ホームズさん(左)と西本さん
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Play it!(遊んで!)」グリニッジビレッジにあるアパートメントの一室に、弾んだ声が響く。その先には、歌詞が書かれた小さな紙に目を落とし、ピアノ伴奏に合わせて、覚えたてのジャズのスタンダード曲を一生懸命に歌う10人の生徒たち。全員が日本人だ。
「ラミーミュージック」と呼ばれるこの音楽スクールは、ディレクターのマイケル・ホームズさんが96年に設立した。04年から日本人のジャズシンガー、西本靖子さんが運営に携わるようになり、日本人の生徒数が増え続けてきた。
このスクールでは、歌や音楽理論を学ぶだけではなく、月に数回、病院や老人ホームでのボランティアコンサートも開催している。
またラミーミュージックで意気投合した仲間たちで組んだ「M's Angels」という西本さん含むボーカル4人組のジャズカルテットは、市内のジャズクラブを中心に活動、夏には日本ツアーを控えているという。
レッスンは真剣さが漂う中にも、笑いが絶えない。生徒たちは10代から中年まで、それぞれ主婦だったり学生だったりするが、みんな仲がよく、アットホームな雰囲気の中で助け合ってレッスンに励む。複数のスクールを試した後、ラミーに落ち着いたと言う一人の生徒は、西本さんとホームズさんの作り出す暖かい雰囲気に惹かれたと言う。「ラミーは生活の一部。生徒たちがみんなかわいくて仕方ない。ファミリーみたいなもの。音楽を通してみんなに幸せを感じて欲しい」と西本さん。
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西本さんが歌を始めたのは高校生の時。大学は医学部に進んだが、サークル活動でバンドを続けた。卒業後、出身の熊本県の大学病院で内科医として働く傍ら、地元のジャズバーやホテルで、シンガーとしての活動を始めた。97年に医者の仕事を辞め、一念発起して渡米、ロングアイランド大学ジャズ科に入学した。在学中に名門マンハッタン音楽院のオーディションに合格、04年に卒業後、ホームズさんのアシスタントとなった。
ラミーのレッスンは、西本さんが音楽学生だった頃の経験が生かされている。「高額になりがちなボーカルレッスンを、なるべく安く、が基本です」と話す。
また、熊本での勤務医時代の経験から、「医者が患者に接するように、生徒たちにセラピーのような安心を与えたい。」多くの講師が自分流を生徒に押し付けるだけで、親身になってくれなかったため、「生徒一人一人がそれぞれ本当に必要としていることに向き合って行きたい」と語る。
順風満帆に見える一方、悩みもある。現在、生徒が全員日本人のため、せっかくアンサンブルが上達しても、ビザの関係などで日本に帰ってしまう人が多いという。「ずっと同じメンバーで続けていけるなら、もっとレベルが上がるんだけど」と西本さんとホームズさんは残念がる。
それでも誰もが去り際に「ラミーと出会えてよかった」と感謝してくれるという。そんな時「そう言ってもらうためにこの仕事をやってる、と思ってしまえるほど嬉しい」と言って、うなずき合う。西本さんは「マイケルも私も、ラミーがなくなったら生きていけない」と笑った。
(植木菜穂)
お知らせ
ラミーミュージックでは、07年夏セメスターのボーカルアンサンブルのメンバーを募集中。4月18日(水)から7月第2週までの13週。1セメスター$270。ジャズ、R&B、ボサノバ、ゴスペル、ブロードウェイミュージックなどを学ぶ。病院・老人ホームでのボランティアコンサートの他、学期末に発表会がある。
その他にも、ボーカルとピアノのプライベートレッスン、1時間でスタンダード曲を1曲学ぶワークショップ、音楽理論のクラスがある。
詳細・問い合わせは下記連絡先まで。日本語可。
Lammy Music
57 W. 8th St. (bet. 5th & 6th Ave.)
212-995-8524
dqh10777@nifty.ne.jp
lammymusic.hustle.ne.jp
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