで開発する新薬のことです。開発に際して莫大な資金をつぎ込んで様々な試験を行い、その薬の安全性・有効性を証明し、そのデータをもとに米食品医薬品局(FDA)の承認を得て新薬として発売します。特許期間中は開発会社が独占販売できますが、特許期間が終了すると、ほかの製薬会社もその薬と同じ有効成分を使って医薬品を製造、販売できるようになるわけで、それがジェネリック医薬品です。先発医薬品に比べて開発費が少なくて済む分、安価で発売されます。
 OTCにも処方箋薬にもジェネリック医薬品があります。例を挙げると、デュエンリードやライトエード
など、各薬局チェーンが「ストアブランド」として風邪薬や鎮痛剤を製造販売しますが、あれもジェネリック医薬品です。

Q:先発医薬品とジェネリック医薬品の効き目は同じ?

A:同じです。薬には有効成分と、それ以外の「付加成分」が含まれます。有効成分とは文字通りその薬の効果を発揮する成分で、付加成分とは薬の大きさや形を保ったり、色をつけたりする成分のことです。先発医薬品とジェネリック医薬品では、この付加成分が異なるものが多いですが、薬の効き目には影響を与えず、体にも無害な成分なので、安価なジェネリックも、少し値が張る先発医薬品も、効果と安全性は同じです。

Q:OTCを服用する時の注意事項は?

A:●注意額を必ず読み、用法、用量を守る。特に、7歳以下の乳幼児、妊婦はどんな薬でも服用前に医師に相談すること。
●薬には必ず副作用があることを理解する。アレルギー体質や、併用する薬によっては、危険な状態を引き起こす可能性がある。
●同じ名前(ブランド)の薬でも、様々な用途があるので、薬の名前だけでなく、用途や種類も確認してから購入、服用すること。
●指定された服用期間を過ぎても症状が改善しない場合は、必ず医師に相談すること。

鎮痛剤 解熱剤

■アスピリン系=バファリン、ベイヤーなど
■非アスピリン系=タイレノール、アドビル、モトリン、アリーブなど


「アスピリン」とはジェネリックネーム(有効成分)で、バファリンやベイヤーなどのブランド名で売られている。非アスピリン系にはさまざまな有効成分があり、タイレノールはアセタミノフェン、アドビルとモトリンはいずれもイブプロフェン、アリーブはナプロキセン。小柳先生によると、連用すると効果が少なくなる可能性もあるそうだ。空腹で服用しても大丈夫なのはタイレノールだけで、ほかの薬は必ず食べ物と一緒に服用しないと、胃潰瘍などを引き起こすもとになる。

●アスピリンと非アスピリン、 どう違う?
 両方とも鎮痛剤、解熱剤には違いなく、軽度、中度の頭痛や関節痛、筋肉痛、歯痛、生理痛などに服用するものだが、アスピリンには次のような効果/副作用があるので、気をつける必要がある。
@血小板が固まるのを抑えることから、血栓予防効果がある。(血がさらさらになるので、手術前などには服用しないのが普通)
Aアレルギー反応を起こす人がいる。たとえばピリン疹と呼ばれる固定疹、アスピリン喘息など。
B子どもが服用した場合、ライ症候群を引き起こすことがあると言われるので、子どもの発熱や風邪、インフルエンザにはアスピリンは原則として使わない。
※アスピリンにアレルギーがある人は、非アスピリン系とはいえアドビルも避けた方がよい。
頭痛の場合、軽度・中度はタイレノールやアドビルなどで十分ですが、偏頭痛や重度の頭痛にはエキセドリン・マイグレインが有効です。特に、偏頭痛持ちの人は、兆候が始まったと同時に服用すると、痛みをある程度予防することができます。

胃薬

マーロックス、マイランタ、タムスなどの制酸薬は、胃の中の酸を中和する薬。食べ過ぎや、一定の食べ物を食べた後の軽度の胸焼けや消化不良、胃酸過多などは、これらで十分。
 ペプシドAC、ザンタック、プリロセックなどは胃酸抑制剤。胃酸を中和するのではなく、胃酸の生産そのものを抑える効果がある。ザンタック、プリロセックなどはもともと処方箋薬だったのがOTCになったもので、効果も高いとされる。食後の胸焼けもだが、食前に服用することで、食べ物による胸焼けを防ぐことができる。


ザンタックは75mgと150mgがありますが、常備薬として購入するなら、症状の度合いによって使い分けることができる75mgが良いでしょう。胃酸中和型の胃薬は、液体、チューワブルのタブレットなどいろいろあります。最も吸収が早い液体は家庭での常備薬向け。持ち歩くにはタブレットが便利です。

アレルギー薬

各種抗ヒスタミン剤が一般的。花粉症だけでなくアレルギー性湿疹にも有効なのがべネドリル(ジェネリック名はジフェンヒドラミン)。ただ、この有効成分は眠気を誘うので、くしゃみ・鼻水は止まるが、頭がぼーっとする。
同じ抗ヒスタミン剤でも、眠気を誘わないのがクラリティン、ザーテック。この2つはもともと処方箋薬だった。値段も割高だが、1錠で予防効果が24時間継続するので、アレルギーのシーズンは夜寝る前に1錠飲むようにすると、症状が現れずに済む。
眠気を誘う抗ヒスタミン剤は、OTC睡眠薬(スリーピングエイド)の有効成分として使われているのをご存じですか?実際、夜眠れない時にべネドリルなど、抗ヒスタミン剤入りの薬を飲む人は多いようです。もちろん、これはおすすめはできません。不眠症がひどい場合は、抗ヒスタミン剤などに頼らず、医師に相談しましょうね。

痔の薬

アメリカで痔の薬といえばプリパレーションH。ほかに、「ヘモヴィッド・クリーム」「ヘムプレップ(座薬)」などがある。これらは、痔、肛門の外側の炎症、かゆみを一時的に緩和するもの。座薬は肛門内に入れて使う。軟膏(クリーム)も、外側だけでなく肛門の中にも入れる。使用前に肛門を清潔にするのに、肛門用の濡れパッドも、薬局で痔の薬と同じセクションに置かれているので、併用するとよい。

切れ痔、イボ痔と、痔にもいろいろあります。OTCを購入するときはどんな症状に効くのか、説明書きをよく読んでください。治らないときは、医師の診断を受けましょう。


口内炎

アブリーバ、アンベソール、カーメックスなど、液体、クリーム状の薬がある。口内炎にもいろいろあって、ヘルペスのために唇の周りに出る吹き出物から、唇の内側に潰瘍ができるもの、勢いよく頬の内側を歯でかんでしまってできる傷など。口内の潰瘍や傷のOTC薬は、傷の部分をしびれさせて、歯に当たって痛むのを和らげる目的の薬(液体やクリーム状)。アブリーバは、唇の周りにできる吹き出物につける薬。

口内炎は、英語で「cold sore」「canker sore」です。症状に合った薬を選ぶには、薬局にいる薬剤師に尋ねるのが一番いいでしょう。薬剤師は、処方箋薬だけでなく、OTCについてもアドバイスしてくれます。

目薬

目薬といえば、アメリカでは「ヴァイジーン」ブランドがずらーっと棚に並ぶが、ほかにもシステーン、リフレッシュなどのブランドもある。ドライアイ用か、アレルギー用に大別される。ヴァイジーン・ティア(涙)などはドライアイ用。ラベルに「ドライアイ」「アイ・アレルギー」「アイ・イチ・リリーフ(かゆみ止め)」など使用目的が書かれているので、使い分けること。

ナフコンAとか、ヴァサコンAというように、最後に「A」がついているのは、「アレルギー」の「A」です。目薬には防腐剤が入っているのが多いですが、眼科医によると、なるべく防腐剤が入っていないものの方が良いそうです。OTCでは、リフレッシュが防腐剤を使用しない目薬です。


切り傷/擦り傷の薬

切り傷や擦り傷の消毒に、日本で使う「オキシドール」があるが、アメリカでは「ハイドロジェンぺロキサイド」という名前で、安価で売られている。ネオスフォリンは、抗生物質のクリームで、最も広く使われるファーストエイドの薬。

日本でいう「ヨードチンキ」は、アメリカでは「ベタディライン」という名前で売られていますよ。


便秘薬

便秘薬は大きくわけて4種類ある。腸を刺激するタイプ、ファイバー、便を柔らかくするタイプ、それに浣腸。刺激タイプには、ダルコラックス、エクスラックスなど。ファイバーは文字通り繊維からなり、べネファイバー、メタミューシルなどがあり、便を作るのを助ける。便を柔らかくするのはコラースが最も知られている。浣腸といえば、フリートエネマで、これは日本のイチジク浣腸だと思えばいい。
刺激タイプは習慣性があり、これがないと排便できなくなりますし、排便前に腹痛がすることがあるので、私はあまりすすめません。ファイバーは、セルロースという繊維食品を摂ることができない人が服用するとよいでしょう。最もマイルドな下剤で、習慣性も低いものとしては、便を柔らかくするタイプのコラースがおすすめです。浣腸は、どうしても便が硬く、出ない時にしか使わないようにしましょう。便秘気味の人は、日頃から水分を十分摂るよう心がけましょう。

下痢止め

ピンクの液体のぺプトビズモルは、下痢の緩和だけでなく、胸焼けや消化不良、胃の不快感、吐き気にも有効。下痢止めとしてはイモディウムがよく効く。

イモディウムは、よく効く下痢止めです。食べすぎなど、原因が分かっている場合はよいですが、食あたりなどによる下痢の場合は、悪いものを体外に出す必要があるので、下痢止めは飲んではいけません。いずれにしても、下痢は薬で止めないほうがいいと言われています。

風邪薬

風邪やインフルエンザによる様々な症状の一時的な緩和に服用する。一口に風邪といっても、症状はいろいろなので、薬局にも実にさまざまな薬が売られている。タイレノール・コールド、タイレノール・アレルギー、コムトレックス、スダフェッド、ヴィックス、ロビタシンなどがあり、それぞれ症状別にさらに細かく商品が分かれる。ラベルをよく読み、自分の症状に最も近いものを選ぶこと。中には、ナイキル(液体)などのように、アルコールが含まれている薬もあるので、有効成分だけでなく付加成分もチェックすること。

私のお気に入りの風邪薬は、セラフルーの粉末タイプです。熱いお湯で溶くと、おいしいレモンティーのような味で、寝る前に飲むとぐっすり眠れます。液体なので体内への吸収が早く、錠剤が飲みにくい人などに適しています。ただ、この薬は血圧の高い人は注意しましょう。

性器のトラブルシューティング

ほとんどの薬局で、生理用ナプキンの陳列棚の近くにディスプレーされているのが、カビが原因で起こる男女の性器のかゆみや炎症を止める塗り薬だ。女性用ならヴァジスタットとか、モニスタットなど。一般に「フェミニン・イチ」とか「イーストインフェクション」と言われる性器のかゆみ止め。男性用ならラミシルのほかにファング・ケアなど。英語のスラングで「Jock itch」と言われる、いわゆる日本でいうインキンタムシの薬だ。
女性も男性も、性器のかゆみや炎症は、カビによって起こります。一般的に女性性器の炎症はカンディダ菌で起こることが知られていますね。ですので、これらのOTCは全て抗真菌剤です。治っても、カビがまた戻ってくるとも限らないので、1週間は継続して塗布しましょう。


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